表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
187/264

187 王都の状況

 元裏稼業の人の手引きで無事王都への潜入を果たし。拠点も確保できたので、早速情報収集に取りかかる。


 いきなり帝国軍と交渉するのはいくらなんでも無謀の極みなので、まずは情報が必要なのだ。


 ――そんな訳で、手近な所から。目の前にいる裏稼業仲間らしい男の人五人に質問をぶつけてみる。


「王都の様子はどうですか?」


 俺の問いに男達は顔を見合わせたが、一人が言葉を選ぶようにして話してくれる。


「景気はよくねぇな……ですね。食料だけは蓄えが大量にあったので飢えない程度の量が配給されてますが、他は全部不足してやが……います」


「あの、気を使わずに話しやすいように話して頂いて構いませんよ。帝国軍に対する支持はどうですか?」


「そいつは助かりやす、なんせ育ちが悪いもんで……帝国の奴らはそりゃもう嫌われてやすが、食料を連中が握っていてその配給に頼らないと生きていけねぇし。かと言って教国の連中も嫌われてやすから、外と協力して反乱を起こす訳にもいかずに困ってやすね」


「なるほど、食料の配給はどんな感じでやってますか?」


「地区ごとに毎日決まった量が渡されて、それをみんなで分け合ってやす」


 なるほど……数日分をまとめてではなく、毎日その日の分を配給する事で帝国軍に対する依存性を高め、食料の備蓄もできなくして反乱を抑止しているのだろう。


 帝国軍の指揮官は優秀な気配がするね。


「帝国軍の様子とか分かりますか?」


「ほとんど街壁の上と城の中にいて、街中ではほとんど見かけやせんね。教国軍との戦いで損害も出ているようでやすが、俺達には詳しい状況は分かりやせん。

 死体も自分達で埋葬してるようでやす」


 なるほど、戦力の消耗を知られないためか……。


「街の治安とかはどうしてるんです?」


「――帝国の連中に取り入った犬どもがやってやすね」


 おっと、露骨に機嫌が悪くなった。占領軍の手先になった裏切り者とか、そりゃ嫌われるよね。


「なるほど……俺達が街を歩くとなにか不都合があったりしますかね?」


「夜の間は外出禁止でやすが、もう少し汚れた格好に変えれば昼間歩くのは平気でやんしょう。案内を付けやしょうか?」


「お願いできると助かります」


「では明日の朝に。……他になにかありやすか?」


「あとは自分の目で見てみたいと思います」


「分かりやした。おい、寝床を用意して差し上げろ!」


 男の人は五人の中では一番偉い人だったらしく、指示を出すと残りの四人が慌ただしく動き出す……。




 その晩は裏稼業のアジトらしい場所で一夜の宿を借り。翌朝貴重な配給食糧で作ってくれた朝食を頂いた。


 メニューは麦のおかゆに、ちょっとした青菜が浮いたもの。


 野菜は街壁の内側で生産される分しかないので、貴重品らしい。


 携帯食として持ってきた干し肉とチーズをおすそ分けしたら、とても喜んでくれた。


 お肉は物々交換でとても高く取引されているらしく、チーズに至っては包囲戦が始まってから見た事がないレベルだそうだ。


 ちなみにお金の価値は暴落しているので、ここでは使わない方がいいとの事。


 ……なんか一儲けできそうな予感がするね。


 早速メルツ宛に手紙を書き。案内人の人に届けてもらう。


 今夜メルツの元に着いて、すぐに食料を運び込めば明日の朝には商売ができるようになるだろう。


 元裏稼業の皆さんなら、帝国の手先の目をかいくぐって売りさばくのとか得意分野だと思う。売り上げは俺達と裏稼業の皆さんで山分けだ。


 儲かったお金は新生ジェルファ王国の復興や戦災で傷ついた人達の支援に当てれば、新生ジェルファ王国の評判も上がるし、お金持ちから貧しい人への再分配にもなるので一石二鳥だと思う。


