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魔弾のスナイパーは、敵の射程圏外から無双する。  作者: 幸一
■オアシスの集落ムゥハ
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属性魔法

 ムゥハの外周には、人工的に作られたドーナツ状の湖があり、湖畔にはドーム型の掩体壕(バンカー)が等間隔で建てられていた。

 掩体壕には冒険者が詰めており、人工湖を越えてくる魔族や魔物の侵入に備えているのだろう。

 タマーノ商会の隊商は、人工湖の跳ね橋を渡ってムゥハの集落に入ってきたが、そこから集落の中心部までは、馬車での侵入が許されなかったようだ。

 ムゥハ族は、観光業で栄えていると聞いたが、町中に馬車の乗入れを禁止するなど、余所者を寄せ付けない雰囲気があり、ずいぶんと用心深い連中だと思った。


「今夜は、久しぶりにベッドで寝れそうだ」


 俺を集落に足留めしたノルティとの面談は、掩体壕で行われたので、ムゥハの中心部に双子と来るまでは、もっと寂れた集落を想像していた。

 しかし集落の中心部には、白壁が眩しい箱型の建物が建ち並んでおり、ホテルと呼べる豪華な宿屋もある。

 俺はヤハエから当面の滞在費を受取っていたので、見栄えの良い宿屋に泊まることにして、双子とは別の個室を借りた。

 部屋には、お湯の出るシャワーがあり、トイレも水洗である。

 蛇口を捻れば水が出る。

 サヘル地域(北ア乾燥地帯)に生まれ育ったアサラが、砂漠の集落ムゥハの現状を知れば、きっと『おとぎの世界』だと羨んだだろう。

 砂漠地帯の真ん中にあって、外部からの水や食料の援助を必要としないムゥハは、観光業で栄えており、俺だって、ここが浮き世離れした千夜一夜物語(アラビアン・ナイト)の世界だと錯覚する。

 もっともヒノとクリルが言うには、観光業が盛んなムゥハは今、シーズンオフで閑散としているらしい。

 今の俺には、その静けさが心地良い。


「蛇口を捻れば水がでる砂漠の集落は、本当のおとぎ話の世界のようだ」


 独り言る俺は、情緒たっぷりの言葉にため息をついた。

 ンラ砂漠を渡ってきた俺は、サアサの暮らしていた集落とムゥハの違いに、感傷的になっているのだろう。

 騒がしかった双子と別れて部屋に一人きりになると、旅情気分に流されてしまう。


「さて『逆引き辞典』を読みながら、吸収した魔力でレベルアップでもするか」


 俺は膝を打って椅子を立ち上がり、クリルから購入した『逆引き辞典』を手にしてベッドに腰掛ける。

 感傷に浸るよりも、やるべきことに気持ちを切替えることにした。

 サンドキングやオークから大量に魔力吸収した俺は、身体能力を大幅にスキルアップできるし、辞典を調べれば新しい魔法も取得できるはずだ。


 ◇◆◇


 辞典の巻頭には、エクスフィアの能力限界(スキルリミット)とレベルについて簡単な説明が記載されていた。

 まず能力限界とは、個人の生まれ持った能力の限界値をレベル1として、相手からの魔力吸収により身体能力(肉体・五感)や取得魔法をレベルアップできる。

 初期の能力限界は、肉体Lv1、五感Lv1のレベル2が基本であり、魔力吸収によりレベルアップしない限り、どんなに肉体を鍛えても、生まれ持った能力限界を超えられない。


「個人の能力差、修練度の差があるので、同じレベル2でも同じ強さとは限らない。同じレベル2の赤ん坊と、俺の戦力差は歴然としてある……当たり前だな」


 それに俺が初戦、レベル15前後のゴブリンをコンバットナイフで倒せたのだから、日頃の戦闘訓練が魔物とのレベル差を埋めたことになる。

 同様に模擬戦でも、レベル15のザンザに対抗できたし、武器によってはレベル260のドラゴンさえも倒せるので、レベル差が優劣を決める絶対の指標ではない。

 レベルばかり高くても、武器を手にした相手に素手で勝てるとは限らなければ、戦闘訓練を受けている者との戦闘では、必ず勝てる保証がない。


「ただしレベルが高いほど、肉体を酷使したり、魔法を使用したときの魔素の消費量が減少し、休息による魔素の回復が早くなる? 魔素とは魔法元素だよな」


 辞典には魔素について、よほど常識なのか、詳しく書かれていないのだが、レベルが高いと肉体の疲労度を抑制したり、魔法の使用回数が増えるらしい。

 どうやら個人の生まれ持った身体能力を超えたり、魔法を使用するには、魔素を消費しており、体内の魔素はレベルアップに応じてストック量が増える。


「魔素は、肉体や精神力を司るエネルギー源といったところだ」


 では永続魔法以外は、スキルツリーを呼び出して任意でレベルダウンできるが、恒常的に身体能力を上げていると、魔素とやらを消費するから、レベルダウンができるのではないだろうか。

