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123 西方の情勢

 西の国から来たという商人から話を聞き、宿に戻ってその情報をまとめる。


 重要だと思う部分をまとめると、


・旧ジェルファ王国の西にはロムス教皇国という大きな国がある

・今いる街から国境までは馬車で30日ほど。馬ならその半分以下

・ロムス教皇国は政治と宗教が一体化した国で、国教であるロムス教の教皇が王位を兼ねる

・旧ジェルファ王国は帝国寄りだったが、国王が死去して王子が国を継ぐ事になり、その王子がロムス教皇国寄りだったので帝国の侵略を招いた

・そのせいもあって、帝国とロムス教皇国の仲は悪く、緊張状態。ちなみに以前から良くはなかった

・しばらくの間は国境が完全封鎖状態だったが、最近緩和されたので行商に来る事ができた

・ロムス教皇国の主要な輸出品は金属製品やガラス製品

・好まれる輸入品は香辛料や宝石、高価な布など。塩は自国生産できるので需要は高くない


 ……といった感じだ。


 貿易の相手としては微妙だけど、帝国と敵対関係にあるというのは大変素晴らしい。

 帝国と戦う時に利用できそうな気がする。


 なんとか連絡を取りたい所だけど、国境は警戒が厳しそうだよね……。


 聞いた話では、教皇国の北部には港町があるという事だったので、北の拠点から西に向かえば連絡できるだろうか?


 でも、海狸かいり族のみなさんが西にはクラーケンみたいなのが出るって言ってたよね……港町があるって事は船が航行している訳だから、出現頻度が低いか、そんなに脅威じゃないのだろうか?


 残念ながら今日のメンバーには北の港町に行った事がある人はいなくて、その辺聞き出せなかったんだよね……だけどまずは、どんな国かを知る所からだろうか?


 そんな考えを巡らせながらその日は眠りにつき。翌朝もう一度支店長さんの元に向かう。


「実はロムス教皇国に興味があって、情報収集にための人材を派遣したいのです。


 昨日話した行商人さん達が帰る時に、うちの者を二名ほど同行させたいのですが、説得にご協力願えませんか?」


 そうお願いすると、支店長さんはちょっと考えたあと『アルサルさんには儲けさせてもらっていますからね、口添えするくらいならいいでしょう』と、あっさり了解してくれた。


 そのまま支店長さん同行で宿兼酒場をたずね、まだ二日酔いっぽい行商人の人達に話をする。


「ロムス教皇国に興味があるのですが、帰国の際にはうちから二人ほど、人員を同行させて頂けませんか?


 装備は全部こちらから持参しますし、道中の食費宿代も自弁じべんします。場合によっては護衛としても役に立つと思いますので……」


 昨日聞いた話では、一行六人の構成は商人一人に護衛五人だった。


 支店長さんの商会でも、小規模の商隊で護衛四・五人。中規模なら10人が目安みたいなので、妥当な数ではある。でも二人くらい増えても問題ないはずだ。


 俺の提案に、西の行商人さんは不審そうな顔をして俺を見てくる。


 ……まぁそうだよね。俺が悪い奴で、同行させた仲間が隙を見て荷物を盗むとか、夜に不意を突いて襲撃するなんて可能性もある。


 だからここで物を言うのが、長年積み上げた信用というやつだ。


 今朝訊いてみたら支店長さんと西の行商人さんは長い付き合いらしいので、今回はそれを利用させてもらう。


 俺が視線を送ると、支店長さんが口を開いた。


「この人の事はうちが保証するから、同行させてやってくれないか? なにかあったらうちが責任を持つから」


 朝お願いしておいた通り、支店長さんが口添えをしてくれる。


 損害の補償まで申し出てくれるのは口添え以上な気もするが、口添えだけでは不足で、こうでも言わないと了承しないと判断したのだろう。


 西の商人さんはそれでもちょっと迷っている様子だったが、しばらくして、『わかりました、引き受けしましょう。ただし案内だけで、他は一切責任を持ちませんからね』と言って、同行を認めてくれた。


 お礼を言い、この先の予定を訊くと、この付近でもう一つ街を回る予定なので、五日後にこの街で合流でどうかと言われた。


 五日か……同行してもらう本命はメルツとメーア。二人に断られたら冒険者の子か、ワンチャン一人はクレアさんだけど、メルツ達はクレアさんの故郷の街と中州の拠点を往復しているので、五日でここに連れて来るのは無理だよね。


