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132 仮本拠地探し

 俺はシーラと二人、荷物をかついで西へと歩いている。


 目的は帝国と戦う時に備えて、仮の本拠地を選定する事。そして周辺の地図を作成する事だ。


 この先この辺りで戦闘行動をするなら、地図はなにより大切なものだからね。


 ――歩数を数えて距離を測り、目印になるものを探しては書き込んでいく。あとは、道・草原・森・山・川の大まかな配置もだ。


 俺達が進んでいるのは、旧ジェルファ王国を東西に走る三本の主要街道の内、北にある北路。その北側はしばらく草原で、あとは大山脈まで森が続いている。


 森の中は馬や大部隊が行動しにくいし、草原より強い魔獣も出る。山に入れば更にだ。


 大軍相手に篭城するなら適地だと思うので、その中でも特に立て篭もりやすそうな場所を探すのだ。




 ……地図を作りながらなので、ゆっくりと進む事10日。クレアさんの故郷の街との中間点を過ぎてしばらく進んだ辺りで、細い小川を越えた。


 小川と言っても主要な街道なので、馬車が通れるように橋が架けてある。……それは今どうでもいいんだけど、川の上流に目をやると、山肌に切り立ったがけが見えた。


「シーラ、あそこどうかな?」


 そう言葉を発し、小川を辿って道を外れ。草原を越えて森に入っていく。


 森に出る魔獣はシーラの気配察知で回避したり追い払ったりしてもらいながらさかのぼっていくが、川沿いは開けていて歩きやすく、馬も普通に通れると思う。


 これはつまり、帝国軍が攻めて来るならここを通る可能性が極めて高い訳で、迎え撃つポイントが絞れるという事だ。


 二回目以降は相手も考えるだろうけど、来る道が分かっているならわなを張ったりできて迎え撃ちやすいので、勝算が上がると思う。


 罠の研究もしておかないといけないね。


 そんな事をシーラと相談しながら進んで行くと、森に入って半日くらいで、小川は見上げるような高い滝に姿を変えた。


 落差らくさは10メートルくらいあると思う。水量は多くないけど、中々立派なものだ。


 おそらくこの辺りから山。大山脈の領域に踏み込んでいて、出現する魔獣も凶暴さを増しているはずだ。


 この魔獣も、帝国軍にとっては厄介な敵になってくれるだろう。



 滝はとても登れそうになかったので、大回りして上に出る。はるか遠くに街道が見渡せる、中々いい場所だった。


「ねぇシーラ。俺達がここに拠点を作ったとして、シーラが敵将だったらどう攻める?」


「……正面からは無理ですから、我々がそうしたように左右どちらかから迂回する事になるでしょうね。少数では攻略困難ですが、大軍であれば両方から登って挟み撃ち、あるいは包囲という事も考えられます」


「そっか、包囲は困るね……」


 相手が北部に駐留している少数部隊くらいならここで撃退可能だけど、旧王都駐留の本隊が出て来たら無理……くらいの感覚でいいだろうか? やはり敵の戦力を正確に把握するのは重要だね。商会には頑張ってもらおう。


