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176 偽の勅令状

 偽の勅令状ちょくれいじょう作りは順調に進み、試作品が五通完成した。


 ……材質の正確な仕様とかは分からないので、パッと見の印象で一番本物に近い物を選ぶ。この場合重要なのは、同じ材料を使っているかよりも見た目が似ているかだからね。


 そして勅令状を入れる箱も、皇帝の記憶にあった黒塗りの物を用意した。


 手に入る範囲で最高級の材料を使ってもらったので、わりといい出来だと思う。


 手紙と箱を用意するだけで経費が231万ダルナもかかってちょっと気が遠くなったけど、必要経費だと思って我慢しよう。



 ――そうして偽の勅令状が完成した訳だけど、問題はこれを持っていく人の人選だ。


 物が皇帝の勅令状だけに、多分公爵本人に直接渡す事になるだろう。


 そして公爵は多分、二代前の皇帝の顔を。つまり俺の顔を知っている。


 基本後宮ハーレムに閉じ込められていたとはいえ、公式行事には飾られていたからね。公爵なら見た事があるだろう。


 そして武門の家系という事は、同じく部門の家の出身であるシーラを知っている可能性もある。


 シーラに訊いたら『記憶の範囲で会った事はありません』と言っていたけど、シーラの記憶にないだけで、向こうがシーラの家を訪ねてきたりして、幼少期のシーラを見ていた可能性は大いにある。


 そうなるとどっちも身バレの可能性があってよろしくないので、ここは誰かに頼むしかない。


 シーラに訊いてみると、皇帝の勅令状を持ってくるのは勅使ちょくしという人だそうで、ある程度身分が高くて顔がいい人が選ばれるそうだ。


 ……儀式的な要素が強いから、見た目も大事なのだろうか?


 シーラとかまさに身分が高くて顔がいいけど、身バレのリスクがあるから今回は留守番だ。


 そうなると、身分が高くて顔がいい人……。


 知り合いの顔を順番に思い出してみたけど、シーラ以外で身分が高い人。貴族の生まれなのは一人しか思い当たらない。


 そして顔も、問題なくいいと思う。



 ――そんな訳で志願兵訓練所に出向き、そこの隊長に話を持っていく。


「メルツ、相談があるんだけど。偽の帝国皇帝からの勅令状を作ったから、ロムス教国討伐軍総司令官のケルマン公爵に届けてくれない? ……って言ったらやってくれる?」


 そう話を切り出すと、目を点にして固まってしまったけど。順に話をしたらみるみる真剣な顔になって、『分かりました、やります』と張り詰めた声で返事をしてくれた。


「……俺から頼んでおいてなんだけど、本当に大丈夫? 無理だと思ったら断ってくれてもいいんだよ」


「大丈夫です。私しか適任がいないと任された任務であってみれば、一身をしてやり遂げてごらんに入れます」


 ――おおう、相変わらず超が付くほど真面目だね……でも今回は、その誠実さに頼らせてもらおう。


「わかった、じゃあお願いするね。メーアはどうする?」


「一緒に行きます!」


 メルツがなにか言いかけた気がしたが、それより先にメーアの強い言葉が発せられ。それがそのまま場の結論になった。メーアも相変わらずだね……。



 そんな訳で、メルツとメーアを中心に護衛10人を選んで、偽の勅令状を届けてもらう。


 人選はメルツに任せたけど、前回の食糧不足偽情報拡散の時にも活躍してくれた、元劇団員の人達を中心に選ぶらしい。


 演技のプロだし、顔もいいからね。メーアも美人なので、衣装も調えていけば相当見栄えすると思う。



 ――という事で勅令状を届ける役はメルツに任せ、俺も近くまで同行する。


 旧ジェルファ王国西部の状況を見ておきたいのと、道中シーラが帝国貴族の作法を教えるためだ。


 メルツも男爵家の生まれだけど、帝国の貴族とジェルファ王国の貴族では微妙に作法とかが違うみたいなのだ。


 ちなみに俺は作法とかよく知らないし、教えられた記憶もない。


 皇帝という形式上一番偉いポジションだったのと、お飾りにそんな物は必要ないという宰相の考えからだろう。


 なのでこの機会に、俺も基本的な作法を勉強しておく。この先役に立つ事があるかも知れないからね。


 シーラは『私も礼儀作法などはあまり得意ではないのですが……』と言いながらも、一通りの事を教えてくれた。


 多分戦いとかの方が得意なのだろうけど、一応伯爵家のご令嬢で、後宮ハーレムにいた事もあるので、なかなかハイレベルな講義だった。


 と言うか、姿勢をピシッと正して礼儀正しく上品な振る舞いをするシーラはとても美しく、思わず見惚みとれてまたれ直してしまった。


 姿勢はいつもピシッとしてるし、馬に乗って槍を振るう姿もかっこいいけど、令嬢シーラも大変良いものだったよね……。



 ……シーラ先生のマナー講座を受けながら西への道を急ぎ。やっと帝国軍に追いついたのは、境界から馬を走らせて三日くらいの場所だった。


 歩兵主体の大軍。しかも食料を現地調達しながらにしては結構な進軍速度だと思う。やはり指揮官が優秀で、兵の質も高いのだろう。


 そんな分析をしながら、俺とシーラはこれ以上近寄れないので、後の事をメルツに託して送り出す。


 豪華に着飾ったメルツ達は劇の登場人物みたいで、皇帝の使者として中々サマになっている。


 同行の劇団員の人達もさすが本職だけあって、シーラのマナー講座を演技指導のごとく吸収し、立派な貴族然とした立ち居振る舞いになったと思う。


 最後にシーラから『皇帝の勅令状を持った勅使は皇帝の代理人であり、職務の範囲内においては公爵よりも偉いので、なにかあったら公爵を怒鳴りつけてやるとよいでしょう』と危険なアドバイスをされて出発していった。



 俺としては後は朗報を待つ事しかできないので、みんなが無事に帰ってこられるようにと祈りながら。落ち着かない時間を過ごすのだった……。




帝国暦168年6月12日


現時点での帝国に対する影響度……0.5822%(±0)


資産

・7648万ダルナ(-277万)

・エリスに預けた反乱軍運営資金 2729万ダルナ


・元宝石がいっぱい付いていた犬のぬいぐるみ(今はおでこに一つだけ)

・エルフの傷薬×1637


配下

シーラ(部下・反乱軍影の部隊長・C級冒険者 月給50万)

メルツ(部下・反乱軍名目上部隊長・E級冒険者 月給35万・内15万を上級傷薬代として返済中)

メーア(部下・反乱軍副部隊長・E級冒険者 月給35万・内15万を上級傷薬代として返済中)

エリス(協力者・反乱軍後方参謀 月給10万と月30万を宿借り上げ代として支払い)

ティアナ(エリスの協力者 月給なし)

クレア(部下・反乱軍支配地内政担当 月給29万 内24万は帝国暦169年5月分まで前借り中)

オークとゴブリンの巣穴から救出された女の人達24人(雇用中・北の拠点生産担当と中州の拠点運営担当 月給12万)

元孤児の兵士達103人(部下・月給3万 兵士97人 北の拠点の船舶担当5人 医療班1人)

セファル(部下・拠点間輸送担当・C級冒険者 月給30万)(弟も冒険者養成所会計補佐として雇用 月給10万)

ガラス職人(協力者 月給15万・衣食住保証)

船大工二人(協力者 月給15万・衣食住保証)

怪我を負った孤児の子達43人(北の拠点で雇用 月給7.2万)

キサ(部下・専属護衛・遊牧民 月給48万)

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