「その日程はちょっと厳しいので、もっと西の場所で合流でどうですか? どこを経由して帰る予定です?」


「中央路を通って、旧王都経由で帰ろうと思っています」


「なるほど、ではそこで待ち合わせでどうでしょう?」


 旧ジェルファ王国には東西に、北路・中央路・南路と三本の街道が通っていて、アルパの街やクレアさんの故郷は北路沿いに。


 この街や旧王都は中央路沿いにある。


 クレアさんの故郷の街から南に街道が分岐して王都に繋がっているから、そのルートで追えば追いつけるだろう。


 行商人さん達は馬車だから、馬で移動すればかなり早いしね。


 そんな訳で話を調整し、行商人さん達が旧王都に着くのは12日か13日後くらいとの事だったので、それに間に合うようにこっちも人を送る事にする。


 旧王都での滞在場所を訊いたら、後はもう行動開始だ。



 行商人さん達に挨拶をし、支店長さんにお礼を言ってメープルシロップを使っての情報収集をお願いし、俺とシーラは急いで中州の拠点に戻る。


 そこで三日待っているとメルツとメーアがクレアさんの故郷の街の孤児10人ほどを連れて戻ってきたので、孤児達の事はクレアさんに任せ、二人に事情を説明する。


 行商人の人達に同行して西のロムス教皇国へ行って、情報収集をしてきて欲しいと伝えると、メルツがちょっと眉をひそめた。


「――あれ、なにかまずい事あった?」


「いえ……ただ、私の故郷は王国の西部で、ロムスは長年の仇敵きゅうてきだったもので。それを思い出して少し……」


 ああそうか、メルツの実家は男爵家だったね。戦った事があるかは分からないけど、国境の警備に狩り出されたりしていたのだろう。


「いけそう? 無理なら違う人に頼むけど?」


「大丈夫です。元より実家を捨てた身ですし、その実家さえ今はどうなっているか分かりません。それに、潜入して情報を集めるのは敵対状態であっても行う事ですから」


 なるほど、それはそうかもしれない。


「メーアも大丈夫?」


「はい、メルツと一緒なら」


 おっと、唐突にノロケを挟んできたな。相変わらず仲がいいようでなによりだ。


「じゃあよろしく頼むよ。道中は基本商隊の護衛だけど、本当に危ない時は自分達の命を優先する方向で。情報収集も安全最優先でね。


 それと、もしよかったら旧王都や故郷の様子も見てきて報告してくれると助かる。


 この辺りの街の様子は商隊の護衛をしている冒険者の子達から聞いているけど、離れた場所の状況も知りたいから」


「わかりました」


「うん。故郷は行きたくないなら違う場所でもいいから……これ、道中の路銀と活動費」


 そう言って、1000万ダルナを渡しておく。


 旅費はそんなにかからないだろうけど、情報収集にはお金がかかるからね。


「それと、これも」


 追加でメープルシロップの瓶を。あまり多いと荷物になるだろうから、三本だけ渡す。


 あとは先日遊牧民から買ってきた馬をあずけ、待ち合わせの場所を伝えて行商人さん宛の手紙を渡す。



 二人仲良く馬に乗り。『必ず任務をやり遂げてみせます』と力強い言葉を残して旅立っていくメルツとメーアを見送りながら、俺は二人の無事を祈るのだった……。




帝国暦166年8月14日


現時点での帝国に対する影響度……0.0%


資産

・5898万ダルナ(-1008万)

・エリスに預けた冒険者養成所運営資金 2455万ダルナ@月末清算(現在6月分まで)


・元宝石がいっぱい付いていた犬のぬいぐるみ(今はおでこに一つだけ)

・エルフの傷薬×237


配下

シーラ(部下・C級冒険者 月給なし)

メルツ(部下・反乱軍拠点訓練担当・E級冒険者 月給31万・内15万を上級傷薬代として返済中)

メーア(部下・反乱軍拠点メンタル担当・E級冒険者 月給31万・内15万を上級傷薬代として返済中)

エリス(協力者・反乱軍拠点運営担当 月30万を宿借り上げ代として支払い)

ティアナ(エリスの協力者 月給なし)

クレア(部下・中州の拠点管理担当 月給24万 帝国暦169年5月分まで給料前借り中)

オークとゴブリンの巣穴から救出された女の人達24人(雇用中・北の拠点生産担当と中州の運営担当 日給4000で月24日仕事)

元孤児の冒険者21人(部下・F級冒険者だけど実力はE級相当 自分達の稼ぎから月収3万。残りは冒険者養成所運営資金に寄付)

セファル(部下・拠点間輸送担当・C級冒険者 月給30万)(弟も冒険者養成所会計補佐として雇用 月給5万)

ガラス職人(協力者 月給10万・衣食住保証)

船大工二人(協力者・帝国暦167年5月分まで給料前払い 月給10万・衣食住保証)

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