9.わたしだ
―――――少し前
「ええ?!勇者?!」
小林と魔王は抱きついて驚いていた。
「勇者がもうすぐ・・・到着・・・しま・・・す」
充電しながらのせいか、ロッドはたどたどしい返事をする。
「不味いでござるよ!今勇者が来たら血の気の多い部下たちが戦いを挑み、多数の犠牲と拙者の目的が遠のくでござるよ!」
幾度となく攻め入ってくる勇者にも魔王は非暴力的な解決を望んでいるようで
「お前の理想はわかったけどよ、思いが伝わらない相手にいくら伝えようとしても自己満足で終えてしまうんじゃねえか?」
「ぐぐぐ、しかしでござるなコバ殿」
そんなやり取りをしている最中
ドコーーン!!
「壁に攻撃がはじまったようでござる・・・不味いでござる」
岩でできた洞窟の要塞とは言え、部下や魔王が防御壁を解いてしまっては一溜りもないだろう。
「おおい!魔王!聞こえているか!わたしだ!」
声だけでわかるイケメンボイスにゲンナリしながら小林は耳を傾ける。
「わたしは逃げも隠れもしない!明日の夕方にまた来る、その時にいい返事を期待しているよ!」
騒ぎ続けていた場内のモンスターたちの動きがやんだのか、静けさが漂っていた。
「今回は挨拶だけだったでござるか・・・、本当この勇者は傲慢すぎて苦手でござる」
「ちなみにどういう戦闘を・・・というか特技がある人物なんだ?」
「攻撃力はそんなに強くないでござる、なのでコバ殿に攻撃が来たとしても拙者の遠隔防御でノーダメージでござろうな」
「え?それだと恐れる必要なくないか?なんで今まで倒せなかったんだ?」
小林は不思議そうな顔をするがすぐさま魔王が困った顔をしながら
「・・・絶対防御を持っているでござるよ、回数は限られているが物理攻撃に対しての絶対耐性があるのでござる。本気で戦えばこちらもただでは済まないでござる・・・それこそ拙者の魔力が底をつきて軍の分裂を招いてしまうのが最も不味いことなので・・・」
「うーん、それでにらめっこ状態が続いてるわけか」
小林はトランクを漁り出す。
マジシャンのアタッシュケースとトランクケース好きはなんなんでしょう




