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259 危険な商談

 復興軍の資金を得るためにザイフ伯爵領で押収した品を換金するべく、俺はファラの街の右腕さんの所にやってきた。


 元々はジェルファ王国で塩を卸していた商会の支店長さんに紹介されて知り合い、もうかなり長い付き合いになる。


 だけど今回は、場合によっては危険な事になりかねない話をしに来た。


 俺の身分を明かさずに取引ができればそれに越した事はないけど、場合によっては身分を明かしての交渉になる。


 それで相手が応じてくれれば問題ないけど、無理だった場合は……情報の漏洩ろうえいを防ぐために、非常手段を採る事になるかもしれない。


 シーラとキサにもその旨を伝え。いつもより緊張して商会を訪ねる……。



「お久しぶりです、お元気でしたか?」


「おかげさまでなんとか。アルサルさんこそ、今回は大変な目に遭いませんでしたか?」


 始まりはいつもどおり、軽い挨拶から。


『大変な目に~』の下りは、俺が前回『行く先々で戦いに巻き込まれる』と話したのを覚えていたのだろう。

 さすがやり手商人だ。


「それがですね……内緒話をしたいので、できるだけ人を減らして頂けませんか?」


 そう言いながら、後ろに控えている秘書っぽい男の人に視線を向ける。


「彼は私の腹心で、信用できる男ですよ」


「――そうなのかもしれませんが、できるだけ人が少ないのが望ましいです。

 どうしてもとおっしゃるなら無理にとは言いませんが、できれば席を外して頂けるとありがたいです」


 いざという時、死ぬ人は少ない方がいいもんね……。


 そんな物騒な事を考えていたのが伝わったのか、右腕さんは少し考えたあと『わかりました』と言って、男の人に部屋を出るように言ってくれた。


 秘書と、多分護衛もかねていただろうに、下がらせてくれたのは相当俺を信用してくれているんだろうね。


 信用を裏切る結果にならないといいなぁ……。



 そんな事を思いながらシーラに視線を向け、その様子で辺りに人がいない事を確認すると、本題を切り出す。


「実は見て頂きたい物があります」


 そう言ってキサに合図をすると、大きな包みがテーブルに乗せられる。


 それを開いた瞬間、右腕さんの表情が変わった。


「これは……」


「とあるルートで手に入れた品です。これを現金化したいと考えています」


 俺の言葉に、右腕さんは真剣な表情で品物を一つ一つ手にとり、色々な角度から眺めていく……。


 キサの馬に積めた分なのであまり多くはないが、絵画・陶磁器・食器・絨毯じゅうたん・宝石と揃っている。


 シーラの馬にも積めたらよかったんだけど、こちらには俺という荷物が乗っていたので仕方がない。


 俺も乗馬の練習した方がいいのかなと思うが、シーラに『馬に乗れる者など他にいくらでもおりますから、アルサル様は他の者にはできない事に時間をお使いください』と言われているので、やはり参謀の仕事に集中するべきだろうか。



 ……そんな事を考えていたら、一通り鑑定が終わったのか。品物を置いた右腕さんが固い声を発する。


「失礼ですが、出所でどころをお訊きしてもよろしいでしょうか?」


「それは訊かないで頂けるとありがたいのですが」


 俺の言葉に、右腕さんはじっと俺の顔を見つめてくる。


 さぁ、ここが最初の分岐点だ。


 もし『分かりました訊きません』と言うようなら、俺は疑う。


 右腕さんは元ジェルファ王国民で帝国の侵略を受けた身とはいえ、今は帝国の貴族に幅広い人脈を持っていて、立場的に帝国寄りの人だ。


 そして今までの印象では、冒険心はあるものの、それだけではなく思慮深さも備えている。


 そんな人がこんな危ない話を理由も訊かずに引き受けたら、俺は密告するつもりだと疑ってしまう。


 なのでここは食い下がるか、せめて『この件は聞かなかった事にさせてください』と答えて欲しい。


 後者なら、黙って引き下がってこの先二度と会わないという選択肢もあり得るからね。

 さて、どうなるか……。


 緊張して見守る俺の前で、右腕さんはゆっくりと口を開く


「……これだけの品が揃っているのを見るに、出所は相当裕福な家。もっと言うなら貴族家の可能性が高いです。


 そして各商品区分から一品ずつ見本を持って来たような並びを考えると、これは全体の一部であり、後ろにまだ複数の商品が控えているのではありませんか?」


 お、さすが鋭いな。

 そして、とりあえず聞かなかった事にする気はないらしい。


「はい。他にもまだ大量にありますから、まとめて現金化できたらいいなと思っています」


「……西部の貴族家では、度重なる遠征軍の負担から家財を手放す家もありますが、貴族家であれば懇意こんいにしている出入りの商人がいますから、そこを通じて売りに出します。


 そしてそういう商人は別の貴族家や、別の貴族家に出入りしている商人との横の繋がりがありますから、その伝手つてを使って売りさばくのが通常であり。失礼ですが、行商人の手に渡るものではありません」


「そうでしょうね……」


「となればこれの出所は、通常の手段で手放された物ではないという事になります。


 昨今の情勢を考えれば、ウルミ辺境伯家かザイフ伯爵家。

 辺境伯家は貴族家の軍が滅ぼした事を考えれば、ザイフ伯爵家が最有力です」


 おおう、さすが見事な読みだ。


 感心しきりだが、あえて何も答えずに黙っていると、右腕さんの方から厳しい表情で言葉を発する。


「アルサルさん、これはザイフ伯爵家の。もしくは伯爵領からの流出品ですよね?

 どうして貴方がこれをここに持ち込んだのか、お聞かせ願えますか?」


 ――俺が訊かれる立場になってしまったが、一応想定していた質問でもある。


 答えは二通り用意してあるけど、どちらを口にするべきか。



 俺は少し考え、ゆっくりと口を開くのだった……。




帝国暦169年 9月1日


現時点での帝国に対する影響度……10.979%


資産

・6億3280万ダルナ(-4万)


・元宝石がいっぱい付いていた犬のぬいぐるみ(今はおでこに一つだけ)

・エルフの傷薬×103

・伯爵から押収した財産(金貨以外)

・伯爵の仲間から押収した財産


配下

シーラ(部下・帝国復興軍精鋭部隊長・C級冒険者 月給50万)

メルツ(部下・ジェルファ王国軍務大臣・E級冒険者 月15万を上級傷薬代として返済中)

メーア(部下・ジェルファ王国軍務副大臣・E級冒険者 月15万を上級傷薬代として返済中)

エリス(協力者・ジェルファ王国国王・将来の息子の嫁候補 月30万を宿借り上げ代として支払い)

ティアナ(エリスの協力者 月給なし)

クレア(部下・ジェルファ王国宰相)

オークとゴブリンの巣穴から救出された女の人達24人(雇用中・北の拠点生産担当と中州の拠点運営担当 月給12万)

元孤児の兵士達103人(部下・帝国復興軍部隊長97人 北の拠点の船舶担当5人 医療班1人)

セファル(部下・アルパの街の物資管理担当・C級冒険者 月給30万)(弟も同職 月給10万)

ガラス職人(協力者 月給15万・衣食住保証)

船大工二人(協力者 月給15万・衣食住保証)

怪我を負った孤児の子達43人(北の拠点で雇用 月給7.2万)

キサ(部下・専属護衛・遊牧民 月給48万)

セラードとその妹リーズ(部下・元帝国西方新領州都防衛隊長 元子爵家子息 帝国復興軍後方部隊長と前線部隊長)

ミリザ(協力者・ジェルファ王国内務大臣・王都を仕切る裏稼業三代目)

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