第十二話
「いや~。幻覚とは思えないんだよねぇ」
『え、冬眞については無視ですか?』
「まぁ、科学室のドアが壊れたら大人しく翠くんを引き渡すよ。それよりもその非現実的な翠くんの悩みについて解決したいからね」
え……藏先生好きです。
だが、やはりこの非科学的な現象を科学では解決できないと思ったのか、お手上げだと笑った。
「本当は此処に残って実験体としてほしいけれど、翠くんはお気に入りだからやめておくよ。何か進展があったり、何か異常があればすぐに来てね」
『分かりました。ありがとうございます』
藏先生にお礼を言い、科学準備室からでようとすれば大きな音と共に木片が飛んでくる。
ドアは完全にお亡くなりになり、冬眞は私の姿を見ると抱きしめてきて、「怪我は無いか?」と尋ねてくる。
「なぁ、何で俺を置いてったん。そんなに1人で藏先生の所行きたかったん?俺が聞いたらあかん話なん?全部知りたいだけやねん。お願い、置いてかんといて……」
泣きじゃくる冬眞を見て、ぎょっとする。
そして後ろで、「木製のドアは壊されるし、鉄製にしようかな……」なんてアタシ達が見えていないかのように呟くのやめてもらって良いですか?
それにしても。冬眞って私に対してこんな感じだったかと思うが、きっとアタシが他の不良グループに連れ去られたのがトラウマなのだろう。
『えっと……この状態のまま教室に行けないよね。屋上に誰かいるかな……』
「……翠と一緒やったらええよ」
『いや、アタシ授業行くから』
「じゃあ嫌。俺は翠と一緒やないと嫌」
……さよなら、1限目の数学。
アタシが居たら別にどこでも良いのだろうが、もし正気に戻った時に恥ずかしい思いをするのは冬眞だし、人の気持ちを踏みにじる程嫌な人間になったつもりは毛頭ない。
誰も居なさそうな校舎裏に連れて行き、その道中でお茶を買い、冬眞に手渡す。
この情緒不安定気味な冬眞にアタシがさほど驚いていないのは副音声様様といったところだろうか。
『落ち着いた?2限目は出れそう?』
「ん……。翠が居るなら頑張る」
何だこの可愛い生物は??
と思ったがこの可愛い生物は不良だ騙されるな。




