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159 初期拡大期

 反乱軍の立ち上がりはとても順調に進み、アルパの街は抵抗を受ける事なく解放された。


 これからやろうとしている事の大きさを考えると、ここでつまずいているようでは困る訳だけど、それでも嬉しいよね。


 旧領主館を制圧した所で、続々と集まってくる住民達に、メルツが反乱軍隊長として短い演説をする。


『――我々反乱軍は今日この時、アルパの街が帝国の圧政から解放された事を宣言する! 我々は帝国の支配と教国の侵略と戦い、ジェルファ王国の解放を目指すつもりである! こころざしある者は我々の仲間に加わって街を守り、我が軍を支えるための生産活動に協力してもらいたい!


 今からこの街の治安と防衛は我々が責任を持つが、帝国兵やその協力者はこちらで拘束するので、捕えた場合は身柄を引き渡して欲しい!


 我々はならず者の集団ではなく、理性を持った人間の集団でありたい! 犯罪行使を行った者については個別に裁きを加えるので、後日訴え出て欲しい。


 話は以上だ、諸君の協力と思慮しりょ深い行動に期待する』


 ……演説の内容は事前に話し合って決めたもので、最初は強く。後半は訴えかけるように穏やかに話す事で、賛同を得るのと同時に住民の心を落ち着かせる効果も狙っている。


 人手が少ない俺達にとって、街が混乱状態になるのが一番困るからね。


 反乱軍への志願や協力といった熱情のはけ口を用意した上で、帝国兵やその協力者への感情はなるべく抑えてもらう。


 住民の感情としては今まで横暴を働いていた帝国兵に復讐したいだろうけど、帝国兵を惨殺しているなんて噂が広まったらこの先俺達に降伏する帝国兵はいなくなるだろう。それは戦いを難しくしてしまう。


 さらに将来的に、三勢力並立になった時に帝国の敵意をなるべく教国に向けたいという思惑もあるので。そのためにもここでの帝国に対する対応は穏便にするべきだし、この街にも俺が塩を卸していた商会の店がある。


 帝国の協力者だと思われているだろうし実際そうなんだけど、俺の協力者でもあるので、なるべく保護したいのだ。


 なので基本、帝国兵とその関係者には穏当な対応を目指す。


 帝国兵に強い恨みを持つ元孤児の子達にもその点はよく言い聞かせてあるし、ちゃんと調べて殺人とかやった兵士がいるなら、それはジェルファ王国の法に照らしても死刑案件なので、法にのっとって対応する。


 大切な人を殺された人にはかたきを討つルートも用意している事になるので、兵士の子達も納得してくれたし、住民の理解も得やすいと思う。


 ただ、この街に関してはエリスの地元である事、配置できる人員が多い事もあってなんとかなると思うけど、他の街でどうなるかは分からない。


 ……まぁこの手の事で完璧なんて期待できるはずもないので、できるだけの努力をするだけだ。



 そんな訳で後の事をエリスに任せ。俺達は次の街に向かう。


 次の街も同じく、入り口から帝国兵の駐屯地まで抵抗らしい抵抗は受けず、あっさり解放に成功した。


 この街にはエリスみたいに管理者をやってくれる知り合いがいないので、メルツの演説の後、警備隊にいた元王国軍の人から二人を選んで、暫定的に街の管理を任せる。


 二人にしたのは、一つは変な人を選んでしまった場合の保険。


 周囲の評判を聞くし見定める努力はするけど、さすがに一瞬で適格者を選ぶのは難易度高いからね。


 そしてもう一つの理由は、読んだ兵法書に『同格の指揮官を二人並べて置くのは愚策。愚将一人が率いる軍は、名将二人が率いる軍に勝る』と書いてあったからだ。


『指揮権が統一されていないと意見の違いから部隊内で対立が起こり、意思決定や大きな決断ができないから』と解説されていたが、今は勢いに乗って下手な決断をされては困るので、あえて二人並立体制にしたのだ。