 裏稼業の人達が更生して、まっとうな商売を始める元手になったりしたら、一石三鳥だね。


 そんな算段を整えていたら、昨日いた男の人の一人が『ミリザを連れてきました』と言ってやってくる。


 どうやら街の案内人らしい。男の人達の誰かがやってくれるのだと思っていたら、わざわざ別の人を手配してくれたようだ……。


 とりあえず立ち上がって挨拶と自己紹介をするが、ミリザさんは一見どこにでもいる街の女の人で。パン屋の店員でもやっていそうな、特にこれといった特徴のない人……なのだけど、なんだろう? 一瞬射るような。品定めをするような目で見られたような気がする。


 初対面なんだから相手を観察するのは当然と言えば当然だが、それが特別鋭かったような……気のせいだろうか? 後でシーラにも訊いてみよう。



 そんな訳でちょっと汚れた格好に着替え。ミリザさんに王都を案内してもらうが、なるほど王都の雰囲気は全体的に暗めである。


 半年以上包囲されているせいで食料以外の物資も不足していて、食料も麦以外の供給は乏しく。ちょっとした空き地はもちろん、道でさえ半分以上畑に転用されている。


 燃料用に家を壊したのだろう。所々に大きな空き地が広がっていて、畑やニワトリ小屋にされていた。


 そして、やはり帝国軍は最大限住民との接触を避けているようだ。


 賢い選択だと思う。接触したって軋轢あつれきしか生まないだろうからね。


 反乱さえ起こらなければそれでよくて、あとは教国軍との戦いに集中したいのだろう。


 街の人々は畑仕事やニワトリの世話以外に特にする事もなく、無聊ぶりょうかこっているようで。ここがスラム街というのもあるのだろうけど、昼間から賭け事をしている人なんかもいて、すさんだ空気が感じられる。


 見慣れない顔なのだろう俺達をじろじろ見る視線もなんだか不気味で、ちょっと怖い。



 ……スラム街を出て街の中心付近まで案内してもらったが、どこも大きな変化はなく、おおむね暗い。


 そんな訳で街の様子をざっと見た所で情報収集を一区切りにして、いよいよ本命である帝国軍との接触を試みる事にする。


 ――そしてこれに関して、一つ心当たりができた気がするんだよね。


 俺の感覚だけど、多分間違ってないと思う。


「ミリザさん、帝国軍に接触したいんですけど、誰か紹介してもらえませんか?」


 俺の言葉に。案内人のミリザさんは表情を変える事なく、『私は街を案内するようにと言われただけですので』と言葉を返してくる。


 だけど俺の感覚は確信に変わった訳で、案内を頼まれただけの普通の街娘がいきなりこんな事言われたら、普通はもっと戸惑ったり動揺したりするものなんだよね……。




帝国暦168年 7月25日


現時点での帝国に対する影響度……1.1022%(±0)


資産

・2490万ダルナ

・エリスに預けた反乱軍運営資金 5640万ダルナ


・元宝石がいっぱい付いていた犬のぬいぐるみ(今はおでこに一つだけ)

・エルフの傷薬×1637


配下

シーラ(部下・解放軍精鋭部隊長・C級冒険者 月給50万)

メルツ(部下・解放軍総司令官・E級冒険者 月給35万・内15万を上級傷薬代として返済中)

メーア(部下・解放軍総司令官補佐・E級冒険者 月給35万・内15万を上級傷薬代として返済中)

エリス(協力者・解放軍後方参謀・将来の息子の嫁候補 月給10万と月30万を宿借り上げ代として支払い)

ティアナ(エリスの協力者 月給なし)

クレア(部下・解放軍支配地内政担当 月給29万 内24万は帝国暦169年5月分まで前借り中)

オークとゴブリンの巣穴から救出された女の人達24人(雇用中・北の拠点生産担当と中州の拠点運営担当 月給12万)

元孤児の兵士達103人(部下・解放軍部隊長 月給3万 兵士97人 北の拠点の船舶担当5人 医療班1人)

セファル(部下・アルパの街の物資管理担当・C級冒険者 月給30万)(弟も同職 月給10万)

ガラス職人(協力者 月給15万・衣食住保証)

船大工二人(協力者 月給15万・衣食住保証)

怪我を負った孤児の子達43人(北の拠点で雇用 月給7.2万)

キサ(部下・専属護衛・遊牧民 月給48万)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