表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

104/245

104 順調な拠点運営

 もうすっかり慣れた大山脈を超える道のりを歩き、エルフの村とも交易をして塩9袋を傷薬27本と交換し、中州の拠点に到着する。


 クレアさんと会ってガラス作りが順調な事を報告し、こちらの拠点で働いている女の人達にも取り分けておいた給料を支給する。


 ここは定期的にセファルが通ってくれているので、欲しい物があったら個別に注文してもらう事にして注文は取らず、在庫の確認に向かう。


 ティアナさんに北の拠点とここの間で輸送任務に当たってもらい、セファルにこことアルパの街とを往復してもらう体制は上手く機能しているようで、塩の在庫は全部輸送済みだし、北の拠点に向かう荷物が多数蓄積されている。


 いくらティアナさんが力持ちで一度に運べる量が多いとはいえ、一日で往復できるアルパの街と、エリスと戯れる時間込みで六日かかる北の拠点とでは輸送量に差が出るのはしょうがない。


 注文品の到着に時間がかかるのは北の拠点のみんなも承知の上なので、これは順次運んでもらう事にして。ここに置いていたメープルシロップの在庫を確認しに行くと、前回置いた時から何の変化もなく、完璧に保管されていた。


 貴重な甘い物なのでちょっとくらい減っているかなと思ったけど、みんな真面目だね。


 信頼を高めつつ、三つの小瓶こびんにメープルシロップを満たし、クレアさんに見てもらう。


「――これは素晴らしいですね、瓶の透明度が高いので中の琥珀色こはくいろが綺麗に透けて、とても美しいです。


 これで中身がさっぱりした上質の甘味であれば、富裕層に飛ぶように売れるでしょう」


「献上品としても有効だと思いますか?」


「もちろんです。女性に喜ばれるものは需要がありますから、貰って迷惑に思う者などおりません。もちろん、自身が甘味好きな男性にも喜ばれるでしょう」


 おお、それはいい。元大商会の跡取りだったクレアさんの見立てなので、かなり信用できると思う。


 心強い言葉を胸に、俺は翌朝早速アルパの街へと向かうのだった……。




 アルパの街に到着し、エリスの宿屋を訪ねると、俺の姿を見つけたエリスが『アルサルさん、おかえりなさい!』と言って、満面の笑顔を浮かべて駆け寄ってきた。


 相変わらず可愛らしくて癒されるけど、なんか最近俺に懐き過ぎじゃないだろうか?


 母親であるティアナさんと定期的に会えるようになったんだから、そっちに……と考えて、なんとなくピンときた。


 ティアナさんは愛情が強すぎる傾向にあるから、エリスは強すぎる愛を受け止めかねているのだろう。


 父親は不器用なタイプなので、小さい頃から宿を切り盛りしてきたエリスは面倒見がいいしっかり者に育ち、世話を焼かれるよりも焼きたいタイプなのだ。


 それなのにティアナさんに会うたびたっぷり甘やかされるので、その反動で誰かの世話を焼きたくて仕方ないのだと思う。


 そしてその感情の一部が、俺にも向いているのだ。……嬉しいような照れ臭いような、微妙な感覚になるね。


 ――それはともかく、エリスに冒険者養成所の運営状況を訊いてみると、メルツとララクのコンビが帝国に復讐心を持つ孤児達を集めてくれ、二期生の数は19人に増えていた。


 とりあえずこれで人集めを中断し、今は二期生の教育に集中しているらしい。


 一方でエリスが几帳面きちょうめんにまとめてくれている帳簿を見ると、人数が増えた影響で冒険者養成所運営経費は七月の数字で413万ダルナ。


 代わりに一期生の子達が護衛の仕事で稼いだお金を月に30万ダルナ前後入れてくれていて、買収した向かいの建物に入った商会の支店から20万ダルナが入る。


 前回見て以降の六・七月分会計報告は合計-719万ダルナで、預けてある資金が1611万ダルナになっていた。


「相変わらず見やすくて綺麗な帳簿だね、さすがエリス」


 そう言って褒めると、『ありがとうございます』と言って、実に可愛かわいらしい、愛くるしい笑顔を向けてくれる。


 ――思わず、『エリス、うちの子にならない?』と言ってしまいそうになったが、そんな事を言うとティアナさんの正確な狙撃技術で放たれた矢が俺の眉間みけんに突き立ちそうなので、ギリギリで自粛する。


