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65 母娘の再会

 俺は今、エリスとエリス父を伴って、シーラに護衛してもらいながら大山脈へ向かっている。


 エリス父は元D級冒険者だったそうで、今回も一応武装しているが、現役時代でも大山脈の魔獣には歯が立たなかった上、現役を退いて10年以上だ。


『戦力としては期待しないで欲しい』というのが本人の言葉である。


 まぁ、そんな事を言ったら俺なんて余裕のF級で、多分今のエリス父より弱い。


 エリスも戦闘なんてできないから、戦力はシーラ頼みだ。


 シーラはC級冒険者だけど、これは新人で実績が足りないからC級なだけで、実力だけならB級か、それ以上あると思う。


なので道中は多分大丈夫だし、森に入ればティアナさんもいる。


 ティアナさんは気配察知と弓と体術はシーラより上だし、採取の知識も深い。冒険者ランクに当てはめればA級か、その上もあるかもしれない。


 この二人といれば大山脈も、街中を独り歩きするより安全なくらいだ。


 ちなみにシーラは一番得意だと言うやりを使えばティアナさんといい勝負をするみたいだし、乗馬も上手い。戦場で軍を率いて戦う能力なら、シーラの方が高いだろう。


 この辺は適性の問題で、それを正確に把握して適材を適所に配置するのが、参謀としての俺の仕事になる。


 シーラくらい分かり易ければいいけど、これはかなり特殊な例だからね。人を見る目を磨かないといけない。


 そんな事を考えながら大山脈に近付いていくが、山が大きく見えてくるにつれて、エリス父の表情が強張こわばってくる。


 仲間が全滅した場所だから、トラウマに近いものがあるのだろう。


 ティアナさんからは『愛する人と出会った運命の場所』的な雰囲気を感じる事があるけど、これも感覚の違いだろうね。


 今回の合流地点も、ティアナさんはエリス父と出会った場所にしたそうだったけど、さすがに変えてもらった。


 一緒に暮らしたという洞窟ならまだよかったけど、ちょっと遠いみたいなので、普通に道から外れた岩陰だ。


 今の街の状況的に大山脈に来る人はほとんどいないだろうけど、万一があるからね。



 ……ちなみに道中訊いてみた所、エリス父がいたのはC級冒険者4人を主力に、D級6人を加えた10人パーティーだったらしい。


 夜営している所を急襲され、為す術もなく全滅してしまったのだそうだ。


 そんな話を聞くと、昨日シーラがやったという夜襲への対応訓練はとても実用的だったんだろうね。


 脱落者が出ないか心配したけど、さすが復讐に燃える子達だけあって士気が高く、むしろシーラに尊敬の眼差まなざしが向けられていた。


 シーラは全員を相手に大立ち回りを演じた上、パニックに陥った子が闇雲やみくもに矢を放って他の子に当たりかけたのを、見事剣で払い落としたらしい。


 怪我人ゼロで学びは多く、演習としては最高のものだったと、メルツも言っていた。


『演習としては』の部分に、ちょっと引っ掛かるものを感じたけどね……。


 ボロボロに疲れ果てて帰ってきたメルツの姿を思い出しながら、俺は先頭を行くシーラの背中を、ちょっと引き気味に眺めるのだった……。



 そんな事をしているうちにそびえ立つ山並みは目前に迫ってきて、周囲も草原から森へと変化する。


 視界が悪くなる上に生息する魔獣も段違いの強さとなり、危険度が一気に増す領域だ。


 エリス父の表情はいよいよ固さを増す……が、正直俺はあまり心配していない。


 シーラを信用しているからというのはもちろんだけど、それに加えて今この森では、ティアナさんが一日千秋いちじつせんしゅうの想いで娘の返事を待っているのだ。


 多分ずっと街を眺めて俺達の姿を探し続け、まだ草原を歩いているうちから俺達を捕捉しただろう。


 そしてそこに夫と娘の姿を見つけた日には、この辺り一帯の魔獣を排除して、万全の体制を作って迎えてくれるまであると思う。



 ……案の定、森に入ってすぐにシーラが『ティアナ殿の気配がします』と教えてくれる。


 やはり全力でお出迎えに来ているようだ……いきなり飛び出してこないか心配したけど、約束した合流地点まで我慢するだけの理性は残っているらしい。


 ……道から外れた岩陰の合流地点まで移動すると、慌てて用意したのだろうか。別れた時にはなかった椅子いすやテーブルが用意されている。


 森の中に突然野ざらしの椅子とテーブルって、ちょっと不思議な光景だな。


 そしてそのかたわらには、エリスと同じ緑色の髪をした女性が、目を潤ませて立っている。……いや、立っていたのは一瞬前までで、エリスの姿を見た瞬間、全力で駆け寄ってきた。


『――エリス!』


 森に響く、喜色に満ちたティアナさんの声。


 あまりの速さに俺の目には消えたように見え、シーラが思わず身構えたほどだ。


 エリス本人も突然抱きしめられて、目を白黒させている。



 感動よりも驚愕の方が強くなってしまった感があるが、ともあれ母娘の再会だ。


 両目からポロポロ涙を流してエリスを抱きしめるティアナさんを見ながら、俺は久しぶりに心が暖かい気持ちで満たされていくのを感じるのだった……。




現時点での帝国に対する影響度……0.0%


資産

・100万ダルナ


・元宝石がいっぱい付いていた犬のぬいぐるみ(今はおでこに一つだけ)

・エルフの傷薬×7


配下

シーラ(部下・C級冒険者)

メルツ(部下・反乱軍拠点訓練担当・E級冒険者)

メーア(部下・反乱軍拠点メンタル担当・E級冒険者)

エリス(協力者・反乱軍拠点運営担当)

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