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117 船造り

 シーラと冒険者の子達10人を伴って、海狸かいり族の集落に向かう。


 道中確認したら冒険者の子達も面識があるそうで、持って来てくれた魚が美味しかったので好印象のようだ。


 やはり美味しい食べ物は強いよね……。



 そんな事を考えながら大山脈を初めて越えた頃に通った懐かしい場所を通過し、久しぶりに海狸族の集落へとやってきた。


 集落と言っても川を堰き止めた大きな池に、木の枝などで作った島のような、半水中の住居があるので、一般的な集落のイメージとは大分違う。


 少し離れた所から俺達の姿を見つけた海狸族の子供が大人を呼びに行ってくれ、到着と同時に出迎えてくれた長老に会う事ができた。


 俺は水に潜れないのでとても助かる。


「お久しぶりです、お元気でしたか?」


 俺の挨拶に、長老も笑顔で……多分笑顔だと思う表情で応えてくれる。


 顔まで毛が生えているのもあって、獣人の表情は分かり難いね。大きなきばが見えてちょっと威圧感があるけど、威嚇いかくしている訳ではなく、笑ったら前歯が見えた的なものだと思う。


 この立派な牙が大木をかじり倒すのだから、今回の目的からするとむしろ頼もしい存在だ。


「実はお願いがあって来たのですが、太い丸太を削って船を。こう、真ん中だけ凹ませて人や物を乗せられるようにしたものを作って欲しいのですが……」


「なるほど、分かりました」


 用件を説明しただけで即答だ。交渉簡単すぎないだろうか?


「条件とか対価とか話さなくていいんですか?」


瘴気しょうきから我々を救ってくださった勇者様の依頼です。喜んでやらせて頂きますし、木を削るのでしょう?


 我々は元々木を齧らないと前歯がどんどん伸びてきて困るので、用もないのに齧ったりするくらいです。それがお役に立つのなら願ってもない事です」


「あ、はい……」


 ネコの爪研ぎみたいなものだろうか? なんか、あっという間に話がまとまってしまった。


 とりあえずなにか報酬をと思うが、海狸族の人達はお金を使わないし、主食は魚で、魚獲りに関しては俺達より圧倒的に上手い。


 エルフみたいに塩を欲しがる事もないし、服も着ていない。


 あえて欲しがるものと言えば敵に襲われた時用の武器だけど、今までも塩輸送に使っている魚の胃袋を加工した袋や、魚を貰ったお礼にちょくちょく渡していたし、あまり数が要る物でもないようで、需要が飽和状態っぽいんだよね……。


 まぁ、なにか考えよう。



 そんな事に思いを巡らせながら、海狸族の若者20人くらいを一行に加え。ティアナさんが教えてくれた大木がいっぱいポイントを目指す。


 海狸族の皆さんは水辺生活だけど、外敵にさえ襲われなければ陸上移動も問題ないようで、普通についてきてくれる。


 そしてティアナさんオススメの大木ポイントに着いたけど……なんだろうね、ここまでは求めていなかった感がすごい。


 無数に生えているのは文字通りの大木で、四人・五人で手を繋いでも幹を一回りできないようなサイズなのである。


 大木の方が大きい丸木舟を作れそうではあるけど、このサイズはそもそも運ぶのが不可能だし、あまり大きいと川で使う時に底をこすりそうだ。


 なのでポイントを少し外した場所で手頃なサイズの木を探し。海狸族の皆さんに齧り倒してもらって、枝を払って手頃なサイズに切断した後、冒険者の子達に運んでもらう。


 とても持ち上げられる重さではないので、縄をかけて引きずりながらだ。


 ここは海狸族集落がある川の上流なので、川まで辿り着いて流す事ができれば、あとは引っかかった時に手を貸してあげるだけで運べるはずだ。


 冒険者の子達は10人いれば自衛できるみたいなので、俺とシーラは海狸族の皆さんと現場に残り、あと三本木を齧り倒して大きさを調整してから、集落に戻った。


 集落にはすでに冒険者の子達が到着していて、海狸族の皆さんが丸太に集まり、すごい勢いで木をガリガリやっている。


 辺りには木屑の山ができていて、雪みたいだ。


 ……長老自らガリガリやっている所に声をかけ。残す木の厚さとか、底を平らにしてもらうとか、側面は曲線にしてもらうとかをお願いしたけど、『分かりました』と言って、すぐに齧る作業に戻ってしまう。


 齧るの好きなんだろうか?



