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191 王都守備隊長との会見

 俺とシーラとキサ。そしてミリザさんを加えた四人は、旧ジェルファ王国王城。


 今は帝国西方新領総督居城で、近いうちに新生ジェルファ王国王城になるといいなと思っている場所を歩いている。


 正門前に馬車を着けた俺達を門番の帝国兵は不審そうに見ていたが、守備隊長からの手紙を見せると、姿勢を正して挨拶し、中へ案内してくれた。


 ……どうやら、規律はかなり高度に保たれているようだ。


 長期間の包囲戦の中で。しかも上級指揮官達が逃げた後でこれは、中々凄い事である。


 やっぱり今の守備隊長は優秀なんだろうね。


 王城内も、物がなくガランとしてはいるが、乱雑に散らかったり汚れたりはしておらず、最低限の掃除も行われている様子が見て取れる。


 食料や武器の在庫量とかは分からないけど、とりあえず今すぐ落城や軍崩壊みたいな兆候は感じないね。


 そんな事を考えながら王城内を進んで行くと、二階にある一室に案内された。


 あまり広くはないが、調度品などもあってわりと豪華な部屋。


 元は大事な使者の控え室とか、そんな感じだろうか?


 中央に置かれた背の低いローテーブルの向こうに座っていた若い男が、俺達を見ると立ち上がり。俺達もテーブル前まで進むと、『帝国軍西方新領州都防衛隊臨時総隊長 セラードだ』と名乗った。


 こちらも俺が『アムルサール帝国第26代皇帝、アムルサール26世である。こっちはマイコール元伯爵家の長女シーラ。護衛のキサと、ミリザは知っておるな』と、皇帝口調でみんなを紹介する。


 ……今の所セラード隊長の俺達に対する接し方は、対等な立場の相手に敬意を払って対応しているという感じだ。


 いきなり現れた元皇帝を名乗る不審者相手にしては、かなり丁寧だと思う。皇帝の肩書きってそんなに強いのだろうか?


 そんな事を考えながら椅子いすに腰を下ろすと、セラード隊長も座る。


 隊長の服は戦場と言うよりも儀式で着るようないい仕立てのもので、勲章みたいな物も付けている。


 隊長の後ろに副官か護衛か、武器を持った男の人が四人並んでいるけど、その人達も正装だ。俺もピシッとした服を着てくるべきだったかな?


 ――まぁ、そんな事を今更考えてもしょうがないので、皇帝らしい堂々とした振る舞いを意識して、セラード隊長と向かい合う。


 こっちは俺の隣にミリザさんが座り、シーラとキサは護衛として後ろに立っている。


 そういえば武器取り上げられなかったな。キサが背負っている荷物も、中を改められたりしなかった。


 敬意を払ってくれたのか、俺達が刺客でも撃退できるくらい、腕に自信があるのだろうか。


 シーラは向かい合えば相手の技量がある程度分かると言っていたけど、俺にはさっぱりだ。隊長と後ろの四人、強いのだろうか?


 一通り視線を巡らし終わった頃、向こうもこちらの品定めを終えたのか、言葉を発する。


「この手紙によると、貴方は三代前の皇帝陛下であるとの事ですが」


 ――ん、三代前?


 二代前じゃなかったっけ? 宰相また皇帝を殺したのか? 俺が逃げてまだ五年だぞ。


 ……顔も知らない弟だけど、殺されたと聞くと気分がよくないね。


「何代前かは知らんが、余はアムルサール26世だ。また宰相が大逆たいぎゃくを働いたのだとすれば、不愉快極まるな」


 俺の返事に隊長は表情を変えず、言葉を続ける。


「失礼ですが、貴方が26世陛下であるという証拠をお持ちですか?」


 それな……正直一番弱い所なのだが、物証の類は何もない。


 後宮ハーレムから持ち出した物なんて、逃亡資金にと宝石をいっぱい縫い付けてもらった犬のぬいぐるみくらいだ。


「皇都からはここにいるシーラの助けを借りて、身一つで逃げ出したゆえ証拠になるものはない。

 貴官は元子爵家の者であると聞くが、余の顔を見た事はないか?」


 そもそも何を持ち出していたら証拠になったかもよく分からないけど、王冠おうかんとか玉璽ぎょくじとかだろうか?


