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217 帝国復興軍始動

 セラード達と会議を持った翌々日。俺達は5000人の元帝国兵と一緒に東へと向かう。


 元帝国軍はジェルファ王国内では元侵略軍なので、揉め事を避けるために街や村を避けて進む事になり。

 それぞれが持てるだけの食料を持っての行軍である。


 表向きは捕虜の移送という事にして、若干の王国兵が警備についている。


 ちなみに軍の名称だけど、『反帝国軍』は元帝国兵達からの反応がよくないという事で、『帝国復興軍』を名乗る事になった。


 名称を公募したら『帝国革命軍』も多かったんだけど、これだと皇帝そのものを打倒してしまいそうなので、今は隠している俺の立場上、『復興軍』を採用した。


 なんか災害でもあったみたいな響きだけど、宰相一派の専横せんおうが国を荒れさせる災害みたいなものという事で、納得しようと思う。



 行軍自体は街や村を避けたのと、王国軍の警備のおかげで特にトラブルもなく進み。年末までに国境近くまで進む事ができた。


 帝国軍はまだ動き出していないようだけど、年が明けてしばらくしたら行動開始という可能性は十分にある。


 そしてその場合の目標は、当然ジェルファ王国になるだろう。


 教国に攻め込んだ捕虜の内、貴族を身代金と交換で帝国に返す交渉はすでに始まっているはずなので、それが侵攻を遅らせてくれる可能性もあるけど、過信はできない。


 俺もリストを見せてもらったけど、上は侯爵や、公爵家子息の男爵とかいたから、彼等が帰ってくるまでは仲介者のジェルファ王国を攻めないでおく……という流れはワンチャンあると思う。


 だけど怒り狂った宰相が今すぐ攻めろと言ったら、それで決まりだ。

 独裁国家の怖い所だよね。


 その辺どうなるか分からないので、なるべく早く反乱軍……じゃなくて帝国復興軍を起こして、帝国の注意をこちらに引き付ける必要がある。


 そのための兵力は、5000人。


 国境近くの街の郊外に着いたら、なぜか帝国軍の装備がギッシリ詰め込まれた小屋が複数あって、そこで装備を整える。


 州都守備隊が武装解除された時の物なので、元の持ち主に返った訳だ。

 中には自分の装備を見つけて、喜んでいる兵士もいた。



 ――そんな訳で準備は整ったのだが、問題は復興軍が旗揚げする場所と方法だ。


 ジェルファ王国を拠点にしている事は絶対に知られてはいけないので、国境沿いの街は避けたい。


 南へ行くと大きな砂漠があるが、砂漠は拠点には適さないだろう。


 となると……やはり多少の土地勘がある北の大草原。

 そしてそこから更に奥まった所にある、大山脈の東端近くだろうね。


 あそこはたまに遊牧民が放牧に来るくらいで、固定の住民はいない。

 住民がいないという事は食料を現地調達できないので、大軍は行動しにくいという事でもある。


 大軍相手の守りには適した場所だ。


 元の世界のモンゴル軍みたいに、大量の羊を動く食料として同伴するとかされたら困るけど……。


 そこは遊牧民とちょっと仲がいい事を利用して、先に手を回しておこう。


 馬の繁殖所も、もしかしたら戦いに巻き込まれてしまうかもしれないので、ちょっと東か北に移転してもらおう。

 村の移転が簡単なのは、遊牧民の強みだよね。


 一応キサに確認を取ってみたら、『移動は慣れたものですから問題ありませんが、放牧地が制限されるのは家畜の頭数に影響しますね……』と、複雑な表情をされた。


 ――これはどうやら、俺が高値で羊を大量に買い上げる必要がありそうだ。


 一頭あたりの売値が高くなれば頭数が減っても利益が減る事はないし、なんなら更に高額で買い上げて、食料は帝国領の村から穀物を買ってもらうようにすれば、帝国北部で穀物が品薄になって値段が高騰し、帝国軍の食料調達を難しくできるかもしれない。