 その日は集落の近くで野営して夜を明かし。翌日また山へ行って、残りの三本の丸太も運んでくる。


 色々試行錯誤してみる用の予備材だが、一日かけて三本運び終えた頃には、一本目がほぼ船の形になっていた……すごいな。


 なぜかすごく満足そうな海狸族の皆さんにお礼を言い、改めて全体を見る。


 完成した船は、長さが五メートルの幅が一メートルくらい。イメージとしてはカヌーに近い。


 試しに池に浮かべてみたら浮力も上々で、六人くらいまでは乗っても安定していた。


 積載重量300から400キロくらいだろうか?


 オールも作ってもらって冒険者の子達に使い方を教え、早速漕いでみると、船は滑るように水面を進んでいく……いいなこれ。


 見学していた海狸族の皆さんも興味津々で、なぜか歓声を上げて応援してくれている。


 長老によると、『獲った魚や海草を運ぶのにいい。我々も欲しい』との事だったので、残り三本ある丸太の内一本の提供を申し出たら、『そんな大ききのはいりません』と言われてしまった。


 お返しになるかと思ったのに、残念。


 船は自分達で適当な木を調達して1メートルくらいの小さいのを作るそうで、とりあえず中に溜まった水をい出す用のおわんだけ提供した。


 材料が木100パーセントだからなにもなくても水に浮くし、魚や海草を積むだけなら必要ないかもしれないけどね……。


 ――それはともかく、試作一号艇から上々の物が完成したのはありがたい。


 問題なく川を下れそうだし、北の拠点は海の近くだから乗って帰ろうかと思ったけど、全員は乗れないし冒険者の子達を二手に分けるのも心配だったので、歩いて帰って船は海狸族の皆さんに届けてもらう事になった。


 残りの丸太三本も『時間がある時にでいいですから、加工して届けてください』とお願いし。『今回のお礼をしたいので、なにか困った事や必要な物があったら言ってください』と伝えて、集落を後にした。



 ……果たせるかな。翌日俺達が北の拠点に帰り着いたのとほぼ同時に船一号が届けられ、三日後には二号が。


 その後も二日に一隻のペースで送られてきて、七日目には四隻が勢揃いしてしまった。


 やる気満々だね……。


 無理していないか訊いたけど、木を齧るのは海狸族の日常なので、むしろ『齧る木が向こうからやってきてくれた』くらいのノリだったそうだ。


 四隻目を削り終えた後も、今度は自分達用に小さいのを作っているらしい。


 荷物運びの他、子供の玩具おもちゃにもいいとの事で、船作りの報酬はこれを教えてもらった事で十分と言われてしまった。


 ……まぁ、先方がいいと言っているならいいのだろうか?


 とりあえず、塩を運ぶのに使っている魚の胃袋製の防水袋で簡易救命胴衣を作り。それを着けて冒険者の子達に舟を漕ぐ練習をしてもらうが、長距離を移動するのに完全手漕ぎはしんどそうだよね。


 とかかじとかがあるといいと思うので、そこはやはり本職の船大工が必要だ。



 船大工の確保がどうなっているか確認するべく。北の拠点の護衛を冒険者の子達に任せ、俺とシーラは中州の拠点へと向かうのだった……。




帝国暦166年5月19日


現時点での帝国に対する影響度……0.0%


資産

・3160万ダルナ

・エリスに預けた冒険者養成所運営資金 1355万ダルナ@月末清算(現在4月分まで)


・元宝石がいっぱい付いていた犬のぬいぐるみ(今はおでこに一つだけ)

・エルフの傷薬×57


配下

シーラ(部下・C級冒険者 月給なし)

メルツ(部下・反乱軍拠点訓練担当・E級冒険者 月給31万・内15万を上級傷薬代として返済中)

メーア(部下・反乱軍拠点メンタル担当・E級冒険者 月給31万・内15万を上級傷薬代として返済中)

エリス(協力者・反乱軍拠点運営担当 月30万を宿借り上げ代として支払い)

ティアナ(エリスの協力者 月給なし)

クレア(部下・中州の拠点管理担当 月給24万 帝国暦169年5月分まで給料前借り中)

オークとゴブリンの巣穴から救出された女の人達24人(雇用中・北の拠点生産担当と中州の運営担当 日給4000で月24日仕事)

元孤児の冒険者21人(部下・F級冒険者だけど実力はE級相当 自分達の稼ぎから月収3万。残りは冒険者養成所運営資金に寄付)

セファル(部下・拠点間輸送担当・C級冒険者 月給30万)(弟も冒険者養成所会計補佐として雇用 月給5万)

ガラス職人(協力者・帝国暦166年6月分まで給料前払い 月給10万・衣食住保証)

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