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243 シーラの知り合いと元貴族達

 翌朝。俺が目覚めた時にはシーラはすでに起きていて、槍を振るって鍛錬をしていた。


 このどんな時でも一日も休まない真面目さが、シーラの力の源になっているんだろうね。


 昨日いつ頃帰ってきたのかは分からないけど、見た目上は疲れた様子もなく。俺の姿を見ると、さっそく昨夜の報告。アフマン将軍からの情報を話してくれる。


 それによると、収容所に関しては


・ここにいるのは宰相に目をつけられた貴族・軍人・官吏かんりなどの政治犯だけで、一般の犯罪者はいない


・当主・跡継ぎの嫡男ちゃくなん辺りは処刑されてしまい、残った親族や部下、執事やメイド長レベルの上級使用人が送られてくる


・食料は一律同じ量しか送られてこないようで、人数が増え過ぎると監視兵による『調整』が行われる一方、運河掘りのノルマもあるので、限られた食料で最大の作業人数が確保できるように運営されている


・ここには外の情報は全く伝わってこない。新たに入ってきた囚人が持ってくる情報が全てで、復興軍の情報は知らなかった


 との事で。帝国の内情に関しては、


・3年前までの事しか分からないが、貴族家だけでも毎年のように取り潰される家があり、宰相の身内と派閥の貴族ばかりが領地を増やし、要職を独占している


・帝国の政治は完全に宰相によって牛耳られている。良識ある貴族や官吏もいるが、目をつけられないよう息を殺している事しかできない


・そんな状況なので宰相に不満を持つ者は多くおり。特にこの収容所にいる者達は、ほぼ全員が宰相打倒に協力するだろう


 などの話を聞いてきてくれたようで、なんというか全般に酷い話だ。


 とりあえず今の問題は、『送られてくる一定量の食料』がどのくらいかだけど、監視兵達の消費分が相当減るので、なんとか全員を養う事はできると思う。


 とりあえず現場を見てみようと、朝食を配っている場所に行ってみると。透明度の高いスープと、パンが配られていた。


 パンはここで焼いている訳ではなく、焼いた状態で運ばれてくるらしい。


 スープを作るたきぎを集めるのさえ大変そうな荒野だからしょうがないんだろうけど、カチカチのレンガみたいなパンで、手でちぎる事は不可能。ごついナタみたいな包丁で切り分けるという代物だ。


 そのままでは歯が立たないので、スープに浸してしばらく待って、ようやく食べられるようになる。


 この世界では一般的な保存食で、俺も野営の時などにお世話になっているが、こればっかりで何年もは辛いだろうね。


 おまけに俺の野営はシーラが狩りをしてくれるので新鮮な肉入りのスープが食べられるけど、ここのスープは固い干し肉と固い乾燥野菜しか入っていない。

 歯を痛めたら生きていけない環境だ。


 おまけに味付けの塩味も薄く、お世辞にも美味しいとは言えない。

 だけどこれでも、今まで監視兵達が食べていたちょっといい食材をこちらに回したので、かなり美味しくなっているのだそうだ。


 悲しい話だけど、食糧事情が改善したという事で俺達の。ひいては帝国復興軍の評価が上がっているようなので、有難くはある。



 俺達も一緒に朝食をご馳走になった後、各種報告を取りまとめると、夜の間に監視兵達は全員捕らえられたらしく。死亡78人、捕縛16人となったそうだ。


 死亡率がやたら高い気がするけど、今までの収容所運営状況を考えたら仕方ないのだろう。

 カーミラも馬を駆って捜索隊に加わったそうだし、そりゃあね……。


 そして一晩で全員に対処できたのはすごいなと思うが、報告を聞いてみると、監視兵達は夜になったので松明たいまつを灯して逃げたり、たき火を囲んで休んでいたりしたそうだ。


