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106 帝国の情報

 一旦北の拠点まで戻り、完成していた小瓶こびん18本を中洲の拠点に運び、メープルシロップのたるから一部を取り分けた残りを持って、支店長さんの元へ運ぶ。


 そしてまた北の拠点に戻って20日ほどを過ごし、追加で完成した小瓶30本をシーラと二人で分けて持ち、割らないよう慎重に運び、また支店長さんに会う。


 その間に塩64袋の売却益1920万ダルナの収入、女の人達への給料9月分までで305万ダルナの支出、家賃収入が40万ダルナ。他に冒険者養成所経費が8・9月分で833万ダルナなどの報告を受け、順調な運営に満足しながら情報収集の進捗しんちょくを聞く。


 今日が10月の11日なので、一番最初にメープルシロップの瓶を渡してから52日。対帝国の情報収集は早くも成果を挙げ始め、色々な情報がもたらされた。


 まず一番ビックリしたのが、俺が帝国の先代皇帝ではなくなっていた事だ。


 と言っても王朝が変わったとかではなく、今年の春に27代帝国皇帝、アムルサール27世が崩御ほうぎょして、28世皇帝が即位したらしい。


 俺は26世だったので、先々代皇帝になった訳だ。


 ……俺が帝国から逃亡してまだ2年と少しなのにもう代替わりとか、宰相無茶し過ぎじゃないだろうか?


 一応自然死の可能性もあるけど、可能性が高いのは圧倒的に宰相による謀殺ぼうさつだろう。隣で一緒に話を聞いているシーラも険しい表情である。


 会った記憶もない弟だけど、宰相の欲望のせいで幼い命を散らしたと思うとやりきれないね……。


 そして他には、この国……元ジェルファ王国で、今は『西方新領』と呼ばれているらしい地域の情報。


『グラファス』という名の将軍が西方新領総督として統治していて、将軍の部下及び帝国本土から派遣された文官が各地方、各街を管理しているのだそうだ。


 王国侵攻の総指揮をったのもこの人らしく、ララクをはじめとする孤児達や、クレアさんの実家商会の人達にとってはラスボスと言った所だろうか? 宰相は裏ボスかな?


 他にも沢山の情報があったが、直接聞くには多過ぎるし、シーラがなにやらどんどん怖い顔になっているので、紙にまとめた束を貰い。宿でゆっくり読む事にする。



 ……という訳で。宿の部屋に入って最初にやる事は、シーラに言葉をかける事である。


「ねぇシーラ、グラファス将軍って知ってる人?」


「はい。私の父を捕えに来て、皇帝の勅令状を盾に父の身柄を押さえ。処刑した当人です」


 おおう……なんかずっと怖い顔していると思ったら、父のかたき当人なのか……。


 真の仇は宰相だとしても、その次くらいに恨み深い相手という事だ。


 そりゃどんどん怖い顔になりますわ……。


 ――とりあえず、当面の大目標はこのグラファスという将軍の討伐で良さそうだ。宰相の腹心でもあるみたいだしね。


 それができるほどの戦力を揃えられるのはまだまだ先だろうけど、目標があると日常に張りが出ていいと思う……シーラはちょっと張り詰め過ぎな気もするけどね。


 そんな訳で俺も気合を入れ直し。情報をまとめた紙束を読んでいく。


 俺が読んだらシーラにも回して情報を共有し、その後は焼いてしまう。


 たとえ当たり障りのない情報でも、疑惑を招く証拠は無いに限るのだ。



 ……ほとんど半日がかりで情報を読み終え。重要そうな案件を頭に叩き込んだが、今すぐに有効そうなものはあまりなかった。


 そりゃまぁ、帝国軍の編成とか配置とかの情報を商会の支店長が簡単に取れる訳もないからね。


 なので必然、情報の主な物は民政部分になるが、大体どの街でも帝国と帝国派は反感を持たれていて、帝国側は権力を笠に着て横暴を働いているようだ。


 どの街でも賄賂わいろが横行していて、賄賂が有効ではないとしるされている街は一つもない。


 違いがあるとすれば、街一つと周辺の農村の管理を任されている文官を『郡長』と呼ぶらしいけど、『この街では郡長に賄賂を贈るのが有効』『この街では郡長の妻に』『この街では駐留軍の隊長に』……みたいな差だけだ。


 ホントロクでもないよね……。占領地からは搾取さくしゅする事しか考えていないらしい。


 そして搾取された富はまた賄賂となって、巡り巡って最終的には多くが宰相の元へと集まるのだろう。地獄のような構図だ。


 ますます打倒宰相の決意が高まってくるね。


 ……そんな訳で一通り情報を吸収し。翌日また支店長に会って引き続きの情報収集をお願いし、メープルシロップの売り上げの三割。50万ダルナを受け取って北の拠点へと戻る。


 今まで提供したのが小瓶21本だから……一本8万ダルナくらいで売れた計算になる。


 クレアさんの見積もりがかなり正確で、ちょっと怖くなるくらいだ。


 そしてその才能が埋もれてしまっている現状が、つくづくもったいないね……。



 メープルシロップの売り上げは塩に比べたらわずかな額だけど、お金は塩で、情報はメープルシロップで集めていると思えば、いい分担だと思う。


 経過が順調な事に気を良くして、80本提供すると約束した残りの29本を引き渡すべく。俺とシーラはまた北の拠点へと戻る。


 肌に当たる風はかなり涼しくなっているので、大山脈はもうしばらくしたら雪に閉ざされるのだろう。


 それまでに輸送を完了して、冬支度をしないといけないね……。




帝国暦165年10月12日


現時点での帝国に対する影響度……0.0%


資産

・5257万ダルナ(+1675万)

・エリスに預けた冒険者養成所運営資金 1778万ダルナ(-833万)@月末清算(現在9月分まで)


・元宝石がいっぱい付いていた犬のぬいぐるみ(今はおでこに一つだけ)

・エルフの傷薬×57


配下

シーラ(部下・C級冒険者)

メルツ(部下・反乱軍拠点訓練担当・E級冒険者)

メーア(部下・反乱軍拠点メンタル担当・E級冒険者)

エリス(協力者・反乱軍拠点運営担当)

ティアナ(エリスの協力者)

クレア(部下・中州の拠点管理担当 帝国暦169年5月分まで給料前借り中)

オークとゴブリンの巣穴から救出された女の人達24人(雇用中・北の拠点生産担当と中州の運営担当)

元孤児の冒険者21人(部下・F級冒険者だけど実力はE級相当)

セファル(部下・拠点間輸送担当・C級冒険者)

ガラス職人(協力者・帝国暦166年6月分まで給料前払い)

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