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172 資金補充とキサの里帰り

 帝国軍が教国軍に攻めかかったという情報に安堵あんどしてアルパの街に戻り。報告書に目を通すなどの事務作業していると、まずい事に気がついた。北部解放区の運営費用が枯渇寸前なのである。


 当初計画ではもう少し余裕があるはずだったのだが、農業関係予算。特に用水路の建設に想定外の費用がかかったせいらしい。


 破産して『解放軍解散です』とかなったら目も当てられないので、早急に資金を調達する必要がある。


 ティアナさんによる北の拠点からの塩輸送は再開されているけど、今の状況で塩を帝国軍に売るのは、敵を利する行為になりそうで嫌だよね。


 ……となると、差し当たりまとまった収入の当ては一つしかない。帝国本土にある、支店長さんが運営する別商会のお店である。


 あそこには北の拠点から船で東の拠点へ。そこからキサのお兄さん達の手で村の倉庫へと塩が継続的に運ばれていて、その売り上げがプールされているはずだ。


 それを回収に向かう事にして。とりあえず今の手持ちの大半、5000万ダルナを運営費としてエリスに渡し、俺とシーラ。そして久々の里帰りになるキサも連れて東へ向かう。




 ――帝国領への潜入に当たっては、支店長さんから貰った通行証が役に立った。


 今まで通り北に迂回して、草原を通って侵入してもいいんだけど、道を通れる方が速いからね。


 ただ、これがあっても物資を北部解放区に運ぶのは見咎みとがめられそうなので、物を運ぶ時は以前みたいに北の草原を。無人地帯を迂回うかいする事になると思う。



 そんな訳で久しぶりに帝国本土へ潜入して、お店があるファラの街に入る。


 街の様子はざっと見た感じ、以前と大きな違いはなさそうだ。


 あえて言うなら、兵隊に取られたせいか若い男の人がちょっと少ないかなと思う程度である。


 ちょっと少ないだけでまだ大勢いるので、まだまだ余力はありそうだ。帝国の底力が垣間かいま見えるね……。


 改めて帝国の国力を実感しつつ、お店へ行ってみると、なんだか以前より一回り大きくなっている気がした。


 隣の土地を買収して、店舗を拡張したのだろう。儲かっているようでなによりである。


 ここの店長である支店長さんの右腕さんに面会を申し込むと、すぐに姿を見せて、満面の笑みを浮かべて言葉をかけてくる。


「お久しぶりです。お変わりありませんか?」


「はい、おかげさまで元気にしています。……支店長さんとは連絡取れていますか?」


「戦争が激しくなってからは頻度が減っていますが、それなりには。西方新領は大変みたいですね」


「人口がごっそり減った上に移動も難しくなって、商売あがったりですよ」


「そのようですね。幸いこちらは好調ですから、損失を補えると思いますよ」


 そう言って助手みたいな人に命じて、革袋を持って来させる。


「現在までの売り上げの内、アルサル様の取り分です」


 そう言って渡されたのは、金貨77枚に銀貨60枚。7760万ダルナだ。助かる。


 お金を受け取ったついでに雑談がてら、街の様子を訊いてみる。


 それによると、


・帝国の一般市民はまだ平和なもので、危機感はない


・去年の西方遠征軍が負けたのは運が悪かったから。今度は勝つし、兵士達も無事に戻ってくると楽観的に考えている


・今年の遠征隊が食料と馬車を多く持って行ったので、輸送力の低下で物資が値上がり気味なのが若干の不満点。だけど今の所、物資不足と言うほどではない。


 という感じであるようだ。


 帝国でもかなり西寄りなこの街でさえ、戦争はまだ対岸の火事と言った様子である


 ちなみに去年の指揮官達が更迭こうてつされたという情報は伝わっていなかったので、処分は内々に行われたらしい。


 宰相お気に入りの人達だろうから、交代だけでおとがめなしとかだった可能性もあるよね。


 軍内で不満が高まりそうだけど、それはそれで俺の利益になるから善しとしておこう。


 そんな事を考えながら右腕さんとの雑談を終え、次はキサの故郷を目指す。



 遊牧民の集落兼馬繁殖所は相変わらず賑わっていて、馬の数は順調に増えているようだ。


 今は懐事情が心許こころもとないので新規購入はできないけど、キサ兄と会って運営状況や、東の拠点からの輸送状況などについての話を聞き、特に問題ない事に安心してその晩は集落に泊めてもらった。