 ……追われる身なのにあまりに危機感がなさすぎて眩暈めまいがするくらいだが、質の悪い兵士というのはそういうものなのだろう。

 そもそも兵士かどうかも微妙なチンピラの集まりみたいだしね。


 そして追跡側は、囚人とはいえ元は貴族家の子弟だったり、領軍の指揮官だったりした人もいる。

 夜間騎乗もお手の物な熟練の軍人多数とあっては、そりゃ素人監視兵が逃げ切るのは不可能だっただろう。


 ――とりあえず最大の問題が片付いた事を確認し、次はここの運営体制の整備にかかる。


 この政治犯収容所を『帝国復興軍・東部支隊(仮)』に改変する事にして、差し当たり決めるべきは支隊長と、防衛隊長並びに防衛隊の編成。

 そして事務方を取り仕切ってもらう主席参謀だ。


 この収容所は元貴族家の関係者や、帝都で働いていた上級官吏が沢山いるので、人材は豊富である。


 だけど問題は編成の方で、元の地位とかが絡んでくると、すこぶる面倒くさい。


 たとえば、支隊長はシーラの知り合いのアフマン将軍にお願いしたい所だけど、将軍は元子爵だ。

 元伯爵や侯爵、果ては公爵なんかがいたら、ややこしい事になる。


 そのうえ子爵同士、伯爵同士でも家格によって上下があったりするそうで、収容所まで来てそんな事を言ってもしょうがない気もするのだが、一応帝国復興軍を名乗っている手前、そういう事にも気を使わないといけない。


 そこで昨日から作ってもらっている収容者名簿の出番なんだけど、こちらにも元優秀な文官がいたのだろう。一晩でしっかりした物が出来上がっていたので、まずはそれに一通り目を通す。


 ……大きく問題になりそうなのは、侯爵経験者と伯爵経験者が1人ずつと、子爵経験者がアフマン将軍を含めて2人。

 あとは男爵経験者が4人いるようだ。


 当主と跡継ぎは処刑が基本だったらしいので、すでに引退していた老人組……なのかと思ったら、40代の人もいる。

 貴族家の相続問題とか、ややこしそうだよね。



 ――とりあえずアフマン将軍を含めた貴族家当主経験者8人に集まってもらい、俺はちょっと尊大な態度を意識して言葉を発する。


「余の顔に見覚えがある者はおるか?」


 ……元とはいえ、全員が貴族家当主経験者。


 そんな8人を相手に尊大な態度をとる若造に、一瞬場にピリッとした空気が流れる――。



「…………もしかして皇帝陛下でございますか?」


 しばらくの沈黙の後、初老の男性の一言で場の空気がザワッとなる。


 俺はあえてすぐに答えず。しばらく黙って8人を見渡していると、ザワつきが次第に張り詰めた空気へと変わっていく。


 俺が皇帝だったのはもう6年も前の11歳の頃なので、外見はかなり変わっているはずだ。

 そもそも俺を見た事がない人もいるだろう。


 だけど歴代皇帝って基本親子兄弟なので、なんとなく顔や雰囲気が似ている事はあると思う。

 なので、俺じゃない皇帝にでも会った事があれば、なんとなく俺にその面影を見い出してくれないだろうか?



 そんな事を期待してしばらくの時間を置き。


 場の空気が緊張してきた所で、俺はゆっくりと言葉を発するのだった……。




帝国暦169年 5月25日


現時点での帝国に対する影響度……10.279%


資産

・5749万ダルナ


・元宝石がいっぱい付いていた犬のぬいぐるみ(今はおでこに一つだけ)

・エルフの傷薬×35


配下

シーラ(部下・帝国復興軍精鋭部隊長・C級冒険者 月給50万)

メルツ(部下・ジェルファ王国軍務大臣・E級冒険者 月15万を上級傷薬代として返済中)

メーア(部下・ジェルファ王国軍務副大臣・E級冒険者 月15万を上級傷薬代として返済中)

エリス(協力者・ジェルファ王国国王・将来の息子の嫁候補 月30万を宿借り上げ代として支払い)

ティアナ(エリスの協力者 月給なし)

クレア(部下・ジェルファ王国宰相)

オークとゴブリンの巣穴から救出された女の人達24人(雇用中・北の拠点生産担当と中州の拠点運営担当 月給12万)

元孤児の兵士達103人(部下・帝国復興軍部隊長97人 北の拠点の船舶担当5人 医療班1人)

セファル(部下・アルパの街の物資管理担当・C級冒険者 月給30万)(弟も同職 月給10万)

ガラス職人(協力者 月給15万・衣食住保証)

船大工二人(協力者 月給15万・衣食住保証)

怪我を負った孤児の子達43人(北の拠点で雇用 月給7.2万)

キサ(部下・専属護衛・遊牧民 月給48万)

セラードとその妹リーズ(部下・元帝国西方新領州都防衛隊長 元子爵家子息 帝国復興軍後方部隊長と前線部隊長)

ミリザ(協力者・ジェルファ王国内務大臣・王都を仕切る裏稼業三代目)

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