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201 第二段作戦開始

 新生ジェルファ王国の建国が無事終わり、俺達は新しい作戦に向かって動き出す。


 まず、エリス国王以下内政組は国内の安定と復興、整備と兵士の募集に当たってもらう。


 クレアさんは正式に宰相に、ミリザさんは内務大臣に就任し。メルツは軍務大臣、メーアは軍務副大臣になった。


 他の要職にも順次適任者を探し、内政整備は急速に進んでいるらしい。


 兵力を支えるのはジェルファ王国の国力と国民の支持だから、頑張ってもらいたい。



 そして正式にジェルファ王国が建国された事で、エリスやメルツ達の給料は俺の手を離れて国から出るようになったし、解放軍改めジェルファ王国軍の経費も国から出るようになった。


 それはとても助かるんだけど、俺との雇用関係がなくなると知ったエリスがものすごく悲しそうな顔をして、捨てられる前の子犬ってこんな感じなのかなと思う姿だったので、思わず『宿はまだ借り続けるから、エリスとの関係がなくなる訳じゃないよ』と言ったら、とても嬉しそうな笑顔を見せてくれた。


 懐いてくれるのはありがたいね。


 そして新規の兵士は主に王都の住民からつのる事になるが、帝国の遠征軍との戦いは間近に迫っている。


 今から訓練をしている時間はないので、元王軍や領軍にいた人達で一隊を編成し、未経験者は後方の輸送部隊に回ってもらう。


 解放軍改めジェルファ王国軍は、総司令官は変わらずメルツ。

 新たに5000人隊が一隊増え、東部に1隊と、手元に5隊になった。


 総数3万を超える数で、正直ジェルファ王国の国力で維持し続けるのは難しい。


 なるべく早く戦いに目処めどをつけないと、ジェルファ王国の国力が底をついて、戦いどころではなくなってしまう。


 国民の生活が苦しくなればエリス女王の統治にも影響し、ジェルファ王国を帝国と戦う拠点にしようという俺の計画も崩れてしまう。


 そしてそんな状況でまた帝国が攻めてきたら、せっかく造った新生ジェルファ王国は崩壊し、再び帝国の西方新領にされてしまうだろう。



 なのでこの戦いは、可能な限り早く決着をつけないといけない。


 王都を囲んでいた教国軍は教国本土に攻め込んだ帝国軍の後を追い、今頃戦いになっているだろう。


 まだ偵察隊からの報告は届いていないけど、多分教国軍は負けたと思う。


 いくら背後を襲っても、数で圧倒的に劣るし、王都の包囲戦で相当消耗していたからね。


 とはいえ損害は与えてくれたはずなので、俺達はその後を継ぐ形で、帝国軍と戦う事になる。


 結果として帝国軍を撃退できれば教国本土を救う事になるので、教国軍の犠牲は無駄にならない……というのは俺の自己弁護だろうか。


 利用した事には変わりないけど、あのまま王都を囲み続けて無為に全滅するよりはマシだったと思う。


 教国人である以上、祖国が他国に。教国人的には異教徒に踏み荒らされるのが面白い訳はないし。同じ死ぬなら他国を攻めてよりも、自国を守るためにの方がいくらか意味を見い出せると思う。


 ……まぁ、教国兵は『神のために死ぬなら同じ事』って言うのかもしれないけどね……。



 ――そんな訳で、解放軍改めジェルファ王国軍はメルツの指揮の下。教国内に攻め込んでいる帝国軍を討ちに向かう。


 さっきの教国軍の話じゃないけど、今までの自国を取り返すための戦いと違って自国外での戦いになるから、反対意見や離脱者が出るかと思ったけど、予想に反してほとんど出なかったらしい。


 メルツや各部隊長の演説や訓示くんじの効果もあったのだろうけど、みんな本能的に、このままでは新しいジェルファ王国は存続できないと分かっているのだろう。


 ジェルファ王国が生き残る道は大国二つの間の緩衝地帯かんしょうちたいとしてしかなく、そのためには帝国と教国、二大国の力のバランスが取れていないといけないのだ。


 もしどちらかが圧倒的に強ければ、ジェルファ王国は弱い方諸共、強い方に飲み込まれてしまうだろう。


 そんな危機感を胸に、兵士達は住民の大歓声に送られて王都を出発していく。


 ……この光景。みんなの期待を背負って歓呼かんこの声で送り出されたというのは、後日苦しい戦いを強いられる事になった時。きっと兵士達の力になってくれるだろう。


 次の戦いは、多分今までで一番厳しいものになるだろうからね……。


 住民の歓声に笑顔で手を振って応える兵士達を、俺は複雑な心境で見守るのだった……。




 ――ジェルファ王国軍の兵士達が出発した後。俺はしばらく軍の事をメルツに任せ、『30日後に、ジェルファ王国と教国の国境。俺達が教国軍の侵攻に巻き込まれかけたあの街で』と合流の約束をし、一旦別行動を取る。


