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41 石油精製

 翌日の朝食後、塩作りをしながら採取してきた白い石油を使って、早速研究を開始する。


 輸送の都合上お椀にちょっとしかないので、木の棒の先に少し浸けて、まずは焚き火の火に入れてみる。


 ――油は思ったよりも強く燃え、大量の黒煙を吹き出した。


 辺りには刺激臭のある臭いが立ち込め、慌てて周囲を確認したが、メーアはまき集めに行っているらしく、姿は見えない。


 いたら瘴気しょうきだと大騒ぎされた気がするので、ちょっと安心して実験を継続する。


 次は海岸で見つけた白いブヨブヨの再現に挑戦するべく、大き目の葉っぱに白石油を一滴垂らし、そこに塩をかけてみる。


 もっといい実験器具があればいいのにね……塩作りの鍋一つに事欠く現状では、あまりに高望みだけどさ。


 むしろ鍋どころか、食事に使うお椀にさえ事欠いている。


 俺のは白石油の採取に使ってしまったので、昨日の夕食と今朝の朝食は、シーラのお椀を借りて食べる事になってしまった。


 シーラの食事が終わるのを待ち、食べ終わった後のお椀を俺が借りたのだ。


 お願いしたらこころよく了承してくれたし、一応洗いはしたけど……いつもシーラが使っているお椀で食事とか、なんかちょっとイケナイ気持ちになってしまうよね。


 間接キスの亜種みたいなものだろうか?


 そんな事を思い出して顔が熱くなるのを感じつつ、実験の様子を観察するが、塩をかけた白石油に特に変化は見られない。


 棒でつついてみたが、少しトロミのある元の液体のままだ。


 塩じゃなかったかなと思って水も試してみるが、こちらも特に変化はなし。


 ならばと、目の前で煮詰めている海水を垂らしてみる。


 ――と、触れ合った瞬間白石油がスッと透明になり、白い沈殿物ができた……おお、当たりみたいだ。


 お椀に残っている白石油全部に鍋から海水を掬って混ぜてみると、表面に少し黄色味がかかった油層ができ、下に白い物体が沈む。


 油層を棒に浸けて火に入れてみると、黒煙も臭いも出す事なく、明るい炎を発して勢いよく燃えた……これはもしかして、灯油っぽいものの分離に成功してしまったのだろうか?


 一方で底に溜まった白い物は、棒で掬おうとしてももろくて無理っぽい。


 布があればし取る事ができそうだけど……。


 ――とそこまで考えて、一つの物が思い浮かんだ。……これ、豆腐じゃない?


 もちろん食べられるとは思わないが、白くてトロっとした液体に塩でも水でもない海水の成分……にがりを入れると固形物が沈殿し、それを布で濾して水分をしぼると、白くてプヨプヨした塊ができる。


 作り方としては全く同じだ。今度から『白い石油』ではなく『豆乳』と呼びたいくらいである……やらないけどね。


 それはともかく、更に実験を続ける事にして、液体をお椀の中でぐるぐる回すとへりに沈殿物が付着したので、それを棒でこそげ採って火に入れてみる。


 しばらくは水分が蒸発する『ブスブス』という音がしていたが、それが消えるや否や、黒い煙と臭いを発して燃えはじめた。


 どうやら、瘴気の元的な成分はこちらに含まれるらしい。


 水分を抜いて乾かせば、プラスチック的なものになるだろうか? 海で拾った塊、持って来ればよかったね。


 あれは多分、この沈殿物が波に揉まれて塊になったものだったのだろう。


 元の世界のプラスチックは環境に良いものではなかったけど、この世界のはどうなのだろうか……?



 ……環境問題は未知数なので一旦置いておいて、現状有用そうなのは油層の方だ。


 煙も臭いも出ないなら、塩作りの燃料として使う事ができる。


 海水を煮詰めて塩とにがりを採って、にがりを白石油に混ぜて灯油が採れるなら、ある意味永久機関みたいなものだ。


 人手と時間があれば、大量の塩を作る事が可能になるだろう。


 おまけに海に油が流れ込んで環境汚染を引き起こすのも阻止できるから、一石二鳥である。


 そして灯油は、照明や冬の暖房にも使えると思う。


 液体なのでランプやストーブみたいなものを作らないといけないだろうけど、燃料の心配をしなくて済むのはありがたい。


 今は周囲に枯れ木や流木が大量にあるけど、だんだん遠くまで集めに行かないといけなくなるだろうし、将来的には不足するかもしれないからね。


 そしてもう一つ重要な事に、灯油は商品としても売れそうな気がする。


 帝国でも魔石ランプは高価なので、油を使った照明が普通に使われていた。


 その油でさえわりと高価だったので、安く提供できれば需要はあると思う。


 今照明に使っているのは食用油なので、照明用途がなくなれば食糧事情が改善するかもしれないしね。


 ……だけど灯油に関しては、運ぶのが難しいかもしれない。


 ガラス瓶は高価だし割れやすいから、なにかいい容器があればいいんだけどね。ポリタンクみたいな奴。


 色々期待は膨らむが、それにはまず準備を整える必要がある。


 とりあえずは塩作り用の鍋と、白石油を精製するための大きな容器が欲しい。


 あとは灯油ランプを作るための材料。芯になるひもも必要だろう。


 商品にするなら輸送手段もだ。


 要る物がいっぱいだ……やはり一度交易に行かないといけないだろうね。



 鍋、食器、海水を汲むバケツ、白石油の精製に使うたるのような物、大小の柄杓ひしゃく、ランプやストーブを作る材料、灯油を入れる容器……他に日用品や家具類も欲しい。家や作業小屋を作るなら工具もだ。


 とても一度では運べないね……山越えだから馬も使えないし。


 将来的に大規模に塩作り灯油作りをするなら、人手も欲しい。


 欲しい物がいっぱいだなと思いながらリストをまとめ、優先順位をつけていく。


 シーラやメーアにも訊いて、交易品リストを作成しよう。


 人間の街まで行けば金貨が使えるけど、エルフさんには塩しか交易品にならないみたいだし、塩はあればあるだけ使うというものでもない。


 エルフさん達との交易は量が限られそうだから、優先的に調達したい品を決めておかなくてはいけないね。



 塩作りをしながらそんな事を考え、その日の夕食の席でシーラのお椀を使わせてもらいながら、みんなに相談をするのだった……。




現時点での帝国に対する影響度……0.0%


資産

・1049万8680ダルナ


・元宝石がいっぱい付いていた犬のぬいぐるみ(今はおでこに一つだけ)


配下

シーラ(部下・C級冒険者)

メルツ(パーティーメンバー・E級冒険者 アルパの街に残留)

メーア(パーティーメンバー・E級冒険者)

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