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225 騎兵隊を迎え撃つ準備

 帝国軍の騎兵隊だけが分離してこちらに向かってくる気配を受けて、兵士達に対騎兵用の陣形である方陣を組ませると同時に、シーラに至急戻ってくるようにと伝令を飛ばす。


 俺は方陣の真ん中に陣取って兵士達の動きを見守るが、さすがベテランの兵士達.。流れるような動きで陣形を組んでいく。


 そしてリーズの指揮も中々見事なもので、シーラほどではないが、よく通る声で的確な指示を出していく。


 リーズと兵士達は、長く苦しい篭城戦を共に戦い抜いた間柄だからだろう。呼吸がピッタリで、『この部隊は強いな』と肌で感じさせてくれる。

 頼もしいね。


 ――とはいえ、方陣と言うのは外側を長槍で。その内側を弓隊で固めて、長槍で敵を防いでいる間に弓で射倒すのが本来の戦い方なんだけど、今の俺達には5000人の方陣の周囲を固めるだけの長槍がない。


 ないものはしょうがないので、短槍たんそうや剣も混ぜて外周を固める。


 数が少ない長槍は薄く満遍まんべんなくではなく、固めて配置する事にした。


 そうすれば敵はその部分を避け、違う場所に突撃をかけてくるだろうから、その部分は守備を厚くし、弓隊も集中させておく。


 陣形にわざと穴を作っておき、敵にそこを攻めさせてわなめるという計略は、兵法書にも書いてあった。


 ……まぁ、今回は穴どころか隙の方が多いガバガバ陣形なんだけどね。


 それでも敵の攻撃点を多少なりとも限定できて、そこの守備を厚くできるのは利点だ。


 短槍や剣は長槍に比べてリーチが短い分、騎兵突撃を防ぐ力は大きく劣るので、守備の弱い所は前の地面に短槍を突き立て、それを支柱にしてロープを張っておく。


 騎兵が引っ掛かれば落馬不可避だろう。


 簡単に設置できる代わりに簡単に無効化できてしまう障害物だけど、突撃を一瞬止めるくらいの効果はあると思う。


 特に、向こうは騎兵だけで歩兵がいないらしいので、採れる戦法は突撃一択なはず。

 それなら、速度を殺す効果は大いにあるはずだ。


 本当は周囲に溝を掘ったり、ちゃんとした柵を作ったりできるといいんだけど。そこまで準備する時間はないし、草原には所々に背の低い木が生えているだけなので、柵を作る木が確保できないからね。


 後はシーラに送った伝令が早く到着して、戻ってきてくれるのを祈るばかりだ。


 敵の騎兵2000に対してシーラの隊は200と10分の1だけど、追いついてきて背後を奇襲する事はできる。


 そしてそれは騎兵本来の特性を最大限活かした戦い方で、敵部隊に大きな動揺を与える事ができるはずだ……。



 そんな訳で、俺は前にも使った長槍製の脚立きゃたつモドキ……は今回長槍が貴重なので見送って、短槍で作った低い脚立モドキに登って、望遠鏡で周囲を観察する。


 低い脚立モドキは俺の視点を1メートルくらい高くしてくれる効果しかないけど、それでも周囲の兵士から頭2つ分くらい飛び出るので、見通しがいい。

 背が小さい子供である俺はとても助かる。



 ――周囲を見回しながら、方陣が綺麗に完成するのを確認し。

 ロープを張り終わって、作業に出ていた兵士達が方陣の中に戻ってくるのを見届けて、俺達は待機モードに移行する。


 周りより頭2つ分高い俺の顔には冬の冷たい風がモロに当たり、耳とか痛いくらいだけど、そんな事に文句を言っていられる状況でもないので、全周囲どこからやって来るかわからない敵を少しでも早く見つけるべく、視線を巡らせ続ける。



