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197 教国軍との交渉

 王都を囲む教国軍の一隊を撃破し、王都内との連絡を取れるようになった所で、俺は教国軍との交渉を試みる。


 教国軍は強い信仰心に支配された軍隊で、異教徒相手に降伏するくらいなら全滅するまで戦う、厄介な相手だ。


 一部隊と戦ってりたので、もう戦いたくない。


 なので戦わなくて済む方法を考えるが、最良の方法は味方に引き込む事。


 だけどそれは難しいので、次善の策としては……『敵意を他に向ける』だろうね。


 そして敵意を向けてもらう対象は、帝国軍。それも仲間になった王都内の帝国軍ではなく、教国本土に侵攻中の帝国軍が理想的だ。


 本土が危ないので救援に戻れって話だから。話としても通りやすいと思うし、なんなら普通にそういう命令が来ていてもおかしくない。


 動きがない所を見ると来てないんだろうけど、そろそろ帝国軍が教国本土に攻め込んでいるはずなんだけどね?


 もしかしてあっさり負けたのだろうか? それだと俺の計画が根本から狂うので勘弁して欲しいな……念のために偵察隊を出しておこう。


 当分戦わない事を前提に、貴重な騎馬兵力から10騎を割いて偵察に行ってもらう。


 その間に俺は、『帝国軍が教国本土に攻め込んで教国がピンチ』という、計画通り進んでいる前提で教国軍に交渉を持ちかける。


 方法としては、教国の伝令を装って『本国ピンチ、すぐ戻れ』の命令を伝えるでもいいんだけど、偽の命令って難しいんだよね。


 いくら戦術が雑で、軍人ではなく聖職者が司令官をやっているといううわさがある教国軍とはいえ、本国からの指令クラスの重要案件は書面で、決まった書式があると思う。

 偵察隊を装った口頭こうとうでの嘘報告とは違うのだ。


 俺が帝国軍を偽の勅令ちょくれい状で教国本土に向かわせる事ができたのは、ハンコを突くだけのお飾りとはいえ皇帝をやった経験があるからで、教皇はやった経験がないので、教国の指令書の書式とかさっぱり分からない。


 なので、解放軍の軍師として交渉するしかないだろう。


 王都の帝国軍とは元皇帝として交渉し、教国軍とは解放軍の軍師として交渉する。

 肩書きがコロコロ変えられて便利だね。



 ――とはいえ、教国軍との接触は危ない。


 王都への潜入も危なかったけど、あれは一応元皇帝と帝国軍という、本来味方の間柄だった。


 だけど解放軍軍師と教国軍は、普通に敵同士である。


 一般的には正式な使者をいきなり殺したりはしないけど、教国軍はその辺イマイチ信用がない。


 なのでまずは矢に手紙を結びつけた矢文やぶみを放ってコンタクトを取り、次に手紙を持った使者の派遣。さらに贈り物として食料を持った使者の派遣と段階を踏んで、俺が直接乗り込んだのは三日目だった。


 あまり相手を刺激しないよう、メンバーは最低限の俺とシーラとキサ。そして前回前々回と使者に立ってくれた部隊長の子だ。


 北・西・東とある教国軍の陣地の内、西の陣地におもむくと、一年近くも補給を受けていないのだろう。ボロボロの服を着てボロボロの武器を持った教国兵達が、ギラついた目で俺達を見る。


 向けられているのは敵意……ともちょっと違うな。侮蔑ぶべつの視線に近い感じがする。


 異教徒は敵と見る以前に、さげすみ、軽蔑けいべつする存在という事だろうか? 怖いね……。



 居心地の悪さを感じながら、案内されたのはボロボロの小屋が建ち並ぶ中で、一際立派な建物。どうやら教会らしい。


 異教徒の俺は中に入る事を許されないようで、建物の前に並べられた椅子いすに座り、教国軍の代表と対峙たいじする。


 相手は初老の男性で、着ている服や持っている杖からすると、軍人ではなく聖職者だろう。ホントに聖職者が指揮しているんだね。


 どおりで勢いだけで戦略性がないはずだ。短期決戦にはそれでも良いかもしれないけど、長期戦には向かないだろうね。


 現状を考えれば、もう王都攻略は無理なので撤退するべきだけど、かたくなに現地に留まり続けている。


 どこかから『王都を攻略せよ』という命令が出ていて、それに盲目的に従っているのだろうか?