 いずれ改める予定だけど、しばらくの間は安全装置として働いてくれる事を期待したい。



 そんな感じで次々に街を解放していくが、どこの街も駐留している帝国兵の数は10人だった。


 捕えた帝国兵に訊いてみると、どうやら『各街10人の警備隊を残して、残り全員旧王都に送れ』という命令が出ていたらしい。


 俺達にとっては助かる話だけど、これだけ必死に兵士を集めても旧王都の帝国軍は劣勢で完全包囲下とか、大変だね……。



 そんな事を考えながら東へ西へと動き、蜂起から13日後の12月21日には、反乱軍の支配地域として想定している北部地域の解放を終える事ができた。


 旧王国を東西に走る三本の主要街道の内、北路周辺を中心に街を八個と、それに付属する村々である。


 この世界の基本的な構成として、街道を進む荷馬車の移動時間半日から二日の距離ごとに街があり、街の周囲には農業を生業なりわいとする村がある。


 移動距離一日分ごとの等間隔に街を配置すれば便利でいいのになと思うが、地形や水の確保、領主の支配領域の都合でそう上手くはいかないのだろう。


 そして残念な事に、西にあるクレアさんの故郷は解放地域の範囲外だ。旧ジェルファ王国が三分された時には、教国の支配地域になると思う。


 なので次の行動は、東部の内まだ教国の手が及んでいない地域から帝国軍を追い出して、そこの住民達を可能な限り北部の解放地域に移住させる事。


 説得は難しいと思うけど、俺達の現有戦力では帝国と教国に挟み撃ちにされたらとても戦えない事を正直に伝え、街の有力者に説得に当たってもらう。


 両方と一度に戦うのが無茶なのはみんな感覚で分かると思うので、その部分には理解を得られると思う。


 あとの問題は、俺達の支配地域への移住に応じてくれるかだ。


 あまり応じてくれなくて、この先もこの地域が帝国軍と教国軍への食糧供給源になるなら、三分の計は瓦解してしまう。


 こればっかりは、みんなの反応を待つしかない。



 そんな訳で、ともかく行く先々で帝国軍を追い出して回り、捕えた帝国兵は警備に兵士三人を付けて、アルパの街に送る。


 街を解放するたびに兵士が少なくなっていくのはちょっと不安だけど、基本どの街も帝国兵は10人しかいないようだし、中には反乱軍の噂を聞いて、俺達が来るより先に逃げ出してしまっていた街もあった。


 兵数10人で、配下の雇われ元王国兵達も言う事を聞かないとあっては、そりゃ逃げるのが最善手なのだろう。


 後半の街はほとんどそれだったし、俺達が来る前に住民と元王国兵達で帝国兵を追い出していた街もあった。


 そういう街では捕らえられた帝国兵が住民達に殺され、木に吊るされたりしていたけど、さすがに俺達が到着前の案件では対処のしようがないし、元々帝国兵の処遇を全員穏便に。法律に従って行えるとは思っていなかった。


 多分解放した他の街でも、私刑しけいが行われている所はあるだろう。


 可能な限りの手は打ったつもりだけど、直接監視できない以上は仕方がない。


 さすがに『護送を任せた元孤児の兵士達が……』という案件はないと信じたいけどね。



 そんなこんなで、教国軍と接触しないように可能な限りの街を回り。可能な限りの荷物と食料を持っての北部への一時移住を呼び掛けた。


 ――それがどれだけの成果を挙げたのか。その結果次第で反乱軍のこれからが左右されるので、俺は緊張しながら反乱軍の本拠となるアルパの街へと戻るのだった……。




帝国暦168年1月11日


現時点での帝国に対する影響度……0.5821%(+0.18)旧ジェルファ王国東部の帝国留守部隊を一掃


資産

・8840万ダルナ(-280万)

・エリスに預けた反乱軍運営資金 8893万ダルナ


・元宝石がいっぱい付いていた犬のぬいぐるみ(今はおでこに一つだけ)

・エルフの傷薬×1637


配下

シーラ(部下・反乱軍影の部隊長・C級冒険者 月給50万)

メルツ(部下・反乱軍名目上部隊長・E級冒険者 月給35万・内15万を上級傷薬代として返済中)

メーア(部下・反乱軍副部隊長・E級冒険者 月給35万・内15万を上級傷薬代として返済中)

エリス(協力者・反乱軍後方参謀 月給10万と月30万を宿借り上げ代として支払い)

ティアナ(エリスの協力者 月給なし)

クレア(部下・反乱軍支配地内政担当 月給29万 内24万は帝国暦169年5月分まで前借り中)

オークとゴブリンの巣穴から救出された女の人達24人(雇用中・北の拠点生産担当と中州の拠点運営担当 月給12万)

元孤児の兵士達103人(部下・月給3万 兵士97人 北の拠点の船舶担当5人 医療班1人)

セファル(部下・拠点間輸送担当・C級冒険者 月給30万)(弟も冒険者養成所会計補佐として雇用 月給10万)

ガラス職人(協力者 月給15万・衣食住保証)

船大工二人(協力者 月給15万・衣食住保証)

怪我を負った孤児の子達43人(北の拠点で雇用 月給7.2万)

キサ(協力者・遊牧民傭兵 月給48万 帝国暦168年4月まで給料前払い)

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