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23 新たな仲間

 メルツさんを仲間に加え、俺達は一旦街へ戻る事になった。


 メーアさんはまだ意識が戻らないのでメルツさんが背負い、メルツさんの荷物は俺が持って、俺達の荷物も回収して帰路につく。


 グレートベアの素材は高値がつくらしいきばつめ。あとはお肉を少し回収したが、他は持てないのであきらめるしかない。


 夜の間に森の生物に全部食べられてしまうので、翌日残りを回収とかできないのは残念だ。


 明日からはメルツさんの加入で、持ち帰る事ができる素材の量が増えるのに期待である。



 メルツさんはメーアさんを背負っていても余裕があるようなので、帰り道で色々な話を聞いた。


 家を飛び出してから人が多い王都を避けて北に向かい、この街に辿り着いた事。


 F級冒険者から始めて半年ほど地道に実績を積みつつ鍛錬も続け、E級に昇格して森に入るようになったのは3日前からだという事。


 メルツさんは剣使い、メーアさんもメルツさんから剣を教わっての剣使いでバランスが悪いので、狩猟はせずにもっぱら薬草などの採取をしていた事。


 俺達もそうだったけど、逃亡者というのは北に向かいたくなるものなのだろうか?


 それにしても、3日目で本来森にいないはずのグレートベアに出くわしたのは、本当に運が悪かったね……そして改めて、一人で前衛と後衛を両方こなすシーラの優秀さを実感する。


 メルツさんは家からあまりお金を持って来られなかったそうで、今は二人で一泊2000ダルナの安宿に泊まっているらしい。


 壁が薄いので、となりの部屋の話し声やイビキなんかがよく聞こえるそうだ。


 仲間になって働いてもらうからには体が資本なので、シーラと相談して同じ宿にお誘いする。


 壁の厚さは知らないけど、俺達以外誰も泊まってないから静かだし、なによりごはんが美味しい。環境としては最高だと思う。


 メーアさんとの相談も必要だろうから、差額はこちらで負担すると伝えて検討してもらう事になった。


 一緒にクエストへ行くなら同じ所に住んでる方が便利だからね。朝ごはん食べながら打ち合わせとかできるし、差額負担分の価値はあると思う。



 そんな話をしながら歩いていると、メーアさんがかすかなうめき声を上げて目を覚ました。


 メルツさんが食い気味に具合を訊くが、あんなに重傷だったのに痛みも違和感も全くないらしい。すごいな上級傷薬。


 街に戻ったらまた買い足そうと心に決めていると、俺達から買った上級傷薬で回復したと聞いたメーアさんが、顔を青ざめさせる。


「――そんな、お金は? まさかメルツ……ダメ! 私が奴隷になります!」


 よく似た恋人同士なのか、大体同じ結論に到達したらしい。


 泣いて取り乱すのをなんとかなだめ、メルツさんは奴隷にならない。俺達のパーティーメンバーとして普通に働くと説明すると、今度は一転、泣きながら何度もお礼を言われた。


 められるのが苦手らしいシーラが居心地悪そうにしていたので、話を変えて宿を移る相談などをしながら街へと戻る。


 宿を移る件はメーアさんの了承も貰い、荷物を取りに行く二人と一旦別れて、俺達は冒険者ギルドに寄ってグレートベアの素材を納品してから、先に宿へと戻った。


 依頼が出ていない素材でも、価値があって保存がきく物は買い取ってくれるそうで、とても助かる。


 その日の夜にはメルツさん達も合流して、一緒に夕食を食べる事になった。


 グレートベアの肉をエリスが調理してくれたシチューはとても美味しくて、メルツさんとメーアさんも大満足の様子だった。


 そしてここで一つ謎が解ける案件があり、メルツさんがエリスの髪色を見て一瞬戸惑いの表情を浮かべたので、あとでこっそり訊いてみたら。緑の髪色は山の民の特徴だという話だった。


 山の民は北の大山脈に住んでいて、この街は多少の交易があるものの、基本的には異人みたいな扱いであまり深くは関わらないらしい。


 それは向こうも同じなので、混血はとても珍しい。そして、あまりいい目で見られない存在でもあるとの事だった。


 宿にいるエリスの父親は普通の髪色なので、母親が山の民なのだろう。父親に話を訊いてみたい気もするけど……下手に立ち入らない方がいいかな?