 ……しばらくそうしていると、脚立の下にいるキサが『馬の群れが来ます』と教えてくれた……が、望遠鏡で360°確認してみてもそれらしい様子は見えない。


「キサ、どうして分かるの?」


「地面が揺れています。まだ距離はありますが、こちらに向かっているのは間違いありません」


 なるほど、振動か。

 たしかに馬が走る時は結構な音と振動があって、大迫力だよね。


 俺は今の所振動とか感じないし、キサの隣にいるリーズも不思議そうな表情をしているので感じていないみたいだけど、ここは遊牧民としてこの草原で生まれ育ったキサの感覚を信じよう。


 キサが指差す方向を望遠鏡でじっと見ていると、果たせるかな。しばらくして薄っすら土煙が見えてくる。


『来たぞ!』と合図をすると、リーズが『戦闘用意!』と叫び。部隊全体に緊張が走る。


 俺は望遠鏡を覗きながら、(さすがにこのまま突っ込んでくる事はないよな? 距離を取って一旦停止してこちらの兵力や陣形を確認し、弱点だと思った場所に突撃してくるはずだ……)と、この先のシミュレートをする。


 ――大草原に戦雲と緊張が急速に満ちていく中。こちらに迫ってくる騎兵隊の様子をじっと見ていると、不意に先頭を走る騎兵が長い髪をした女性である事に気付き。さらによく見ると、とても見知った顔である事に気が付いた。


「あれ、シーラ?」


 思わず発した言葉に、キサとリーズも驚いた表情をして俺を見上げる。


 それはそうだろう。たしかに帰還を命じる伝令を送ったけど、それにしてはあまりに早すぎる。


 だけど、先頭を走る騎兵の姿は見間違いようもない、間違いなくシーラだ。


 そして、その後ろに掲げられているのは復興軍の旗。


 帝国の旗に、復興軍の象徴として黄色い太陽を描き加えた旗がひるがえっている。


 ……あの旗のデザインを決める時、最初は赤い太陽を描き加えようとしたら、みんなに『どうして赤なんですか?』って訊かれたんだよね。


 この世界の太陽は元の世界と同じ感じだけど、よく見ると別に赤くはない。


 元日本人的には太陽を赤く塗りがちだけど、元の世界でも太陽を赤く塗る国はかなり少数派だと聞いたのを思い出した。


 ――そんな話はともかく、こちらに向かっているのは間違いなくシーラ達なので、復興軍に一旦警戒を解くようにと命じ。


 脚立モドキに登っての偵察をリーズに代わってもらって、俺は方陣の外までシーラを出迎えに行く。



 戦場と言うのはホント、予想外の事が起きる場所だね……。




帝国暦169年 2月22日


現時点での帝国に対する影響度……6.569%(±0)


資産

・1億4184万ダルナ


・元宝石がいっぱい付いていた犬のぬいぐるみ(今はおでこに一つだけ)

・エルフの傷薬×35


配下

シーラ(部下・帝国復興軍精鋭部隊長・C級冒険者 月給50万)

メルツ(部下・ジェルファ王国軍務大臣・E級冒険者 月15万を上級傷薬代として返済中)

メーア(部下・ジェルファ王国軍務副大臣・E級冒険者 月15万を上級傷薬代として返済中)

エリス(協力者・ジェルファ王国国王・将来の息子の嫁候補 月30万を宿借り上げ代として支払い)

ティアナ(エリスの協力者 月給なし)

クレア(部下・ジェルファ王国宰相)

オークとゴブリンの巣穴から救出された女の人達24人(雇用中・北の拠点生産担当と中州の拠点運営担当 月給12万)

元孤児の兵士達103人(部下・ジェルファ王国軍部隊長 兵士97人 北の拠点の船舶担当5人 医療班1人)

セファル(部下・アルパの街の物資管理担当・C級冒険者 月給30万)(弟も同職 月給10万)

ガラス職人(協力者 月給15万・衣食住保証)

船大工二人(協力者 月給15万・衣食住保証)

怪我を負った孤児の子達43人(北の拠点で雇用 月給7.2万)

キサ(部下・専属護衛・遊牧民 月給48万)

セラードとその妹リーズ(部下・元帝国西方新領州都防衛隊長 元子爵家子息 帝国復興軍後方部隊長と前線部隊長)

ミリザ(協力者・ジェルファ王国内務大臣・王都を仕切る裏稼業三代目)

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