253 ピース埋め
セラードが言った、『中央部と国を二分するくらいの体勢確立』。
それに必要なものは差し当たり
・南部での住民からの支持
・住民に武装蜂起してもらったり、復興軍を拡大するために必要な武器と資金
・上記に必要な幹部クラスの人材
だと思う。
どれも必要を見越して準備してきた物ではあるけど、足りるかどうかは別問題だ。
順に埋めていくべく、セラードに向けて言葉を発する。
「武器に関してだけど、ジェルファ王国から連絡来てない?」
「はい、こちらに」
セラードはそう言って、とても簡素な封筒を渡してくれる。
普通国王からの書状だと、封筒からしてゴテゴテ装飾されているものだけど、これはあくまで俺とエリス達の個人的な手紙だからね。
中を読んでみると、
『おかげさまで警備を縮小できていますので、余った道具はお譲りできます。いつもの場所に取りにいらしてください。
代金に関しては、滞在の方がお帰りになる際に置いていかれたお金で十分足りています。余剰分はそちらにお送りします。
お仕事頑張ってください、応援しております。
宿屋一同5名』
と書かれていた。
これは万が一手紙が帝国に渡っても、復興軍とジェルファ王国の関係を悟られないようにした文面だ。
こちらからそういう文面で送ったら向こうもそう返してくれたもので、さすがエリスは空気が読める。
内容を翻訳すると
『復興軍が帝国軍を打ち破ってくれているおかげで、ジェルファ王国は帝国との国境に貼り付ける部隊を減らすことができていますので、余った武器防具などはお譲りできます。
食料を運んでいるルートと同じ場所に取りに来てください。
代金は教国に攻め込んで壊滅した部隊の捕虜の内、貴族達を仲介と偽って帰還させている身代金で十分賄えています。余剰分は復興軍に寄付しますね。
宰相打倒頑張ってください。応援しています。
元宿屋の娘で現ジェルファ王国国王エリス・軍務大臣メルツ・軍務副大臣メーア・宰相クレア・内務大臣ミリザ』
といった所だろうか。
帝国に知られたら、えらい事になるの間違い無しである。
でも文面だけ見れば、宿屋から仲のいい行商人アルサルへの普通の手紙である。
万一帝国側に奪われても、特に注意を向けられる事もないだろう。
――そんな訳で、多分2万人分くらいの武器と防具。金額は不明だけど資金援助の当てがついた。
地道な積み重ねのおかげだね。
エリスには『ありがとう。売上はそちらで必要な分もあるだろうから、無理のない範囲でいいよ』という文章に、『こちらはおおむね順調です』みたいな曖昧な近況報告を添えた軽い感じの返事を書き、アルパの街にある宿屋宛に発送する。
万一帝国の関係者がこの手紙を読んでも、まさか帝国の元皇帝兼復興軍の軍師から、ジェルファ王国の国王に宛てた手紙とは思うまい。
……そんな訳で、セラードにジェルファ王国から食料と一緒に武器防具も運んでもらうようにお願いし。旧伯爵領向けには食料と武器防具を送った帰りに、伯爵とその仲間達から押収した財産を運んでもらうようにお願いする。
この財産を現金化する方法も考えないといけないんだけど、普通に売ったら明らかに足がつくよね……。
まぁそこは追々考えるとして、武器と資金に一定の目処がついた所で、次は人材だ。
これは心当たりがあって、元政治犯収容所にいた人達。
あの人達は元貴族やその関係者が多いので、地元に戻れば相当の人脈があるはずだ。
住民の扇動から反乱軍の組織、現領主との戦いまでこなせると思う。
元々住民に人望がない悪徳貴族だったらダメだけど、悪政を敷く宰相に反発して従う事を善しとせず。結果的に取り潰された人達だから、いい人が多いと思う。
無理な人はしょうがないけど、その辺の人選はアフマン将軍達の意見を聞いて決めよう。
