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251 遊撃隊突撃

 篭城戦がはじまって17日が経った、7月の11日。


 戦いは依然として膠着こうちゃく状態だが、こちらの損害が微小であるのに比べて、敵はかなりの損害を出している。


 状況としてはとてもいいのだが、懸念としては敵に新たな増援が来る可能性だ。


 2万とか3万とかの増援が来たら相当苦しくなるし、増援部隊の長が副将に納まったりしたら、敵将の首を取って一気に敵を撃退するという計画が崩れる怖れもある。


 今いる部隊は大将が討ち取られたと聞いたら大いに動揺するだろうけど、増援部隊は元の大将だった副将が健在なら、大きくは動揺しないだろう。


 これはよくないので、なるべく早目に決着をつけたい。


 それは多分敵も同じはずで、今なら成果を全て自分の物にできるけど、増援が来た後だと半分に。

 なんなら『おまえが無能だから増援が必要だった』とか言われて、手柄を全部持っていかれてしまう可能性すらある。


 なので、敵も決着を急いでいるはずなのだ。


 ――であるなら、隙を見せれば食いついてくるだろう。


 ……よし、一芝居打ってみるか。



 俺はリーズと冒険者ギルド長に相談し。南側街壁の上に木材を積み上げる。


 守備兵達に『今からやるのは訓練だから動揺しないように』と周知してもらい、積み上げた木に火をつけると、煙が天に昇っていく。


冒険者ギルド長の『濡らした麦わらを乗せると派手に煙が出ますよ』というアドバイスを試してみると、ホントにすごい量の煙が出て、煙幕みたいだ。


 火自体は焚火たきび程度だが、下から見れば大火災が起きているように見えるだろう。


 煙がキツイので燻製くんせいになるのを避けて東側へ向かうと、敵軍の動きが慌しくなっていた。


 東側への攻撃は続行されたままで、後方の兵士達が南へと移動していく。


 好機と見て総攻撃の命令が下ったのだろう。


 総司令官の周辺からも、騎士を含む兵士達が続々南に移動していく。



 ……しばらく見ていると、総司令官周辺の守りはかなりいい感じに薄くなったと思う。


 あとは遊撃隊がこれに気付いてくれれば……。


 そう思いながら様子を見守る。



 ……街の全周囲で帝国軍の攻撃が激しくなり。特に南側には多数の兵士が押し寄せて、激戦が展開されているようだ。


 敵兵力の移動があらかた済んだようなので、火を消すようにと命令を出した瞬間。

 どこからともなく突然現れた騎兵の一団が、敵の本陣めがけて突入していくのが目に入った。


 ――叫び声もなにも上げていないのだろう、本陣周辺の兵士に気付く様子はない。


 大声を上げるのは恐怖を振り払う意味もあると聞くから、無言で突撃ができるのは恐怖を超越した精兵の証だ。


 その精兵が間近に迫っているのに、敵の総司令官はのんきに椅子いすに座って、グラスでなにかを飲んでいる。


 声を上げなくても馬の足音までは隠せないのだが、戦場の音に紛れて気付くのが遅れたのだろう。

 護衛の兵士が遊撃隊に気付いた時には、槍を振りかざして先頭を行くシーラはもう本陣まで僅かの距離に迫っていた……。



 俺の所までは音も声も聞こえないけど、望遠鏡で覗いた俺の目に映ったのは、敵の総司令官の周囲にいた20人ほどの騎士にシーラが突入し、あっという間に数人を打ち倒す光景。


 そしてシーラに続く騎馬兵達が残りの騎士達に襲いかかり、次々に切り倒していく光景。


 その隙に、驚いた様子で立ち上がった全身金ピカの鎧な敵司令官ののどを、シーラの槍が一突きにする光景だった……。



 ――シーラはそのまま集まってくる敵兵達と戦い、後続の兵士の一人が馬から飛び降りて総司令官の首を切り落とすと、槍先に刺して高く掲げる。


 相変わらず声は聞こえないが、その光景に周囲の兵士達に動揺が走るのが見え。

 シーラ達は首を掲げたまま、敵陣内を駆け抜けていく。


 ……その効果は絶大なようで、戦意を失った敵兵は次々に武器を捨てて逃げはじめ、部隊長達もそれを止めるどころか、我先にと逃げはじめる。


 元々無理やり戦わされている、士気が低い兵士だというのもあるのだろう。


「リーズ、門に予備の兵士を集めて」


 俺の指示で各門に伝令が飛び、リーズ自身も東門に向かう。


 街壁の上から見える敵軍の崩壊は波紋のように広がっていき、一端が東門に到達したのを確認して『東門攻撃開始!』を命令すると。篭城戦の間中固く閉ざされていた門が内側から開き、リーズを先頭に兵士達が反転攻勢に出る。


 敵に動揺が広がるのを見極めながら、南門、西門からも攻撃隊を出すと、帝国兵達は総崩れになって逃げはじめた。



 ……どうやら戦いはこちらの勝ちになりそうだけど、油断はできない。


 計画では元のザイフ伯爵領内から敵を追い払う予定だけど。途中で反撃を受けないかと、調子に乗って深追いして領域を超えてしまわないかの二重の不安がある。


 一応各部隊長には徹底してあるし、街道沿いは領地の境目に関所があるから分かり易いけど。街道以外だと知らないうちに境界を越えちゃったりは普通にあると思う。


 まぁ、勝手に本格的な他領への侵攻を始められたら困るけど、ちょっと越境しただけなら、戻ればすむ話だ。

 基本周りの領主も全部敵だから、多少の揉め事は今更である。


 一息つきたいので、他所の領地に攻め込んで戦闘継続とかにならなければそれでいい。



 そんな事を考えながら帝国軍を追い立てていく復興軍を眺め。俺の意識は次の一手へと向けられるのだった……。




帝国暦169年 7月11日


現時点での帝国に対する影響度……10.979%(+0.2)※帝国北部に占領地を確保・討伐軍を撃退


資産

・10億3060万ダルナ


・元宝石がいっぱい付いていた犬のぬいぐるみ(今はおでこに一つだけ)

・エルフの傷薬×35

・伯爵から押収した財産(金貨以外)

・伯爵の仲間から押収した財産


配下

シーラ(部下・帝国復興軍精鋭部隊長・C級冒険者 月給50万)

メルツ(部下・ジェルファ王国軍務大臣・E級冒険者 月15万を上級傷薬代として返済中)

メーア(部下・ジェルファ王国軍務副大臣・E級冒険者 月15万を上級傷薬代として返済中)

エリス(協力者・ジェルファ王国国王・将来の息子の嫁候補 月30万を宿借り上げ代として支払い)

ティアナ(エリスの協力者 月給なし)

クレア(部下・ジェルファ王国宰相)

オークとゴブリンの巣穴から救出された女の人達24人(雇用中・北の拠点生産担当と中州の拠点運営担当 月給12万)

元孤児の兵士達103人(部下・帝国復興軍部隊長97人 北の拠点の船舶担当5人 医療班1人)

セファル(部下・アルパの街の物資管理担当・C級冒険者 月給30万)(弟も同職 月給10万)

ガラス職人(協力者 月給15万・衣食住保証)

船大工二人(協力者 月給15万・衣食住保証)

怪我を負った孤児の子達43人(北の拠点で雇用 月給7.2万)

キサ(部下・専属護衛・遊牧民 月給48万)

セラードとその妹リーズ(部下・元帝国西方新領州都防衛隊長 元子爵家子息 帝国復興軍後方部隊長と前線部隊長)

ミリザ(協力者・ジェルファ王国内務大臣・王都を仕切る裏稼業三代目)

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