ソロプレイヤー
カルディラ周辺の草原地帯。
俺はザンザにもらった水と食料で朝食を済ませると、ギリースーツで作ったテントを畳んだ。
これから迷いの森で遺跡『霧の塔』を探すか、それともンラ砂漠の先にあるドワーフの村『ソンゴ』を目指すべきか悩んでいた。
北東方面を見れば、視界いっぱいに広がる深い森である。
道案内もなしに広大な密林地帯を歩いて、遺跡まで辿り着く可能性が低ければ、旅慣れた隊商に同行しても一週間かかる砂漠地帯を単独で渡り切るのも不可能だ。
「迷いの森には、ゴブリンがいるのだから、霧の塔を探すにも装備を揃える必要があるな」
独り言ちる俺は、魔物を狩りながら南に向かうことにした。
武器屋のクレベールは、ソンゴに行くなら獣人の行商に同行しろと言うのだから、ンラ砂漠に行けば、砂漠の行商人に出会えるからだ。
霧の塔を探して一刻も早く原隊復帰したいところだが、手持ちの残弾では、すぐに撃ち尽くしてしまいそうだし、どこにあるのか解らない遺跡を目指すより、そこにあるソンゴを目指した方が良いだろう。
「あれが、ザンザの言っていたスライムだな」
歩き始めた俺の前方には、人の背丈ほどある半透明のオレンジゼリーが草地を這い回っていた。
スライムの足元をみれば、アメーバのように広がった触手が、草原の羽虫や土を食べながら、ゆっくりと進んでいるようだ。
「呪文の表示されない魔法は、意識すれば無詠唱で発動するらしい。せっかくの機会だから、レベル判定を使ってみるか」
取得した判定魔法Lv1を意識して発動すると、スライムの頭上に『Lv8』と浮かび上がる。
レベル6の俺より、血を這うスライムの方がレベルが高いらしい。
ザンザはスライムでも狩って、称号を変えろとアドバイスしてくれたが、ゼリー状の体をコンバットナイフで斬り付けても、ダメージが与えられるのだろうか。
「人型のゴブリンと違って、どこを攻撃して良いのか解らん」
スライムは手足がなければ、顔もないので、何処を見ているのかすら解らない。
しかしテレビゲームのスライムは、棒で叩いても倒せる最弱の魔物である。
レベル20前後のゴブリンを瞬殺した俺が、たかがスライムに負けるとも思えない。
「こんなとき隣にペルカがいてくれたら、対処方法が解るのに……。とりあえずナイフで斬ってみるか」
背負っていた荷物を下ろして身軽になると、スライムに駆け寄って、正面に構えたコンバットナイフを横に振り抜いた。
スライムは斬られるまで、駆け寄った俺に気付いていなかった。
どうやら視覚がないらしい。
「シューッ! ブシューッ!」
ナイフで斬られた傷口から、ドロリとした体液が流れ出たスライムは、足元に小さく開いた器官から、空気の漏れるような音を出す。
このまま体液が全て流れて、あっさり絶命するのかと思ったが、それほど簡単に倒せないらしい。
体液は空気に触れると粘度が増して、傷口が修復される。
しかしスライムからの反撃は、足元からアメーバ状の触手を伸ばして捕食しようとするのだが、バックステップで簡単に躱せた。
斬る、バックステップ、斬る、バックステップを繰り返すと、その都度、体液を失うスライムは小さくなっていく。
「こいつは、半熟のゆで卵を相手にしている気分だ」
大型犬くらいの大きさになったスライムが光り、キンという金属音がして、全身を硬化させて動かなくなる。
そしてスライムの発光がおさまると同時に、俺のドッグタグが光ったので、倒した魔物からの魔力吸収でレベルアップしたようだ。
「こんな弱い魔物を倒しても、能力限界を超えるのか」
俺はレベル6であり、レベル8のスライムは格上の魔物である。
スライム程度でレベルアップするのだから、それだけ俺の能力限界の閾値が低いのだろう。
「砂漠地帯を目指すなら、魔力は身体能力の強化に振分けた方が良いな」
肉体Lv2→基礎Lv1 −腕力Lv0
−脚力Lv1
−素早さLv0
−全身硬化Lv0
スキルツリーを呼び出した俺が、スライムから吸収した魔力で脚力をレベルアップすると、その他の項目はレベルアップできなかった。
スライムから吸収できる魔力は、その程度なのだろう。
それに今回は、取得できる魔法の項目が表示されなかった。
つまり身体能力の強化より、魔力を覚える方が魔力を必要とする。
それに能力限界を越えたとしても、取得できない魔法は表示されない。
「自身のレベルアップは、身体能力だけを上げると早いが、高度な魔法が覚えられない。同じレベルの冒険者でも、多くの魔法が使える冒険者の方が、多くの実戦を経験している。これは覚えていた方が良いな」
能力限界を超えても、安易に身体能力ばかり上げるのは控えよう。
もしかすると、もっと有益な能力や魔法を覚えられるかもしれないからだ。
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東堂進(Lv7)
称号:エクスフィアの英雄殺し
身体能力:肉体Lv2(基礎Lv1/脚力Lv1)/五感Lv1
取得魔法:万能翻訳魔法Lv2MAX※永続/判定魔法Lv1
固有能力:鷹の目Lv1
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俺はステイタスを確認してから、ダッフルバックを背負って、ンラ砂漠に向かって歩き始めた。
脚力レベルを上げた恩恵で、少しだけ足取りが軽くなった気がする。
今日は、あと2回更新するよ!
( ╹▽╹ )〈お楽しみに♪