……そんな訳で、俺はセラードに『旧伯爵領に武器防具を送るのは、次に俺が戻って来てからにして。それまでは食糧輸送をお願い』と伝言し、もう一度政治犯収容所へ。復興軍東部支隊へと向かう事にする。
――とはいえ東部支隊に行く前にやる事があるので、一旦東の拠点に行き、そこに『船舶部隊に用事があるので、ここで待機していて欲しい』とメモを残し。
次に遊牧民の馬繁殖所に行って、交易中継地点を変更してもらう。
あまり人が多い場所は好まないようなので、昔復興軍が使っていた半地下式野営地の一つを交易所に設定して、東の拠点からここへの物資輸送をお願いする。
報酬は変わらず塩の現物支給で、今までの村と距離があまり変わらないとの事で、馬5頭分の輸送1回で3キロくらい入った塩1袋で合意した。
草原では塩が貴重らしいので、安く上がるのとても助かる。
ついでに馬30頭を馬具付き420万ダルナで購入し、その馬を連れて遊牧民の村を出発。
今まで中継に使っていた村の倉庫をもう使わなくなるからと言って在庫限りで撤収してもらい、草原の拠点に戻る。
草原の拠点で30頭の馬に積めるだけの武器と防具を積んで。また東の拠点へ。
忙しく駆け回るが、さすがシーラとキサ。縄で繋いだ15頭の馬を見事にさばいて、草原を颯爽と駆け抜ける。
これは遊牧民の調教がいいのもあるんだろうね。
東の拠点に戻ってみると、まだメモがそのままだったので船便は来ていないらしい。
なのでメモを『食料を積めるだけ積んで、川を遡って欲しい。支流には逸れず、向かって右の岸に赤い旗を立ててある場所を見つけて、そこに船を着けて。距離は馬で6日程度』というものに書き変えて、一足先に東部支隊へと向かう。
――元政治犯収容所から北上して川との接点になる場所に棒を立て、戦場での合図に使うためにと用意したけど、まだ一度も出番が来ていない赤い旗をくくり付けて目印にする。
そのまま南下して元政治犯収容所に向かうと、細くなった運河は順調に北に伸びていて、馬で1時間くらいの距離まで来ていた。
東部支隊の隊長をやっている元侯爵と会って話を聞くと。運営は順調で、帝国は相変わらず食料を供給してくれているらしい。
問題ない事に安堵して、俺はこれからの話をするべく。元侯爵以下、アフマン将軍達主要メンバーである元貴族8人に集まってもらうのだった……。
帝国暦169年 8月8日
現時点での帝国に対する影響度……10.979%
資産
・6億3284万ダルナ(-678万)
・元宝石がいっぱい付いていた犬のぬいぐるみ(今はおでこに一つだけ)
・エルフの傷薬×3
・伯爵から押収した財産(金貨以外)
・伯爵の仲間から押収した財産
配下
シーラ(部下・帝国復興軍精鋭部隊長・C級冒険者 月給50万)
メルツ(部下・ジェルファ王国軍務大臣・E級冒険者 月15万を上級傷薬代として返済中)
メーア(部下・ジェルファ王国軍務副大臣・E級冒険者 月15万を上級傷薬代として返済中)
エリス(協力者・ジェルファ王国国王・将来の息子の嫁候補 月30万を宿借り上げ代として支払い)
ティアナ(エリスの協力者 月給なし)
クレア(部下・ジェルファ王国宰相)
オークとゴブリンの巣穴から救出された女の人達24人(雇用中・北の拠点生産担当と中州の拠点運営担当 月給12万)
元孤児の兵士達103人(部下・帝国復興軍部隊長97人 北の拠点の船舶担当5人 医療班1人)
セファル(部下・アルパの街の物資管理担当・C級冒険者 月給30万)(弟も同職 月給10万)
ガラス職人(協力者 月給15万・衣食住保証)
船大工二人(協力者 月給15万・衣食住保証)
怪我を負った孤児の子達43人(北の拠点で雇用 月給7.2万)
キサ(部下・専属護衛・遊牧民 月給48万)
セラードとその妹リーズ(部下・元帝国西方新領州都防衛隊長 元子爵家子息 帝国復興軍後方部隊長と前線部隊長)
ミリザ(協力者・ジェルファ王国内務大臣・王都を仕切る裏稼業三代目)




