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186 王都への潜入

 王都の街壁を視界に捕えて二日。


 俺達解放軍は順調に展開を終わり、王都を取り囲む教国軍を取り囲む逆包囲網を完成させた。


 教国軍は最初動揺した様子を見せ。逃げ出すかと思ったのだが、結局そのままの場所に留まり続け、包囲されてしまった。


 やっぱりあまりいい指揮とは言えないね……少なくとも、プロの軍人が自由に指揮を執っている感じではない。


 教国軍は前方の王都に加え、後方の俺達にも注意を向けなくてはいけなくなったので、一旦王都への攻撃を中断したようだ。


 まんべんなくの包囲陣から、いくつかの集団になって守りを固めている。


 帝国軍は以前精鋭騎兵隊で包囲を突破して上級指揮官達を救出したけど。教国軍はその時の反省からか、街壁の門の部分を重点的に固めているようだ。


 俺としては間を通り抜けて王都の街壁に取り付きやすくなるので助かるけど……これもし俺達が帝国軍の援軍だったら、教国軍壊滅案件なんじゃないだろうか?


 王都の中からも打って出てきたら、完全に挟み撃ちにされちゃうぞ。


 俺達の旗を見て帝国軍ではないと判断したのかもしれないけど、それなら突入を警戒して門を固める必要もない訳で、やっぱり場当たり的な対応に見える。


 そもそも本当なら、包囲されかけていた時点で逃げ出すべきだったと思う。


 逃げると言っても、別に潰走かいそうして教国に逃げ戻る必要はなく。少し距離を取って様子を見守ればよかったのだ。


 俺達が帝国軍の敵対者なら、敵と敵が戦うのを高見の見物でよかったし、協力者なら挟み撃ちにされるのを避けるために、場所を移動する。


 どちらにしても一旦引くのが上策だったはずなのだ。


 教国軍は軍人ではなく、聖職者が指揮を執っているという話が現実味を帯びてくるね……。



 とりあえず、指示があるまでこちらからは手を出さないように厳しく命令を徹底し、防御に徹して夜を待つ。


 ――陽が落ちて辺りが薄暗くなる頃。俺とシーラとキサ、そして案内人の元裏稼業の人が、王都の北側に集結した。


 装備はシーラが愛用のやり。キサが弓と、背中に大きな荷物を背負っている。


 荷物はそこそこ重さもあって、『俺が持つよ』と言ったのだが、キサに『シーラさんにはいざという場合の戦闘に専念してもらうとして、残りの人員なら私が持つのが一番全体の移動速度が速くなりますから』と、遠回しに『おまえは力ないんだから引っ込んでろ』と言われてしまった。


 もうちょっと体力をつけるべきか。それとも割り切ってもっと知識を付ける方向に専念するべきか、悩ましい所だ。


 そんな事を考えながら、教国軍の隙間を通って街壁に近付いていく。


 壁の上の帝国軍からの攻撃も警戒するが、暗闇に少人数なので気付かれていないらしく、なにも動きはない。


 壁が間近に見える頃になるとさすがに緊張感が増してきて、考え事をやめて俺も周囲の気配に集中する。


 シーラやキサには全然敵わないだろうけど、せめて転んだりしないようにしないとね……。



(――こっちです)


 小声で話す案内人に付いて街壁沿いを進むと、辿り着いたのは大小の石が規則正しく並んだ場所……墓地だこれ。


 夜中にお墓とか正直怖いけど、シーラやキサの手前情けない所を見せる訳にもいかず、全力で平静を装う。顔色とか見えていないのが救いだ。


 ここは王都街壁の外側に作られた一般市民用の墓地らしく、壁を挟んだ向こう側は王都でも一番貧しい地区。スラム街が広がっているらしい。


 街壁のこの辺りに門はないのだが、墓地の外れにひつぎ置き場になっている小屋があって、その一角から地下に下りる階段があり。地下通路で街壁の下をくぐって、王都内に侵入できるらしい。


 元々密輸に使われていたルートだそうだけど、棺に荷物を隠してここへ運び込み。荷物だけを王都内に運び込んで、棺は本来の用途に使ってしまえば、なにも怪しまれないという訳だ。


 上手い事考えたね。


 密輸品は王都内に運んで売りさばき、王都から持ち出すものはあまりないので、怪しまれる事なく何十年も使われていたらしい。


 教国軍に包囲されてからは使われていないだろうけど、奥にある隠し階段から中を覗いてみると、崩れたりしている様子もなく、普通に通れそうだ。


「俺が先頭を行きますから、付いて来てください」


 そう言われて、案内の人・シーラ・俺・キサの順に階段を降りていく。


 ――地下通路は人一人がやっと通れる大きさで、天井も低く、ジメジメしていて重苦しい感じだ。


 すぐ隣が墓地だと思うと、なんだか壁の土に触れる事すら恐ろしく感じるけど、墓地だからこそ土を掘る道具を沢山持ち込んでも怪しまれなかったのだろうし、掘り出した土を処分するのも簡単だったのだろう。


