表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
63/260

63 落ち着かない一日

 翌朝。昨日と同じく俺とシーラとエリスが集まって俺の部屋で朝食を食べながら、打ち合わせをする。


 エリスの様子はと見ると、いつも通りテキパキと動いているが、目が真っ赤だ。


 徹夜したのか、あるいは泣いたのか……朝食を食べながら話を向けてみる。


「エリス、手紙どのくらい読み進んだ?」


「半分と少しくらいです。中々進まなくて……」


 そりゃまぁ、久しぶりの母親からの手紙だもんね。流し読みするようなものじゃないし、読み返したり、感情が高ぶって目が止まったりもするだろう。


「一応訊くけど、昨夜ゆうべ寝た?」


「……手紙を読んでいて、気が付いたら朝でした」


 やはりそうか。


「じゃあ朝の用事を迅速に終わらせて、あとは仮眠してから続きを読むなり、続きを読んでから仮眠するなり、やり易い方で進めて。


 今日の晩ごはんはエリスのお父さんが作ってくれるらしいから、エリスは手紙にだけ集中してくれていいよ。起きてたら晩御飯一緒に食べよう。寝てたら話をするのは明日の朝でいいから」


「はい。何から何までありがとうございます……」


「うん、慌てないから落ち着いてゆっくり読んで、よく考えてみてね」


「はい」


 しっかりとした力強い返事をして、テーブルの食器を片付けたエリスは厨房へと戻っていく。


 ……これでエリスの件は、早くても夜まで待ち時間だ。


 ソワソワするけど、あせらせる訳にもいかないのでじっくり待とう。



 気持ちを切り替えて俺は視線をシーラに向け、話を今日の演習に変える。


「いい天気になってよかったね」


「兵士は雨の中でも行動するものですから、雨天であればそれはそれで良い訓練になったと思いますが」


「……いやそうかもだけど、初めての子やまだ小さい子もいるからさ。最初くらいは条件が整ってる方がいいじゃない」


「なるほど、そうかも知れませんね」


 ……シーラの訓練はなんか、すっごく厳しそうだよね。


 一応メルツに、やりすぎたら止めてくれるように言っておこう。


 ちょっと演習の方にも心配が生じた所で、シーラは演習に行くみんなと合流しに向かい、俺は宿の入口で出発するみんなを見送った。


 シーラとの約束で、安全のために宿の中にいる事になってるからね。


 みんな無事に帰ってくるといいなぁ……。



 ……シーラ達を見送り。エリスも自室に戻った事を確認して、俺も部屋に戻る。


 特別やる事はないけど、子供達向けの戦術教本をまとめながら過ごす事にしよう。


 一年間本を読み続けていた時のメモから参考になりそうな部分を抜き出し、分かり易くまとめて清書していく。


 エリス用の後方参謀参考書も作ったので、わりと慣れた作業だ。



 ……この世界は基本一日二食だけど、一日三食生活に馴染んでいる俺はお昼を過ぎるとお腹が空くので、朝食の残りのパンとスープを簡単にお腹に入れ、作業を続ける。


 ドアがノックされたのは、そろそろ陽が傾き始めた時間だった。


「あの、アルサルさん……」


 扉を開くと、そこにいたのはエリス。目はまだ赤いが、まぶたはしっかりと開いている。


「……エリス、眠れた?」


「はい。手紙を読みながら寝てしまって、起きてから最後まで読みきった所です」


 おお、俗に『寝落ち』と言うやつだ。


 俺も元の世界では、漫画やゲームやインターネットでよくやったものだ……。


 一緒にするなと言われそうだね。


「それで、手紙読んでどうだった? 相談? それとも質問?」


「お父さんも一緒に話をしたいと思うのですが、お時間よろしいでしょうか?」


「もちろんいいよ。そろそろ晩ごはんの時間だし、三人で食べながら話そうか」


「はい」



 そんな訳でエリス父が用意してくれた夕食をテーブルに並べ、相談会となる……はずだったのだが、なぜかエリスが頭を抱えている。


「お父さん、これ……」


 エリスの視線の先にあるのは母親からの手紙ではなく、テーブルに並んだ料理である。


 ……並んだと言うか、中央の大皿に肉の串焼きが山盛りになっていて、あとはお店で買ってきたのだろうパンがあるだけ。


 なんと言うか、冒険者の食事って感じだ。エリスのお父さん元冒険者らしいからね。


「何か問題あったか?」


「お客さんに出す料理は栄養とか色取りを考えてっていつも言ってるじゃない」


「おおそうだった、ちゃんと野菜もあるぞ」


 そう言うとエリス父は厨房に戻っていき、一人一本キュウリのような野菜が配られた。丸ごとである……。


 エリスは一層深く頭を抱え、頭がテーブルに付きそうなくらいになる。


「エリス、大丈夫だよ。野営の時の食事って大体こんな感じだし」


「野営と一緒では宿で食事を出す意味がないじゃないですか」


 ……おおう、あまりに正論過ぎて反論の言葉がない。


「ええと……エリスの料理はお母さんに教わった物だったりするの?」


「――はい。母が料理をしている様子を、いつも見ていた記憶があります。


 私がまだ小さかったので包丁は持たせてもらえませんでしたが、『こうやって作るんだよ』と、丁寧に説明しながら料理をしてくれたのを覚えています」


 そう言って懐かしそうに、穏やかな表情を浮かべるエリス。


 ……これはもしかして、エリスの怒りを静めた上に話を本題に持っていく事に成功したのだろうか? 俺ナイスプレーじゃない?



 そう一人で自己満足に浸りつつ、いよいよ返事を聞くべく、俺はエリスに話を向けるのだった……。




現時点での帝国に対する影響度……0.0%


資産

・100万ダルナ


・元宝石がいっぱい付いていた犬のぬいぐるみ(今はおでこに一つだけ)

・エルフの傷薬×7


配下

シーラ(部下・C級冒険者)

メルツ(部下・反乱軍拠点訓練担当・E級冒険者)

メーア(部下・反乱軍拠点メンタル担当・E級冒険者)

エリス(協力者・反乱軍拠点運営担当)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