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220 情報工作

 キサの護衛のもとファラの街に着き、支店長さんの右腕さんがいる商会を目指す。


 道中街の様子を監察してみたが、多少の動揺は見られるものの、おおむね平穏な様子だった。


 ここは北部大草原から少し離れているのと、そこそこ大きな街で城壁も立派なので、攻められる可能性は低いと思っているのだろう。


 そしてこの街は、北部出身帝国兵にとった領主アンケートで、よくはないけど一番マシな評価を得た領主が治めている。


 さすが支店長さん、店を開く街の選定に当たって、その辺も考慮したのだろう。


 そして、いい領主がいる街は栄え。周辺に比べてますます豊かになっていくという、社会の本質を見た気がする。


 ここは領内で第二の街だそうだけど、領都がどんな所かちょっと気になるね。


 ――だけど今は内政より戦争に気を向けなけなければいけないので、街の観察はそこそこにして、右腕さんを訪ねる。



 商店を見ると大勢の人で賑わっていて、待たされるかなと思ったが、すんなりと奥に通された。

 どうやら特別対応をしてくれるらしい。一応出資者兼、主要商品の一つを卸しているおかげなのだろう。


「――アルサルさんお久しぶりです。お変わりありませんか?」


 そう言って、にこやかな表情で迎えてくれる右腕さん。

 元気そうだし表情も明るい。商売は順調なようだね。


「おかげさまで体の方は元気ですが、西方新領は色々あって商売がやりにくくなりましてね。こちらに本拠を移そうと思っています」


「うかがっています、ジェルファ王国が再興されたそうですね」


「はい。そうなるとまた帝国が攻めてきて戦いになるかなと思って、こっちに逃げてきました。

 ……そういえば店長は元ジェルファ王国民でしたよね? 国が再興されたら帰りたいと思いますか?」


「私は別に、国がなくなったから逃げてきた訳ではありませんからね。

 ここで店主になれるという話があったから、その話に乗ったのです。

 故郷に戻るとしたら夢破れた時か、ここで成功して錦を飾る時でしょうね」


「なるほど、それは心強いです。……なのに申し訳ないのですが、塩の輸送が難しくなりそうです」


「……反乱軍ですか?」


 お、帝国側ではそう呼ばれているのか。そりゃまぁ、復興軍なんて呼ぶのは具合が悪いよね。


「はい、北の草原地帯でうちの隊商の者が姿を見たそうで、結構な数だったとか。

 あんなのがうろついているようでは、おちおち行商もできませんよ」


 まぁ、俺が首謀者なんだけどね。


「そうでしょうね……帝国軍でも今、ジェルファ王国討伐と教国への再侵攻のために用意している部隊を、一部北に向ける事を検討しているようです。

 そうなったら、北は完全に戦場になってしまいます」


 お、早速帝国軍の情報が取れた。


 しかし一部か……それは困る。

 ジェルファ王国を攻められると俺達の後方基地が機能しなくなってしまうので、全軍を北に向けて欲しい所だ。


「一部ですか……足りますかね?

 目撃したうちの隊商によると、万を超える部隊が少なくとも2つ。他の部隊もいそうな感じだという話でしたよ」


「――それは確かな情報ですか? そんな大軍があんな僻地へきちに突然現れるとは思えませんが?」


「確実とは言えませんが、とにかく相当の大軍を見たのは事実のようです。

 そしてジェルファ王国では、帝国の捕虜を解放するという噂が流れていました。

 何万もの数となると、食べさせるだけでも大きな負担ですからね。


 そしてこの先は私の想像なのですが、現状に不満を持つ辺境領主の誰かが、ジェルファ王国と取引をしたのではないでしょうか?