 そもそもよく考えたら、この体だとエリスの方が一歳年上なので『うちの子にならない』はおかしいよね……。


 なんとか正気を取り戻して二冊目の帳簿をめくると、そこにはティアナさん・セファルが運んでくれた塩の販売実績が記録されていた。


 それによると、運ばれた塩は合計100袋で、96袋を売却済。買取価格は2880万ダルナ。


 ティアナさんは一回に20袋運んでいるので五回分。セファルは四袋ずつ運んでいて、最後の一回分だけまだ買取に来ていないらしい。


 倉庫に運び込んだ日付と売却した日付。金額と合計が見やすく書いてある分かりやすい帳簿……だけど、微妙な違和感があるな?


「……ねぇ、これエリスが書いたの?」


「いえ、セファルさんの弟さんです。歩けるようになって冒険者見習いの子達と一緒に座学をしていたのですが、計算が得意そうだったので私が会計を教えました。


 単純な帳簿ですし、私も確認しましたから間違ってはいないと思いますが……」


 そう言いつつ、ちょっと不安気なエリス。


「うん、帳簿に問題はないよ。なんかエリスの字と違う気がしたから訊いてみただけ」


 そう言うとエリスの表情に安堵あんどが浮かんだので、俺も安堵しつつ言葉を続ける。


「そうか、あの子がね……見所があるようだったらこれからも色々教えてやってくれると助かるよ」


「――はい、お任せください!」


 そう言って嬉しそうに、屈託のない笑顔を見せてくれるエリス。ホントに可愛いな。


 そしてセファルの弟さん、くる病に罹って立つ事もできなかったのに、ずいぶんと回復したようだ。


 エリスの食事療法のおかげだね。


 その件もお礼を言うと、『いえそんな、とんでもない……』と恐縮したので、褒めてみるとパタパタ尻尾が振られているのが見えるかのように喜んでくれた。


 ……なるほど、エリスにはお礼を言うより褒める方が喜んでもらえるらしい。


 また一つエリスについての理解を深め。保管されていた2880万ダルナの内1000万ダルナを冒険者養成所の運営資金として渡す。


 エリスの給料もここから出ているので、昇給を提案してみたら全力で遠慮されてしまった。


 宿を借り上げてもらっている上に給料まで貰っているので、それで十分過ぎるらしい。


 欲がなくていい子だね……。


 ならばせめて代わりにと、シーラに運んできてもらった塩一袋を進呈し、われて一緒に夕食を食べる約束もした。


 セファルや弟さんとも一緒に食卓を囲み、エリスの美味しい料理に舌鼓したつづみを打ち。なごやかで穏やかな時間を過ごす。



 そうして英気を養った俺は、翌日いよいよメープルシロップをあきなう話をしに。なじみの商会員さんを訪ねるべく、支店長をやっているという街に向けて旅立つのだった……。




帝国暦165年8月15日


現時点での帝国に対する影響度……0.0%


資産

・3587万ダルナ(+1880万)

・エリスに預けた冒険者養成所運営資金 2611万ダルナ(+281万)@月末清算(現在7月分まで)


・元宝石がいっぱい付いていた犬のぬいぐるみ(今はおでこに一つだけ)

・エルフの傷薬×57(+27)


配下

シーラ(部下・C級冒険者)

メルツ(部下・反乱軍拠点訓練担当・E級冒険者)

メーア(部下・反乱軍拠点メンタル担当・E級冒険者)

エリス(協力者・反乱軍拠点運営担当)

ティアナ(エリスの協力者)

クレア(部下・中州の拠点管理担当 帝国暦169年5月分まで給料前借り中)

オークとゴブリンの巣穴から救出された女の人達24人(雇用中・北の拠点生産担当と中州の運営担当)

元孤児の冒険者21人(部下・F級冒険者だけど実力はE級相当)

セファル(部下・拠点間輸送担当・C級冒険者)

ガラス職人(協力者・帝国暦166年6月分まで給料前払い)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