 俺は解放軍の軍師改め、ジェルファ王国軍の軍師になったので、その仕事が。

 そして帝国の宰相打倒を目指す、元皇帝としての仕事があるのだ。


 合流まで、ジェルファ王国軍は警戒を厳重にし、情報収集と訓練をしながらゆっくりと進んでもらう。


 もし敵に出くわしたら、防御重視でなるべく戦いを避けるようにとお願いしてあるけど、そこは相手次第でもあるからね……。


 俺が戻るまで、なにもないといいなと思う。



 そんな訳でメルツ達と別れた俺達はまず北の元志願兵訓練所に向かい、そこに収容されているセラード以下元帝国軍州都守備隊の様子を確認する。


 ちゃんと食料や生活物資が届けられていて、王国軍との接触も最小限。大きなトラブルも起きていない事を確認して、ホッと一息をつく。


 これはクレアさんのおかげだろう、さすがだ。


 安心した所でアルパの街に向かい、塩倉庫に使わせてもらっているエリスの宿屋に顔を出す。


 ここは今、セファルさんとその弟が担当してくれていて、ティアナさんが大山脈を越えて中州の拠点まで運んでくる塩を、セファルさんがここまで運んで、弟君が管理してくれている。


 解放軍の行動開始以降ティアナさんの塩輸送が再開したけど、現状支店長さんの商会には卸していないので、結構な量の在庫が積み上がっていた。


 エリスやメルツ達の給料、解放軍の運営費負担がなくなったとはいえ、セファルさん達や北の拠点のみんな。キサの給料や、遊牧民に馬を育ててもらっている経費なんかは俺負担だし、将来的に反帝国軍を組織するなら、莫大な資金が必要になる。


 なので少しずつ商売を再開する事にして、『少量ずつなら卸せます』と書いた手紙を託し、支店長さんに届けてもらう。


 帝国と関係が深かっただけに今の立場は微妙そうだけど、新生ジェルファ王国の方針として、帝国への協力者にも寛大な対応を取る事になっているので、商売は続けられていると思う。


 そこにも後日顔を出す予定だけど、とりあえず今は先に、セラードに約束した傷薬を届けないといけない。


 そのためにエルフと交易をするべく、馬に積めるだけの塩を積み、セファルさんが運んでくれているのとは逆のルートで、中州の拠点へと向かう。


 中州の拠点にも塩のストックがあると思うけど、大量に取引するので念のためだ。



 そんな訳で俺達は中州の拠点を経由して、久しぶりの大山脈へと足を踏み入れるのだった……。




帝国暦168年 9月9日


現時点での帝国に対する影響度……2.7422%(±0)


資産

・2445万ダルナ(-45万)


・元宝石がいっぱい付いていた犬のぬいぐるみ(今はおでこに一つだけ)

・エルフの傷薬×5


配下

シーラ(部下・ジェルファ王国軍精鋭部隊長・C級冒険者 月給50万)

メルツ(部下・ジェルファ王国軍務大臣・E級冒険者 月15万を上級傷薬代として返済中)

メーア(部下・ジェルファ王国軍務副大臣・E級冒険者 月15万を上級傷薬代として返済中)

エリス(協力者・ジェルファ王国国王・将来の息子の嫁候補 月30万を宿借り上げ代として支払い)

ティアナ(エリスの協力者 月給なし)

クレア(部下・ジェルファ王国宰相)

オークとゴブリンの巣穴から救出された女の人達24人(雇用中・北の拠点生産担当と中州の拠点運営担当 月給12万)

元孤児の兵士達103人(部下・ジェルファ王国軍部隊長 兵士97人 北の拠点の船舶担当5人 医療班1人)

セファル(部下・アルパの街の物資管理担当・C級冒険者 月給30万)(弟も同職 月給10万)

ガラス職人(協力者 月給15万・衣食住保証)

船大工二人(協力者 月給15万・衣食住保証)

怪我を負った孤児の子達43人(北の拠点で雇用 月給7.2万)

キサ(部下・専属護衛・遊牧民 月給48万)

セラードとその妹リーズ(部下・元帝国西方新領州都防衛隊長 元子爵家子息)

ミリザ(協力者・ジェルファ王国内務大臣・王都を仕切る裏稼業三代目)

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