 でもそんな物持ち出せる訳ないよね。


 その辺の事情は隊長側も察しがつくらしく、証拠がないから即捕縛みたいな対応はとらないようだ。


「父の供をして新年の祝賀式典に出た際に、お姿を拝見した事はあります。ですが遠目だった事もあり、あの時に見た皇帝陛下が貴方と同一人物である確証は持てません」


「そうか……」


 式典って基本偉い人ほど前に並ぶから、子爵家だと真ん中より後ろになるよね。


 おまけに当時の俺は11歳で、今は16歳。


 小学校六年生と高校二年生だと思えば、ずいぶんと変わっているだろう。中に俺が入った事も考えると余計にだ。


 こうなったら、状況証拠を積み重ねていくしかないよね。長い話になりそうだ。


 そう覚悟を決め、こちらから話を振る。


「宮廷内の絵を描いて見せようか?

 もっとも、ほとんど後宮ハーレムに閉じ込められておったから、描ける場所は限られるがな」


「それも一つの手ではありますが、事前にシーラ殿から教わっていたら証明にはならないかと」


 なるほど……もし俺が偽皇帝だとしたら、それを仕組んだ黒幕は元伯爵家所縁ゆかりの人物であるシーラである可能性が高い。


 そして伯爵家の人間ならある程度宮廷内を知っていて、事前に教わって練習しておけば、偽皇帝でも宮廷内の絵が描ける訳だ。

 なるほど証拠にならないね。


 隊長の方からは『26世陛下は病没されたと聞いているのですが』と疑問が出され、『そう発表されたのか? 遊びに行った先の川で船から落ちて溺れたでは、体裁ていさいが悪かったかな』と答えると、隊長の表情が僅かに動いた。


 真相を知っているのか、あるいは死因はちゃんと溺死と発表されたのを承知で、カマをかけてきたのか。


 その辺は分からないけど、ちょっと信憑性が増したのかもしれない。



 それでも決定打にはならず、しばらくの間お互いを探るような質問の応酬を続けていると、不意に部屋の扉がノックされる。


 隊長が待ちかねていたような声で『入れ』と言うと、扉を開けて入ってきたのは、長い髪をポニーテールにまとめた女騎士だった。


 …………ん? どこかで見た事あるような?



 そんな疑問を向こうも感じたのか。俺と女騎士さんはしばらくの間、じっと互いを観察し続けるのだった……。




帝国暦168年 7月26日


現時点での帝国に対する影響度……1.1022%(±0)


資産

・2490万ダルナ

・エリスに預けた反乱軍運営資金 5640万ダルナ


・元宝石がいっぱい付いていた犬のぬいぐるみ(今はおでこに一つだけ)

・エルフの傷薬×1637


配下

シーラ(部下・解放軍精鋭部隊長・C級冒険者 月給50万)

メルツ(部下・解放軍総司令官・E級冒険者 月給35万・内15万を上級傷薬代として返済中)

メーア(部下・解放軍総司令官補佐・E級冒険者 月給35万・内15万を上級傷薬代として返済中)

エリス(協力者・解放軍後方参謀・将来の息子の嫁候補 月給10万と月30万を宿借り上げ代として支払い)

ティアナ(エリスの協力者 月給なし)

クレア(部下・解放軍支配地内政担当 月給29万 内24万は帝国暦169年5月分まで前借り中)

オークとゴブリンの巣穴から救出された女の人達24人(雇用中・北の拠点生産担当と中州の拠点運営担当 月給12万)

元孤児の兵士達103人(部下・解放軍部隊長 月給3万 兵士97人 北の拠点の船舶担当5人 医療班1人)

セファル(部下・アルパの街の物資管理担当・C級冒険者 月給30万)(弟も同職 月給10万)

ガラス職人(協力者 月給15万・衣食住保証)

船大工二人(協力者 月給15万・衣食住保証)

怪我を負った孤児の子達43人(北の拠点で雇用 月給7.2万)

キサ(部下・専属護衛・遊牧民 月給48万)

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