 そんな感想を抱きながら、俺はジェルファ王国解放軍軍師のアルサルと名乗り、向こうは『帝国征討せいとう軍指揮官、ノーム枢機卿』と名乗る。


 帝国征討軍か、いい名前だ。


 つまり敵は帝国であって、ジェルファ王国解放軍ではないという解釈が成り立つ。


 ――まぁ、この名前を決めたのだろう時には、まだ解放軍は存在していなかったからね。


 それはともかく、枢機卿が俺に向ける視線は虫でも見るようなもので、とても居心地が悪いので迅速に話をはじめる。


「お時間を取って頂いてありがとうございます。現状については手紙でもお知らせした通り、帝国軍の大部隊が教国本土に向かって侵攻中です。


 本土では苦戦が予想されるでしょうから、ここは一旦和睦わぼくという事にして、教国本土への救援に向かわれる事をお勧め致します」


 俺の言葉に、枢機卿は不愉快そうな表情を隠そうともせずに言葉を発する。


「そのような報告は入っておらん。なにか証拠でもあるのか?」


「我々ジェルファ王国解放軍が、今こうしてここにいるのがなによりの証拠です。


 貴国の侵攻から9ヶ月。帝国が無策であったはずはなく、当然大兵力を集めて反攻の用意をしていました。


 その脅威があれば我々は反乱を起こすどころではなく、起こしたとしてもあっという間に鎮圧されていたでしょう。


 ですが我々は反乱を起こす事に成功し、今こうして王都を解放しようとしている。それができたのは帝国軍の攻撃目標がジェルファ王国内に無く、はるか西を目指して進軍していったからです」


「…………」


 お、悩んでいるな。いい感じだもうちょっと押してみよう。


「考えてみれば、帝国軍の作戦は中々上手いと言えます。

 帝国にとってジェルファ王国は『西方新領』であり、失った所で数年前の状況に戻るだけで、大した痛手ではない。


 それならジェルファ王国内に教国軍の主力を引き付けておいて、その隙に教国本土を襲った方が圧倒的に得る物が大きい。


 教国本土をってしまえば、ジェルファ王国内に教国軍が残っていた所で、ゆっくり処置すればいいだけです。

 放っておいても自分達の手に返ってくるくらいの感覚でしょうね」


 俺の言葉に、枢機卿はめいいっぱい眉根を寄せて、苦虫を噛み潰したような顔になる。



 うん、交渉のスタートはいい感じだ……。




帝国暦168年 8月1日


現時点での帝国に対する影響度……1.2422%(±0)


資産

・2490万ダルナ

・エリスに預けた反乱軍運営資金 5640万ダルナ


・元宝石がいっぱい付いていた犬のぬいぐるみ(今はおでこに一つだけ)

・エルフの傷薬×100


配下

シーラ(部下・解放軍精鋭部隊長・C級冒険者 月給50万)

メルツ(部下・解放軍総司令官・E級冒険者 月給35万・内15万を上級傷薬代として返済中)

メーア(部下・解放軍総司令官補佐・E級冒険者 月給35万・内15万を上級傷薬代として返済中)

エリス(協力者・解放軍後方参謀・将来の息子の嫁候補 月給10万と月30万を宿借り上げ代として支払い)

ティアナ(エリスの協力者 月給なし)

クレア(部下・解放軍支配地内政担当 月給29万 内24万は帝国暦169年5月分まで前借り中)

オークとゴブリンの巣穴から救出された女の人達24人(雇用中・北の拠点生産担当と中州の拠点運営担当 月給12万)

元孤児の兵士達103人(部下・解放軍部隊長 月給3万 兵士97人 北の拠点の船舶担当5人 医療班1人)

セファル(部下・アルパの街の物資管理担当・C級冒険者 月給30万)(弟も同職 月給10万)

ガラス職人(協力者 月給15万・衣食住保証)

船大工二人(協力者 月給15万・衣食住保証)

怪我を負った孤児の子達43人(北の拠点で雇用 月給7.2万)

キサ(部下・専属護衛・遊牧民 月給48万)

セラードとその妹リーズ(部下 元帝国西方新領州都防衛隊長 元子爵家子息)

ミリザ(協力者 ジェルファ王国王都を仕切る裏稼業三代目)

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