「じゃあここを出城扱いにして、本当の仮本拠はちょっと離れた場所に作ろうか」


『本当の仮本拠』とかややこしいなと思うが。ここが占領された後、更に奥まで追撃されて発見破壊される、反乱軍の本拠地になる場所だ。


「水が近くにある方が便利だから、この小川をさかのぼった場所に仮本拠を設定しようか」


 そう言って適当な場所を探し。反乱開始までに宿泊小屋や倉庫、炊事場なんかを作る事にする。


 ここなら大軍に襲われても、不意打ちさえされなければ大山脈の奥に逃亡で、まず安全だ。


 気配に敏感なシーラがいてくれれば早々奇襲なんてされないだろうし、一応ティアナさんにも警戒の補助をお願いするつもりだ。


 大山脈の奥に逃げた後は、シーラとティアナさんの補助があればまず追いつかれる事はないだろう。


 大軍で追うのは不可能だし、数人の精鋭でなら追えるだろうけど、数が少ないなら逆襲して返り討ちにする選択肢もある。


 とりあえず、できるだけ山での行動に慣れておく事が重要だ。訓練頑張ってもらおう。


 そんな計画を立てて山から降り、地図作りを再開しながら西へと向かう……。




 想定活動地域の地図が大まかに完成した所で中州の拠点に戻り。何枚か写しを作って、測量作業は完了だ。


 その一方で仮本拠整備の計画を立て、冬の間の訓練計画も立てる。


 順番的には、冬の間に訓練。春から仮拠点整備で、麦の収穫がはじまる初夏から行動開始になるだろう。


 地図を作った結果、作戦予定地域は思っていた以上に横長である事が分かったので、仮本拠以外に幾つか前進拠点も作る事になった。


 場所は山から下った森の中。仮眠が取れる程度の小屋で、寝具と若干の武器を備蓄しておく。


 食料は置いておくと魔獣に襲われて小屋ごと破壊されそうなので、置いておくのは食べられないものだけ。襲撃前夜に現場に近付いて、ゆっくり休める場所という使用目的だ。


 帰りも必ずそこに寄ってから仮本拠に戻る事にすれば、場所をリークするまで仮本拠の場所が見つかりにくくもなるだろう。


 さすがに向こうも、何度も襲撃されたらアジト探しくらいはするだろうからね。


 ほぼ空っぽの仮眠小屋なら、見つかっても大した影響はない。



 そんなこんなで順調に準備は進み。エリスに冒険者養成所の運営資金を多めに預けたりと準備を整え、あとは武器の調達だ。


 ――と言ってもシーラは自前の武器を持っているし、冒険者のみんなも冒険者の装備として武器を持っている。


 冒険者養成所を運営しているので、冒険者が使う短剣ややり、弓矢なんかは怪しまれる事なく普通に調達できるし、在庫もある。


 将来的に大量に必要になる時に備えて、武器工房も欲しくはあるんだけど、これは確保が難しい。


 北の拠点なら燃料がほぼ無尽蔵にあるけど、問題は鉄を融かす。せめて柔らかくするための熱量が出せるかだ。


 たしか、鉄の融点はガラスよりかなり高かった記憶がある。


 元の世界で、ガラス棒をバーナーであぶって柔らかくして、簡単なガラス細工をやった記憶があるけど、鉄はバーナーでちょっと炙ったくらいでは柔らかくならなかったと思う。


 木炭か石炭なんかを使って、ふいごで空気を送って思いっきり熱くしないと加工できないと思うんだよね。それに、炭素の供給がどうとかややこしい話もあった気がする。


 北の拠点で炭焼きからやるとなると大変だし、材料になる鉄もない。


 辺りを歩いて色々探してみた事があるけど、鉄鉱石はおろか砂鉄も見つからなかった。


 街で鉄を買い付けて送る手もあるけど、下手したら武器を買うより疑われるだろう。


 違う場所という事ならクレアさんの故郷の街は木材が豊富で、それを燃料にガラス細工が盛んだったそうだけど、それなら鉄工鍛冶かじも盛んだった可能性はある。


 だけど、帝国に目をつけられて監視が厳しいあの街で武器作りは無謀すぎる。


 他の街を探す手もあるけど……。



 しばらく思考を巡らせた末。俺は一案を思いついて、メルツに相談するべく中州の拠点へと向かうのだった……。




帝国暦166年11月14日


現時点での帝国に対する影響度……0.0001%(帝国領での塩販売開始)


資産

・1億5310万ダルナ(+178万)

・エリスに預けた冒険者養成所運営資金 2636万ダルナ(+1540万)@月末清算(現在10月分まで)


・元宝石がいっぱい付いていた犬のぬいぐるみ(今はおでこに一つだけ)

・エルフの傷薬×1437


配下

シーラ(部下・C級冒険者 月給なし)

メルツ(部下・反乱軍拠点訓練担当・E級冒険者 月給31万・内15万を上級傷薬代として返済中)

メーア(部下・反乱軍拠点メンタル担当・E級冒険者 月給31万・内15万を上級傷薬代として返済中)

エリス(協力者・反乱軍拠点運営担当 月30万を宿借り上げ代として支払い)

ティアナ(エリスの協力者 月給なし)

クレア(部下・中州の拠点管理担当 月給24万 帝国暦169年5月分まで給料前借り中)

オークとゴブリンの巣穴から救出された女の人達24人(雇用中・北の拠点生産担当と中州の運営担当 日給4000で月24日仕事)

元孤児の冒険者21人(部下・F級冒険者だけど実力はE級相当 自分達の稼ぎから月収3万。残りは冒険者養成所運営資金に寄付)

セファル(部下・拠点間輸送担当・C級冒険者 月給30万)(弟も冒険者養成所会計補佐として雇用 月給5万)

ガラス職人(協力者 月給10万・衣食住保証)

船大工二人(協力者・帝国暦167年5月分まで給料前払い 月給10万・衣食住保証)

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