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143 動き出す帝国軍

 俺達が北街道で反乱軍を始めて、20日ほどが経過した。


 帝国側もさすがに絶え間なく輸送隊を送り続けて撃破され続けるほど無能ではなく、三隊目が襲われた時点で一旦輸送を中止にしたらしい。


 と言うか、三隊目を送り出した時点でちょっとどうかと思うけどね。


 そして敵も頭を使い始めたようで、俺達が反帝国軍を名乗っている事と、一般の商隊は襲わない事を考え合わせたのだろう。帝国の旗を掲げない輸送隊を送り出してきた。


 旗を掲げていないだけで、編成も装備も前のままなので一目で分かるし、クレアさんの実家商会からも帝国の輸送隊ですと連絡がきた。


 敵もまさかバレていないと思うほど馬鹿ではないだろうから、俺達がどう出るかの様子見なのだろう。


 ……正直対応は迷ったけど、見逃す事にした。


 実際はどうであれ、民間の商隊を襲ったと敵に非難の口実を与えるのも嫌だったし、これはこれで帝国の権威をおとしめる効果があると思ったからだ。


 なにしろ反乱軍におびえて、自国の旗を隠している訳だからね。


 相手もそこは自覚があったのか、民間商隊に偽装したのはその一度きりで、後は俺達が出没する北路を避け。一旦南下して中央路に出てから東に向かうという、遠回り迂回うかいルートを取るようになったらしい。


 こうなると俺達はお手上げで、人口密度が高く隠れ潜む場所も少ない中央路で活動するのは現状無理なので、手の出しようがない。


 このまま放置されたら不完全燃焼に終わる所だけど、帝国側も威信を傷つけられ、北路を閉鎖されたままでは終わらないはずだ。


 討伐隊が派遣されてくるはずと警戒していたら、案の定。クレアさんの実家商会の人が、旧王都からの討伐軍がこちらに向かっていると知らせてくれた。


 第一報によると、騎兵と歩兵の混成部隊で数はおよそ200人らしい。……地方の反乱軍相手には順当。むしろ多いくらいの兵力だろうか。


 実際俺達の兵力はシーラとメルツに兵士が34人。メーアと医療班の子も足して38人だ。俺とティアナさんとキサは戦力に数えない。


 200人は単純に五倍くらいの戦力差で、向こうも本職の軍人であってみれば、まともに戦ったらまず勝ち目はないだろう。


 歩兵もいるので動きは遅いけど、早くて五日後には俺達の行動圏に来るだろうとの事だった。


 計画では最終的に討伐される事になっていて、だから拠点も仮本拠な訳だけど、できれば一回くらいは撃退したいよね。


 そんな事を考えて対策を練っている間に、クレアさんの実家商会からの報告は毎日やってくる。


 それによると、


・敵戦力の詳細は、主力が軽騎兵100に長槍兵40と弓兵30、軽歩兵が30


・他に元王国兵で編成された補給隊が100と、荷馬車が10


おとりなのか今までの滞留分なのか。荷馬車30台の大きな輸送隊が同行予定で待機中


・指揮官はドイドという名の将軍


 であるそうだ。


 重騎兵や重装歩兵がいないのは、進軍を急ぐ機動力を重視したのだろう。


 そして長槍兵が来ているのは、俺達が騎兵だという情報を掴んでいるから。情報をちゃんと集めて、対応もとってきている。


 他の準備も含めて、今度の相手は戦い慣れていて、侮れない感じがするね。


 そして、指揮官のドイドという男。塩を卸している商会に集めてもらっている有力者の情報リストをめくってみると、名前があった。


 グラファス総督指揮下の将軍の一人で、総督お気に入りの部下。


 帝国では貴族位を持っていないと将軍になれない決まりがあるが、男爵家三男で無爵位だったドイドに西方新領で領地を与え、男爵にして将軍位にけた。


 ドイドの方もそれに恩を感じていて、忠誠心は強い。


 ……と、ここまでは一般的な情報だけど。この先が情報網を築いた本領発揮で、実際に会って話した商人の観察眼と、情報収集能力が活かされる所だ。


 そして、客としての情報は戦いにも応用できるのである。


 ちなみに客としてのドイド将軍の情報は、


・32歳。身長二メートルを越える大男で、立派な体を褒めると機嫌がよくなる


・性格は短気で粗暴なので接客注意。特に恩人である総督の悪口は絶対厳禁


・プライドが高くて単純なので、お世辞が有効


・結婚はしておらず、愛妾あいしょうを多数囲っている


・愛妾は西方新領侵攻時、または侵攻後に手に入れた者達で、扱いは悪く奴隷相当なので、女性向けの商品は売れない


 とある。


 他に服の好みとか、好きなお酒の種類とか、好きな食べ物とかの情報もあるけど、それは今はどうでもいい。俺にとって大事なのは性格の部分。そしてそれを総合すると、単純で短気な猛将タイプであるという点だ。


 さらに占領地で集めた女の人を奴隷扱いで囲っているというのも、遠慮なく討ち取れる悪人の気配がしてやりやすい。


 問題は討ち取る方法。ひいては討伐隊を撃退する方法だけど……。


 数で五倍となると、正面からまともに戦うのはダメだ。まず勝てないし、勝てても大きな損害を受けてしまう。


 兵員の補充がいくらでも利く帝国軍と違って、こちらの戦力はとても貴重なのだ。できれば一人も失いたくない。


 ――となると当初の計画通り、森に誘い込んで罠で削りつつ攻撃だけど、その前に一つ。猛将タイプ相手に、多分初回に限って有効な方法がある。



 できるかどうかは実行者の意見を訊いてみないと分からないけど、俺はその確認を取るべく。シーラの元に向かうのだった……。




帝国暦167年8月10日


現時点での帝国に対する影響度……0.0121%(西方新領の反乱軍のせいで北路断絶中)


資産

・5336万ダルナ

・エリスに預けた冒険者養成所運営資金 1384万ダルナ@月末清算(現在5月分まで)


・元宝石がいっぱい付いていた犬のぬいぐるみ(今はおでこに一つだけ)

・エルフの傷薬×1637


配下

シーラ(部下・反乱軍部隊長・C級冒険者 月給50万)

メルツ(部下・反乱軍拠点訓練担当・E級冒険者 月給35万・内15万を上級傷薬代として返済中)

メーア(部下・反乱軍拠点メンタル担当・E級冒険者 月給35万・内15万を上級傷薬代として返済中)

エリス(協力者・反乱軍拠点運営担当 月給10万と月30万を宿借り上げ代として支払い)

ティアナ(エリスの協力者 月給なし)

クレア(部下・中州の拠点管理担当 月給29万 内24万は帝国暦169年5月分まで前借り中)

オークとゴブリンの巣穴から救出された女の人達24人(雇用中・北の拠点生産担当と中州の運営担当 月給12万)

元孤児の冒険者 一期生二期生合計40人(部下・部隊指揮官候補として教育中 月給3万)

三期生63人(月給3万)

セファル(部下・拠点間輸送担当・C級冒険者 月給30万)(弟も冒険者養成所会計補佐として雇用 月給10万)

ガラス職人(協力者 月給15万・衣食住保証)

船大工二人(協力者 月給15万・衣食住保証 帝国暦167年5月分まで10万ダルナ分前払い)

怪我を負った孤児の子達43人(北の拠点で雇用 月給7.2万)

キサ(協力者・遊牧民傭兵 月給48万 帝国暦168年4月まで給料前払い)

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