【レベル12】
俺は、クリルと野草を摘んだおかげで、食べられる野草と、毒草を見分けられるようになった。
またクリルには、人間を選んで襲わない生き物は、獰猛であっても動物で、ツノシシのように人間を襲う生き物は、魔力の有無やレベルに関わらず魔物だと教えてくれた。
「ツノシシは人を襲うけど、同じ魔物のスライムを襲わないわ。だから魔物ね」
「では人間を襲う気配がなかったチンワームは、野生動物と言うことか?」
巨大なチンアナゴのようなチンワームは、俺の気配を察すると、一斉に巣穴に逃げ込んでしまう。
人間を襲わない生き物は、どんな大型でも野生動物に分類されるのか。
「チンワームは、魔族の命令で人間を攻撃するから魔物です。魔族は、魔物を服従させることができます」
「なるほど、チンワームは魔族の従魔なんだな」
ペルカは、ゴーレムやアンデッドモンスターなど魔族の作り出した魔物がいると言っていた。
魔物とは、魔族の従魔と、人間を襲う生き物の総称と考えられる。
「ススムは、そんなことも知らないのですか?」
「俺は、田舎者だからな」
「ご出身は、どちらですか?」
「名もない村だ」
クリルたちには、異世界人であることを隠した。
南ア密林地帯で暗殺した、ザダール将軍との関係を伏せたかったからだ。
「ススム、タマーノ商会の野営地に到着しましたよ」
荷馬車の手綱を握るヒノは、荷台でお喋りに夢中だった俺に声を掛ける。
タマーノ商会の隊商は、カルディラの草原地帯にモンゴルの移動式住居『ゲル』のような大きなテントを張って野営しており、テントの周囲には、いくつかの荷馬車が停車しており、馬車馬が放牧されていた。
「我々はソンゴに立寄らないが、それでも良ければ、ご一緒しましょう」
「銀の棒貨5本しか持ち合わせがないのだが、それで足りるだろうか?」
「いやいや、ヒノが狩りの手伝いを条件に取引したのでしょう。仕事を手伝ってもらえば、棒貨は要りません」
双子の父親ヤハエ・タマーノは、俺の頼みを快く引き受けてくれた。
「力仕事なら任せてくれ」
こうして俺は、ヒノの口添えでタマーノ商会の隊商に同行させてもらえることになった。
タマーノ商会の隊商規模は、双子の親族と思われる獣人族の従業員が総勢20人、荷馬車が5台、騎乗馬が4頭。
双子の荷馬車は兵装されていなかったが、他の荷馬車4台には、捕鯨砲のような大きな銛の装填された大型弩砲が前後に設置されている。
「ンラ砂漠には、ドラゴン級の魔物が住んでいます。バリスタは万が一、ドラゴン級の魔物に襲われたときに使用するのです」
ヒノは、大型弩砲を見上げている俺に言った。
ンラ砂漠には流砂地帯があり、大型の魔物は流砂に身を隠している。
隊商は流砂地帯を避けてラファトを目指すので、余程のことがなければ、ドラゴン級の魔物と遭遇しないらしい。
「ところでススム、触覚Lvはいくつですか?」
「五感の項目は、基礎Lv1のままだ」
「能力限界に余裕があるなら、触覚をレベルアップして、暑さ耐性を上げた方が良いですよ」
「暑さ耐性?」
ヒノの説明では、五感の触覚Lvをアップすると、暑さ寒さに対する耐性が向上するらしい。
砂漠を渡る隊商の彼らは、必須ではないものの、五感のうち触覚Lv3を取得しており、灼熱の砂漠でも快適に過ごしている。
「そう言えば、冒険者ではないヒノは、どうやってドッグタグを使わずに魔力を振分けている」
「冒険者には必須アイテムだから、ギルドで配っているみたいだけど、冒険者じゃなくても、ドッグタグは買えますよ?」
ヒノの見せてくれたドッグタグには、名前だけ書かれており、称号が記載されていなかった。
冒険者のドッグタグには冒険者用と別に、民生用のドッグタグもあるらしい。
「民生用のドッグタグには、称号がないのか?」
「冒険者は、ギルド職員がチェックするので称号が表記されますが、僕ら商人には、称号を提示する必要がありません」
ヒノは『ですが−−』と、人差し指を立てて話を続ける。
「他人のステイタスを開示できる判定魔法では、僕の称号も表示されます。だからドッグタグに表記されなくても、称号自体はあるのでしょう」
冒険者ギルドのレムの魔力判定では、水晶に称号が浮かび上がっていた。
つまり民生用のドッグタグでは表記されないが、冒険者のドッグタグでは、判定魔法を取得していないギルド職員のために、称号の表記が必要なのだろう。
「ススムは、ドッグタグを持っていないのですか? 無いのであれば、銀3本でお売りしますよ」
「いや、持っている」
俺は、ヒノと別れてからステイタスを表示する。
能力限界の閾値は、5回ほど超えているのだが、項目毎に必要な魔力量が違うので、単純にレベルを5段階上がられるわけではない。
「さて、どの項目が増えているのかな」
ヒノのアドバイスでは、五感のうち触覚Lv3まで上げれば、砂漠の熱波にも耐えられる暑さ耐性が入手できるらしい。
スキルツリーを確認すると、取得できる魔法の項目は、一つも増えていなかった。
「判定魔法Lv1は、カルディラの草原地帯で吸収した魔力では、上げられないようだ。もしかすると魔法の項目を増やすには、魔力以外の条件があるのだろうか?」
俺は、とりあえず触覚Lv3にしてみた。
五感Lv4→基礎Lv1 −視覚Lv0
−聴覚Lv0
−嗅覚Lv0
−味覚Lv0
−触覚Lv3 −痛覚Lv0
スキルツリーを操作して触覚Lv3にすると、新たに痛覚の項目が表示された。
ザンザの取得魔法には、痛み緩和の項目があったが、この痛覚の項目をレベルアップすることで、痛み緩和が取得魔法に追加されるのではないだろうか。
「試してみるか」
俺は痛覚Lv2までスキルアップしてから、改めてステイタスを確認した。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
東堂進(Lv12)
称号:エクスフィアの英雄殺し
身体能力:肉体Lv2(基礎Lv1/脚力Lv1)/五感Lv6(基礎Lv1/触覚Lv3/痛覚Lv2)※痛覚Lv5で【痛み緩和】永続魔法の取得可能
取得魔法:万能翻訳魔法Lv2MAX※永続/判定魔法Lv1
固有能力:鷹の目Lv2※30メートルまでの弾道を可視化する
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
やはり痛み緩和魔法の項目は、痛覚をレベルアップすることで得られる。
そもそもエクスフィアでは、どんな魔法が使えるのか解らないが、身体強化に類する魔法は、特定の身体能力をスキルアップすることで、魔法として項目が追加されるようだ。
明日からは、ンラ砂漠編です!
( ╹▽╹ )〈ブクマしてね♪




