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51 昼からお楽しみでしたね

 宿に帰ってエリスと別れ、俺はメルツの元へと向かう。


 部屋の扉をノックすると中からドタバタと騒々しい音が聞こえ、ちょっと時間を置いて現れたのは、微妙に服が乱れたメルツだった。


「……ごめん、邪魔しちゃった?」


「い、いえ。大丈夫です。もう終わった所……じゃなくて、おかげさまでこの通りうでが完治しました。ありがとうございます」


 メルツはそう言って、右腕を持ち上げて見せてくれる。それは良かった……。


 腕を治した後メーアと色々あったんだろうけど、まぁ相思相愛の二人が二か月以上離れ離れだった訳だからね。


 再会したらやる事なんて決まっている。


 この世界には優秀な避妊薬があるみたいだし、そっちの心配も大丈夫だろう。


 ……そういえば、俺は元アラフォーだからこの手の話も平気だけど、シーラは15歳なのに表情一つ変えないね。さすがは皇帝のハーレムに入って子を成してでも、復讐を遂げようとした子だ。


 そんな事を考えながら『話したい事があるから、落ち着いたら俺の部屋に来て。メーアも一緒に』と告げる。


 さすがにこのタイミングでメルツ達の部屋に入るのは気まずいからね……。



 ――部屋に戻ってしばらく待っていると、メルツと、その後ろに隠れるようにして顔を赤らめたメーアが入ってきた。


 二人は用意しておいた椅子いすに腰を下ろすが、明らかに目が泳いでいる。


 そりゃ気まずいよね……早く用件に入ろう。


「孤児院に行って、ララクの様子を見てきたよ」


 その言葉にメルツの表情がスッと固くなり、メーアも視線をこちらに向けた。


「……元気そうでしたか?」


「一応元気に働いていたけど、精神的には不安定に見えたし、ごはんもあまり食べてないそうだよ」


「そうですか……」


 メルツは賢いし、俺が元皇帝で帝国と戦おうとしている事も知っているから、この後言おうとしている事も察しがついているだろう。


 じっと俺の目を見て、言葉を待っている。


「――メルツ、俺は孤児院から帝国に恨みを持つ子供達を集めて、仲間に加えようと思っている。もちろん本人が望むならだけどね。ララクもその候補なんだけど、メルツが反対するなら考え直す……どうかな?」


「…………一つ確認をいいですか? 子供達を帝国要人の暗殺など、生還を期せない使い捨ての任務に使う気はありますか?」


「それはないよ。むしろ本人がそういう事を望んだら止めるつもり。


 俺にとって帝国を倒す事は目的だけど、子供達には手段であって欲しいと思っている。復讐を果たして過去を清算し、新しい人生を歩み出すのが目的で、帝国と戦うのはそのための手段だってね。


 もちろん戦う事を前提にしている以上、全員が無事にとはいかないだろうけど、できれば誰も死なないでほしい。なるべくそうなるように努力しようと思っているよ」


「そうですか……ならば私から申し上げる事はありません。ララクの希望を尊重してやってください」


「わかった……」


 メルツはちょっと悲しそうであり、一方で安堵あんどの色も混じった複雑な表情をしている。


 子供を戦いに向かわせるのは気が進まない一方で、生きる希望をなくしている子供達にとって復讐が。帝国と戦う事が生きる目的になるだろう事も分かっているのだろう……うん、いいバランス感覚だ。


「メルツ、人集めは俺がやるし経費も俺が持つから、集まった子供達の面倒を見てやってくれないかな?


 表向きは孤児院の子供達の手に職をつけるために、冒険者の修行をするって事にしようと思う。


 冒険者見習いなら武器や乗馬の訓練をしていてもおかしくないし、狩猟や採取、山野での行動や野営の知識や技術は軍隊でも役に立つでしょ。読み書き計算も両方に役に立つ」


「なるほど、それは良い考えですね。承知しました」


 お、よかった。引き受けてもらえた。


 子供達はシーラに預ける事も考えたけど、シーラは正直、あまり子供の面倒を見るのに向いてないと思う。


 精鋭の兵士を選抜して、最強の突撃部隊を鍛え上げるとかなら適任な気がするけど、今回はそういう話じゃないからね。


「うん、よろしくねメルツ……メーアも、メルツを手伝ってあげてくれないかな?


 多分みんな精神面が不安定だと思うから、母親代わり……はちょっと言いすぎだけど、可能な限り甘えさせてやって欲しい……お願いできないかな?」


「――はい、私でお役に立てるなら」


「難しい事頼んでごめんね。……それと、もし復讐以外に生きる目的を見つけられた子がいたら、構わないから兵士以外の道を選ばせてあげて。


 反乱軍に必要な人材はなにも兵士だけじゃないからね」


「わかりました」


「うん。……これで大体話は全部だけど、拠点はできればここにしたいと思っている。エリスにはまだ話してないから、許可をもらえたらだけどね。


 ここなら部屋がいっぱいあるし、裏には馬車とか置く場所もあるから、武芸の訓練もできると思う。馬を飼う厩舎きゅうしゃもあるしね」


「了解しました」


「うん、じゃあ後は夕食の時にエリスとも話をしよう。……後なにか訊きたい事とかある?」


「特にはありません」


「よし、じゃあお願いね」


「「はい」」


 メルツとメーアの二人から力強い返事を貰い。安心して、次はエリスの事に考えを移す。


 俺の素性すじょうを打ち明けるのはともかく、ここを反帝国勢力の拠点にするのはさすがに嫌がるだろうか?


 エリスは面倒見がいいし、孤児院の子供達とも仲がいいから、協力してもらえると助かるんだけどね……。


 ――断られたら他の場所を探すのはいいとして……まさか帝国軍に密告はしないよね?


 さすがにそこはエリスを信用していいと思う。



 そんな事を考え、どう話をするかをまとめながら、俺は覚悟を決めて夕食の時間を待つのだった……。




現時点での帝国に対する影響度……0.0%


資産

・1068万2980ダルナ


・元宝石がいっぱい付いていた犬のぬいぐるみ(今はおでこに一つだけ)


配下

シーラ(部下・C級冒険者)

メルツ(パーティーメンバー・E級冒険者)

メーア(パーティーメンバー・E級冒険者)

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