 とりあえず謎だった事が一つ……この宿にお客さんがほとんどいない事を含めれば、二つ解決した。


 メルツさんは西部出身なので山の民との関わり自体がほとんどなく、知識として知っているだけの存在だったそうで。この街に来てから色々聞きはしたけど、山の民に対して思う所は特にないようなので、エリスの事は気にせずこの宿に泊まってくれるそうだ。


 メーアさんも同じくで、ありがたいね。


 ちなみに俺とシーラは追っ手がかかった時には更に北へ逃げる予定なので、そうなったら山の民の領域に踏み込む事になるのだろう。


 向こうもこちらを避けているというのはあまりよくない情報だけど……まぁ、そうなったらその時に考えよう。


 山脈を越えた反対側にも人が住んでいるらしいので、そこまで逃げてもいいしね。


 そんな訳で翌日から、俺達は3人に増えたパーティーでクエストに行く事になったのであった……。




 メルツさんを仲間にしてから5日。メーアさんも正式にパーティーに加わってくれて、俺達は4人パーティーになった。


 その効果は絶大で、今まで出番がなかった馬のシルハ君にも活躍の場ができ、一緒にクエストに来ている。


 4人と1匹で街を出て、森の入り口でメーアさんにシルハ君の面倒を見ていてもらう。


 シルハ君はシーラにしか懐いていなくて、俺が触ろうとしても触らせてもくれない。


 メルツさんにも同じ対応だったので忠誠心が高い馬なんだなと思っていたら、メーアさんにはあっさりと懐いた。


 コイツただのエロ馬なのではないだろうか?


 ……まぁそれはいいんだけど、メーアさんとエロ馬を残して森に入り、シーラが魔獣を狩ると、メルツさんがそれを担いで一旦森を出る。


 先日のグレートベアなんかは本来森にはいない魔獣で、森にいるのは基本オオカミサイズまで。なのでメルツさん一人で担いで運ぶ事ができるのだ。


 ……ちなみに俺だと無理である。メルツさんはなんだかんだで体力がある。俺がないだけかもしれないけどね。


 そして森の外に運ばれた魔獣はメーアさんに渡され、解体される。


 メーアさんは元々戦闘よりも解体の方が得意らしく、丁寧な仕事はギルドでの評価も高い。


 森の中での解体は血の匂いを嗅ぎつけた魔獣に襲われる危険がある危ない作業だけど、草原に出る魔獣はウサギサイズなので、一撃で致命傷を負う事はないし、メーアさん一人でも十分戦う事ができる。


 シルハ君が草を食べながら周囲を警戒をしてくれるし、いざとなったら乗って逃げてくださいと言ってあるので、安全は確保されていると思う。


 獲物を運んだメルツさんは事前に決めた集合場所で俺達と再合流し、また獲物が獲れたらメーアさんの元に運ぶ。


 獲物が多い日はすでに次が用意されていて、とんぼ返りをする事もある。


 最後は解体した素材とお肉をシルハ君に積んで街に戻れば、狩った魔獣を全部納品する事ができるのだ。


 おかげで収入が増え、差額はメルツさん達に渡す報酬と宿代を補って余りある額になっている。


 そんな訳で冒険者稼業はすこぶる順調で、問題点と言えば俺がほぼ役に立っていない事くらいだ。


 ……いや、個人的にはわりと深刻な問題だけどね。



 俺としてはそんな悩みを抱えつつ、とりあえず冒険者生活自体は順調に過ぎていく。


 本当にどうしようね、俺の存在意義……。




現時点での帝国に対する影響度……0.0%


資産

・441万4580ダルナ(+12万2500)

・宝石を散りばめた犬のぬいぐるみ(わりとハゲてきた・上級傷薬買い直した)


配下

シーラ(部下・D級冒険者)

メルツ(パーティーメンバー・E級冒険者)

メーア(パーティーメンバー・E級冒険者)

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