 ジェルファ王国にとって厄介者である捕虜を引き取り、再武装させて反乱軍とする。

 ジェルファ王国にとっては厄介者である捕虜がいなくなり、帝国内で内乱が起これば、自国が攻められる危険も減る。

 一石二鳥の提案なので、断る理由がないでしょう。


 そして首謀者は、一気に数万のベテラン兵からなる反乱軍を組織できる。

 誰かそんな事をたくらみそうな領主に心当たりはありませんか?」


「…………正直、度重なる遠征軍の編成に不満を持っている領主は少なくありません。

 経済的な負担が大きいですし、兵士として送り出した領民は一人も帰って来ていないのです。


 働き盛りの若者の減少はそれだけでも大きな損失ですから、捕虜を受け入れて、ゆくゆくは自領の住民の補充に当てようという所まで考えているとしたら、やりそうな領主は幾つもいますね……」


 お、すごい、幾つもいるんだ。


 仲間に引き込めないか、そのうちこっそり連絡を取ってみよう。


 そして右腕さん。俺が思いっきり数を盛り、ある事ない事混ぜ込んだ反乱軍の話を、わりと本気で信じ込んでいるようだ。


 嘘の話を信じさせるコツは本当の話も混ぜ込む事だと言うけど、その通り本当の話も混ぜ込んであるので、説得力があったのだろうか?


 右腕さんは貴族との繋がりもそれなりにあるようなので、この情報が上手く帝国軍の上層部に流れて復興軍を過大評価し。全軍を北に向けてくれるとありがたい。


 普通の篭城戦なら敵は少ないほどいいけど、今回は逃げ回る持久戦なので、敵の数は多いほうが動きが鈍るし、食料の消費も多くなって自滅が早まるだろう。


 騎兵の数も増える事になるから、そこだけ注意だけどね。



 ……その後も右腕さんとあれこれ話をし。


 塩の売上の内、俺の取り分5820万ダルナを受け取ったり。


「戦乱を避けてジェルファ王国からこっちに来たのに、まさかこんな事になるなんてツイてませんよ……」


 と、俺がその戦乱の原因なのにわざとらしく愚痴ぐちを言ったりして無害な行商人を装ったりしながら時間を過ごし、


『しばらくこの街にいますから、なにかいい情報があったら教えてください』と言って、右腕さんと別れた。



 これで帝国軍の注意が北に向いてくれるといいけどね……。そしてさらに、味方に裏切り者が潜んでいると疑心暗鬼ぎしんあんきになって、士気が下がったり統率が乱れてくれたりしたら万々歳だ。


 右腕さんは、俺の情報が本当ならただでさえ値上がりしている武器や食糧がさらに暴騰するだろうとの事で、その辺に投資するらしい。


 買い占めで武器や食料が値上がりするのは帝国軍の財政を圧迫するだろうから、俺にとってもいい事だ。どんどんやって欲しい。



 そんなこんなで色々種を蒔き。実が生るといいなと思いながら、俺はしばらくの間情報収集に努めるのだった……。




帝国暦169年 1月18日


現時点での帝国に対する影響度……6.284%(+0.0218)※帝国北部で村の徴税官館襲撃をさらに拡大


資産

・1億4545万ダルナ(+5790万)


・元宝石がいっぱい付いていた犬のぬいぐるみ(今はおでこに一つだけ)

・エルフの傷薬×35


配下

シーラ(部下・帝国復興軍精鋭部隊長・C級冒険者 月給50万)

メルツ(部下・ジェルファ王国軍務大臣・E級冒険者 月15万を上級傷薬代として返済中)

メーア(部下・ジェルファ王国軍務副大臣・E級冒険者 月15万を上級傷薬代として返済中)

エリス(協力者・ジェルファ王国国王・将来の息子の嫁候補 月30万を宿借り上げ代として支払い)

ティアナ(エリスの協力者 月給なし)

クレア(部下・ジェルファ王国宰相)

オークとゴブリンの巣穴から救出された女の人達24人(雇用中・北の拠点生産担当と中州の拠点運営担当 月給12万)

元孤児の兵士達103人(部下・ジェルファ王国軍部隊長 兵士97人 北の拠点の船舶担当5人 医療班1人)

セファル(部下・アルパの街の物資管理担当・C級冒険者 月給30万)(弟も同職 月給10万)

ガラス職人(協力者 月給15万・衣食住保証)

船大工二人(協力者 月給15万・衣食住保証)

怪我を負った孤児の子達43人(北の拠点で雇用 月給7.2万)

キサ(部下・専属護衛・遊牧民 月給48万)

セラードとその妹リーズ(部下・元帝国西方新領州都防衛隊長 元子爵家子息 帝国復興軍後方部隊長と前線部隊長)

ミリザ(協力者・ジェルファ王国内務大臣・王都を仕切る裏稼業三代目)

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