 隠し通路を作る場所として本当によく考えられているね……不気味だけど。



 密輸のための地下通路をこの場所に作ろうと決めた人に感心しながら、一列になって地下通路を進んでいく。


 灯りは先頭の案内人と、最後尾のキサが持っているロウソクだけで、薄暗いを通り越して、ぼんやりと周りが見えるだけである。


 ずっと暗い場所を移動してきて目が慣れているとはいえ、足元もよく見えないので危なっかしいし、お化け屋敷みたいで薄気味悪い。


 ここで怖がるシーラの手を握ってあげられたりしたら、デートみたいでいい感じなんだろうけど。残念ながらシーラにおびえた様子は全くないし、なんなら俺の方が脅えている。シーラに手を握って欲しいくらいだ。


 さすがにそんな事お願いできないけどさ……。


 ――とにかく前を行くシーラの背中を必死に追いかけ、かなり長い地下通路を進んでいく事しばらく。前方から『着きました』と押し殺した声が聞こえてくる。


 足元は上り階段になり、ふたのようなものが持ち上げられるが、光が射し込んでくるような事はない。


 どうやらゴールも地下室なようで、シーラに『安全を確認をしてきますのでしばらくお待ちください』と言われてしばらく待っていると、『大丈夫です』と声が聞こえてきて、俺とキサも地下室へ上がっていく。


 そこは倉庫も兼ねていたのだろう。今は空っぽだけどわりと大きな部屋で、さらに階段を上っていくと扉があった。


「――鍵がかかってやがるな。おい、誰かいないか!」


 案内の人が押し殺した声で呼ぶと、扉の向こうから人が動く気配がする。


 シーラが警戒の態勢を取るが、向こうも警戒しているようで、扉を開ける前に『誰だ!』と訊いてくる。


 案内の人が名を名乗り。数度のやり取りの後どうやら信用されたらしく、ゆっくりと扉が開かれた……。


 扉の向こうには、いかにもという感じのガラの悪そうな男が五人。


 だけど待ち伏せという訳ではなく、案内の男の人と『久しぶりだな!』『無事だったか』と親しげに言葉を交わし、俺達の事も紹介される。


 解放軍の参謀と、その護衛という説明だ。


 俺の方も名前を名乗り。ここに来た目的を、『帝国軍と教国軍を追い出し、新しいジェルファ王国を復活させるために、帝国軍と話をしに来た』と説明する。


 半年以上も包囲されていた王都では、反乱軍の情報は鎮圧されたという所までしか入っていなかったらしく、再活動していた事に驚いた様子だったが、帝国や教国に強い反感を持っているのはジェルファ王国民なら誰でも同じようで、こちらの話を信用してくれた後は、全面的な協力を約束してくれた。



 この場所を当面の拠点として使う事も許してくれ。王都への潜入に成功した俺達は、いよいよ帝国軍の寝返り工作に向けて動き出すのだった……。




帝国暦168年 7月24日


現時点での帝国に対する影響度……1.1022%(±0)


資産

・2490万ダルナ

・エリスに預けた反乱軍運営資金 5640万ダルナ


・元宝石がいっぱい付いていた犬のぬいぐるみ(今はおでこに一つだけ)

・エルフの傷薬×1637


配下

シーラ(部下・解放軍精鋭部隊長・C級冒険者 月給50万)

メルツ(部下・解放軍総司令官・E級冒険者 月給35万・内15万を上級傷薬代として返済中)

メーア(部下・解放軍総司令官補佐・E級冒険者 月給35万・内15万を上級傷薬代として返済中)

エリス(協力者・解放軍後方参謀・将来の息子の嫁候補 月給10万と月30万を宿借り上げ代として支払い)

ティアナ(エリスの協力者 月給なし)

クレア(部下・解放軍支配地内政担当 月給29万 内24万は帝国暦169年5月分まで前借り中)

オークとゴブリンの巣穴から救出された女の人達24人(雇用中・北の拠点生産担当と中州の拠点運営担当 月給12万)

元孤児の兵士達103人(部下・解放軍部隊長 月給3万 兵士97人 北の拠点の船舶担当5人 医療班1人)

セファル(部下・アルパの街の物資管理担当・C級冒険者 月給30万)(弟も同職 月給10万)

ガラス職人(協力者 月給15万・衣食住保証)

船大工二人(協力者 月給15万・衣食住保証)

怪我を負った孤児の子達43人(北の拠点で雇用 月給7.2万)

キサ(部下・専属護衛・遊牧民 月給48万)


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