 さすがに自国内で略奪はやらないと思うから、値段が上がれば負担が増えるだろう。

 特に地方領主の場合、3回目の遠征軍という事もあって金銭的な負担はかなり重くのし掛かっているだろうから、そこで食料高騰は更なる痛手になるはずだ。


 草原が戦場になる事で遊牧民にかける迷惑を補償しつつ、帝国軍に嫌がらせもできる一石二鳥の作戦。

 帝国軍が動く食料である羊を買うのを妨害し、俺達が買った羊を復興軍の食料にすれば、一石三鳥か四鳥の作戦である。



 そんな訳でシーラとリーズ、キサの同意も貰って、作戦行動を起こす。


 辺境にいきなり5000人の大部隊が出現するのはいくらなんでも不自然だし、計画している作戦もあるので、まずは小部隊で活動をはじめる。


 シーラを隊長にした騎馬兵50人くらいで、村の徴税官館を襲うのだ。


 徴税官というのは領主から村の管理を任されている役人で、主な仕事は税の徴収だけど、状況に応じて村の管理もやる。


 昨今の情勢だと兵士の徴集もやっていたはずで、ただでさえ嫌われているのに、より一層嫌われている事だろう。


 ――つまり、襲撃しても住民の反感を買う事はないし、領主の権威を失わせる効果もある。実にいい目標だ。


 本当は資金や物資も奪いたい所だけど、それだと盗賊要素が強まってしまうし、あまり一ヶ所に時間をかけずに数をこなしたい。

 その辺は村人に任せる事にして、馬や武器などがあれば可能な限り回収する程度にしておく。


 そして俺が書いた、『我々は帝国復興軍である! 悪徳貴族共による暴政をちゅうし、帝国を正すために立ち上がった!』と書いた紙を撒いてもらう。


 枚数は少しでいい。どうせ村人の大半は字が読めないので、読める人の所に届けられて、そこから情報が広がればいいのだ。

 そして、最終的に帝国の上層部まで届けば成功である。


 襲撃の参加者は、最初50人。

 2日後には100人。

 4日後には200人と、どんどん増やしていく。


 今の所積極的に新規参加者をつのる予定はないけど、どんどん人数が増えているように見せかけるのだ。


 復興軍5000人は、数万人を擁する帝国軍からしたら弱小勢力である。あまり大きな脅威に感じてもらえないだろう。


 だけど、最初50人だった兵力が10日後には1500人くらいに。

 20日後には5000人に増えたら、それはかなりの脅威に映るはずだ。


 実際はそこで打ち止めだけど、それを知らない帝国軍から見れば、50日後には数万の大軍に膨れ上がっていると思うかもしれない。


 5000の反乱軍が現れただけなら、数万の帝国軍は全体の一部。1万か1万5000くらいの部隊を割いて対応に当たらせれば十分で、残りは本来の目的であるジェルファ王国へ向かってしまうだろう。


 だけどすさまじい勢いで数を増していく反乱軍がいたら、不気味すぎて様子見に回る可能性が高いと思う。


 そこが今回の狙い所だ。実数ではなく幻想を帝国軍に見せて、動揺を誘う。


 そんな話をシーラとリーズにして同意を貰い。シーラは50騎を率いて襲撃に。

 リーズは残りを率いて、草原に数ヶ所の仮拠点を作ってもらう。


 草原と言っても所々に背の低い木が生えているので、それを使ってテント小屋を作り、食糧を備蓄しておくのだ。



 話が決まれば行動が速いのがシーラ達のいい所で。近くの街からお酒と少し豪華な食事を仕入れて復興軍全員で新年を祝った後、翌日には早速帝国との国境になっている川を超える。



 大部分は草原に。そして一部は襲撃にと、早速最初の行動が開始されるのだった……。




帝国暦169年 1月2日


現時点での帝国に対する影響度……6.2422%(±0)


資産

・2億2655万ダルナ(-1132万)


・元宝石がいっぱい付いていた犬のぬいぐるみ(今はおでこに一つだけ)

・エルフの傷薬×35


配下

シーラ(部下・帝国復興軍精鋭部隊長・C級冒険者 月給50万)

メルツ(部下・ジェルファ王国軍務大臣・E級冒険者 月15万を上級傷薬代として返済中)

メーア(部下・ジェルファ王国軍務副大臣・E級冒険者 月15万を上級傷薬代として返済中)

エリス(協力者・ジェルファ王国国王・将来の息子の嫁候補 月30万を宿借り上げ代として支払い)

ティアナ(エリスの協力者 月給なし)

クレア(部下・ジェルファ王国宰相)

オークとゴブリンの巣穴から救出された女の人達24人(雇用中・北の拠点生産担当と中州の拠点運営担当 月給12万)

元孤児の兵士達103人(部下・ジェルファ王国軍部隊長 兵士97人 北の拠点の船舶担当5人 医療班1人)

セファル(部下・アルパの街の物資管理担当・C級冒険者 月給30万)(弟も同職 月給10万)

ガラス職人(協力者 月給15万・衣食住保証)

船大工二人(協力者 月給15万・衣食住保証)

怪我を負った孤児の子達43人(北の拠点で雇用 月給7.2万)

キサ(部下・専属護衛・遊牧民 月給48万)

セラードとその妹リーズ(部下・元帝国西方新領州都防衛隊長 元子爵家子息 帝国復興軍後方部隊長と前線部隊長)

ミリザ(協力者・ジェルファ王国内務大臣・王都を仕切る裏稼業三代目)

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