 キサにとっては久しぶりの故郷なので『お兄さんと一緒に寝てきたら』と言ったら、『わたしそんな子供に見えますか?』と、ちょっと不満そうに言われてしまった。


 ……なるほど、キサももう14歳。この世界での成人は15歳みたいだけど、お兄ちゃんと一緒に寝る歳ではないかもしれないね。


 ちょっと申し訳なかったなと思いながら、キサには道中と同じく俺達と一緒に寝てもらう事にしたが。俺とシーラに挟まれて、なぜかやけに嬉しそうに見えたのは気のせいだろうか?


 キサとは傭兵契約をしてもう一年になり。前払いで一年分キサの親宛に払った給料も、今月分からはキサ本人に渡す事になっている。


 一応確認してみたけど、キサは自分の意思でその大半を親元へ送るつもりのようで。『このお金で弟や妹達がお腹を空かせずに済みます。ありがとうございます』と、実に健気けなげな事を言っていた。


 思わず感動して給料を上げそうになったけど。俺との馬育成計画でかなり生活が安定したとはいえ、遊牧民の暮らしはやはり厳しいのだろう。天候が悪かった年なんかは、口減らしも普通にあるって言ってたからね……。


 遊牧民なのに乗馬が苦手だったキサは、口減らしがあるなら自分が候補だと思っていたのだろう。


 そして自分が候補から外れた今、次の候補になるのは弟か妹の誰かになる。


 だからそんな事にならないよう、給料の大半を親元に送るつもりなのだ。


 まだ幼いのに、しっかりした実にいい子だね。



 年相応のあどけない寝顔で寝息を立てるキサを見ながら、この子が立派な遊牧民に育ってくれればいいなと。俺はちょっとだけ我が子を見守るような気持ちになるのだった……。




帝国暦168年5月25日


現時点での帝国に対する影響度……0.5822%(+0.0001)帝国本土北西部で塩の販売拡大


資産

・7957万ダルナ(+2743万)

・エリスに預けた反乱軍運営資金 5849万ダルナ(+5000万)


・元宝石がいっぱい付いていた犬のぬいぐるみ(今はおでこに一つだけ)

・エルフの傷薬×1637


配下

シーラ(部下・反乱軍影の部隊長・C級冒険者 月給50万)

メルツ(部下・反乱軍名目上部隊長・E級冒険者 月給35万・内15万を上級傷薬代として返済中)

メーア(部下・反乱軍副部隊長・E級冒険者 月給35万・内15万を上級傷薬代として返済中)

エリス(協力者・反乱軍後方参謀 月給10万と月30万を宿借り上げ代として支払い)

ティアナ(エリスの協力者 月給なし)

クレア(部下・反乱軍支配地内政担当 月給29万 内24万は帝国暦169年5月分まで前借り中)

オークとゴブリンの巣穴から救出された女の人達24人(雇用中・北の拠点生産担当と中州の拠点運営担当 月給12万)

元孤児の兵士達103人(部下・月給3万 兵士97人 北の拠点の船舶担当5人 医療班1人)

セファル(部下・拠点間輸送担当・C級冒険者 月給30万)(弟も冒険者養成所会計補佐として雇用 月給10万)

ガラス職人(協力者 月給15万・衣食住保証)

船大工二人(協力者 月給15万・衣食住保証)

怪我を負った孤児の子達43人(北の拠点で雇用 月給7.2万)

キサ(協力者・遊牧民傭兵 月給48万)

※163話と164話に誤字報告をくださった方ありがとうございます。こっそり修正しておきました。

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