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171 動き出す帝国軍

 帝国兵の捕虜を逃がした後、俺達は青い麦の収穫を続け、翌日の昼には作業を切り上げて北に戻る。


 道中で分離した隊を回収するのだが、収穫した小麦がパンパンに詰まった袋を担いでいるのでどうしても動きが鈍くなり、行きの倍の時間をかけて全部隊と合流した後、進路を西に取る。


 西から来た教国兵だと偽装するためで、教国兵と出くわしてしまうリスクはあるけど、その時は……食料を差し出せば見逃してくれたりしないだろうか?


 と言うか、重い麦袋を捨てて逃げる事になるだろうから、その袋にむらがってくれれば俺達は無事に逃げられる気がする。相手はお腹を空かせているはずだからね。



 そんな計画を立てて全隊長にも伝えてあったが、幸い敵と出くわす事はなく。教国の勢力圏内から再び針路を北にとって、無事解放区に戻ってくる事ができた。


 どうやら教国軍はかなりの密度で南部に。旧王都攻撃に集中しているみたいである。


 それでも旧王都が陥落したという話はまだ聞かないので、よほど粘り強く抵抗しているのだろう。


 上級指揮官には見捨てられたけど、現場の下級指揮官に相当優秀な人材がいるのだろうか?


 もしそうなら、将来的に味方に取り込めると嬉しいね。


 一度見捨てられているだけに、帝国に対する忠誠心はかなり下がっているだろうし、ワンチャンあると思う。



 そんな事を考えながら北部解放区に戻り、持ち帰ったまだ青い小麦を付近の街で配る。


 未熟であまり実が入っていないとはいえ、多少は食べる所があるだろうから、食料の足しにして欲しい。


 今の所北部解放区で食糧は不足していないけど、あって困るものではないからね。


 そんなこんなで一人の負傷者も出す事なく無事訓練所に帰還すると、なぜか大勢集まって、大歓声で迎えられた。


 まるで勝利の凱旋がいせんみたいで、こっそり侵入して青田刈りをしてきただけの身としては気まずい感じがするけど、参加した志願兵達は得意満面とくいまんめんといった感じで、元気よく手を振って歓声に応えている。


 ……一応帝国軍に打撃を与えた事には違いないから、これでいいのだろうか?


 戦闘では四人倒しただけだけど、志願兵の中にはちゃっかり倒した兵士の武器や装備を持って帰ってきている人がいて、それを見せびらかしては、やんやの大喝采だいかっさいである。


 ……ちょっと浮かれ過ぎな気もしたけど、シーラもメルツも『いい刺激になり、士気も上がって結構な事だと思います』という意見だったので、口を挟まない事にした。


 兵士達の心を掴むには本で勉強した事だけじゃダメだし、時には羽目を外す事も必要なんだろうね。勉強になる。


 参謀としてまた一回り成長した気がしつつ、タイミング的にはすでに帝国軍が動き出している時期なので、急いで情報を取りに向かう。


 小出しにしているメープルシロップ20本を持ち、目指すは支店長さんの所だ。



 念の為周囲に気を付けながら南に向かうが、この辺りにもごく少数の偵察隊がいるだけのようで、難なくかわして支店長さんの店がある街に到着した……と思ったら、街の入り口にはがっつり帝国兵がいた。


 後方拠点になっているんだからそりゃそうだよね案件だけど、どうしよう? いきなり捕まって牢屋行きなんて事はないと思うけど……。


 不安に思いながら遠目に観察していると、警備兵達に混じって見知った顔があるのに気付く。たしか、支店長さんの所の店員さんだ。


 なんとなく大丈夫そうな気がしたので姿を見せると、向こうもこちらに気付いて兵士達に話をしてくれ、問題なく通る事ができた。


 ――お店に着いてから支店長さんに聞いた話では、『ここから西に行った村跡に教国の部隊が侵入していたらしく、警備が厳重になりまして』との事だった。……なんか心当たりがある話だね。


 完全に俺のせいな気がするので文句を言う訳にもいかず。『怖いですね』と適当な返事をしたら、『これをお持ちください』と、小さな金属板を渡された。


 ……どうやら、帝国支配地域内での通行証らしい。敵対勢力の親玉にこんな物渡していいのだろうか? 力いっぱい悪用しちゃうぞ。……知らないというのは怖い事だね。


 やはり敵の関係者と繋がっておくのは利益が大きい事を再認識しつつ、さらに情報まで取りにかかる。


 情勢についての話を振ってみると、『近いうちに西で大きな戦いがあるようですから、近寄らない事をお勧めします』という事だった。


 ――どうやら、帝国軍は当面の目標を教国軍に定めてくれたらしい。潜入工作をした甲斐があったというものだ。


 旧王都の救援を目指すのか、別の方向から攻撃をかけるのかは分からないけど、共倒れを目指して頑張って欲しい。


 すでに主力はこの街を出発したそうで、残っているのは後方作業担当の人達だけらしいけど、支店長さんに関係を築いてもらうのはその人達でも問題ない。


 情報は順次帝都に送られるはずで、途中で後方参謀を経由するだろうからね。



 この先の情報にも期待しつつメープルシロップを取引し。事態が思い描いていた方向に進行している事に安堵あんどして、俺は一旦アルパの街へと戻るのだった……。




帝国暦168年5月14日


現時点での帝国に対する影響度……0.5821%(±0)


資産

・5214万ダルナ(-286万)

・エリスに預けた反乱軍運営資金 849万ダルナ


・元宝石がいっぱい付いていた犬のぬいぐるみ(今はおでこに一つだけ)

・エルフの傷薬×1637


配下

シーラ(部下・反乱軍影の部隊長・C級冒険者 月給50万)

メルツ(部下・反乱軍名目上部隊長・E級冒険者 月給35万・内15万を上級傷薬代として返済中)

メーア(部下・反乱軍副部隊長・E級冒険者 月給35万・内15万を上級傷薬代として返済中)

エリス(協力者・反乱軍後方参謀 月給10万と月30万を宿借り上げ代として支払い)

ティアナ(エリスの協力者 月給なし)

クレア(部下・反乱軍支配地内政担当 月給29万 内24万は帝国暦169年5月分まで前借り中)

オークとゴブリンの巣穴から救出された女の人達24人(雇用中・北の拠点生産担当と中州の拠点運営担当 月給12万)

元孤児の兵士達103人(部下・月給3万 兵士97人 北の拠点の船舶担当5人 医療班1人)

セファル(部下・拠点間輸送担当・C級冒険者 月給30万)(弟も冒険者養成所会計補佐として雇用 月給10万)

ガラス職人(協力者 月給15万・衣食住保証)

船大工二人(協力者 月給15万・衣食住保証)

怪我を負った孤児の子達43人(北の拠点で雇用 月給7.2万)

キサ(協力者・遊牧民傭兵 月給48万)

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