 ザンザが日常生活で不必要な項目をレベルダウンしている理由は、ストックした魔素の消費を抑えるためだった。

 そう考えれば、わざわざレベルダウンしていたのも納得できる。


「任意でレベルダウンした魔力は、他の項目に再配分できないのだから、任意でレベルダウンしても、一度レベルアップした身体能力や魔法が消えるわけではない。ザンザは普段、魔素の消費を抑えることで、いざというときに備えていたのか」


 しかし永続魔法は、任意でレベルダウンできない。

 つまり取得魔法【万能翻訳】や【痛み緩和】などの永続魔法は、魔素の抑制が不可能なので、永続魔法の項目を多く取得すれば、それだけで魔素を放出し続けることになる。

 永続魔法の取得には、慎重になった方が良さそうだ。

 辞典の巻頭から解った情報では、そういうことなのだろう。


「俺の場合、遠距離攻撃に特化して能力をレベルアップするべきか、それとも近接戦闘の能力を補完するべきか。戦う相手がゴブリンやオークなら、近接戦闘の能力も必要だが、あの程度の戦力なら無理にレベルアップしなくても問題なさそうだな」


 ソンゴで弾薬の補充が可能であれば、近接戦闘の能力をレベルアップしなくても良い。

 となれば、やはり遠距離攻撃が向上する能力や魔法を取得することにした。


「ここからが本題だ」


 辞典の本文を読み進めると、取得したい魔法の項目をスキルツリーに表示させるための条件が書かれていた。

 例をあげると、五感の【痛覚】をレベルアップして取得魔法【痛み緩和】の項目が増えたが、同じように商人のヤハエが取得している魔法【鑑定眼】は、取得魔法【判定魔法】と、五感の【視力】をレベルアップすれば項目が表示されるらしい。

 鑑定眼は、物の価値を見極める魔法であり、レベルアップすることで、道具に隠された能力も知ることもできる。

 鑑定眼の取得は、とくに必要性を感じないので見送ったものの、ソンゴでドワーフと交渉するとき、粗悪品を掴まされないためには、鑑定眼の使える者の同席があれば助かると思った。


「既存の項目をレベルアップするだけで取得できる魔法は、いつでも取得できそうだ」


 そして取得魔法の項目を増やすには、魔導書を読んだり、魔法道具を得ることで入手できるもの、取得したい魔法と同じ属性の魔物を討伐したり、同じ属性のポーションを飲むことでも増えるものがある。

 魔法には属性のある【火】【水】【土】【風】と、属性のない【無】があり、万能翻訳や判定魔法など肉体・五感をレベルアップだけで取得できる魔法や、魔導書を読んで得る魔法は、ほとんどが【無】だった。

 火や水などの属性魔法を取得するには、魔物討伐やポーションから属性に応じた魔力を吸収する必要があり、攻撃系魔法の類は、まず各属性の魔力を吸収する必要があった。


「サンドキングは、水の魔素を纏っていた。サンドキングを倒した俺は、水属性の魔力を吸収したことになるのか?」


 ヒノは、サンドキングの肉から薬やポーションが作れると言っていたが、それが水属性の魔力を得るためのポーションなのだろう。

 サンドキングを倒せない者は、サンドキングから抽出したポーションを商人から購入して、水属性の魔法を覚える。

 そういうことだろう。


「俺が水属性の魔力を吸収しているなら、肉体Lvと五感Lvを各20までレベルアップすれば、攻撃に【水属性付加】の魔法が取得可能になる」


 水属性付加の魔法を取得すると、火の魔素を纏う魔物に対して1.5倍のダメージが与えられると書かれていた。

 ソンゴの管理狩猟区である逆さ火山には、火の魔素を纏う大型魔物がいると聞いていれば、水属性付加の魔法を取得するのは悪くない考えだ。

 しかし問題は、サンドキングなどから吸収した魔力で、あと肉体Lvを10、五感Lvを16もレベルアップできるのか。


「判定魔法が極めた者には、吸収した魔力量が解るらしい。気乗りしないが、ノルティに相談してから決めよう」


 せっかくサンドキング討伐で得た水属性の魔力であれば、無計画に振分けて消費するのは、些か勿体ない気がした。

 魔素を纏った大型魔物を狩るには、一筋縄でいかないからだ。

 俺は辞典を閉じると、ムゥハ族の娘ノルティに会うために宿屋を後にした。

ノルティに会った東堂進は、魔族の領地

ンラ砂漠に暮らすムゥハ族の秘密を知る

ことになる……


(・∀・)〈ブクマしてください♪

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