コロナのゆかこさん
銘尾友朗さん主催の「笑顔でいこう企画」参加作品です。
キラキラとした春の陽光を浴びて、ゆかこさんは春の公園を眺めています。
黄色の花をまぶしたレンギョウの枝、地面を覆う白いマーガレットのジュータン。
やわらかな黄緑色の葉っぱをつけた木には、ライラックの紫色の花が揺れています。
春ですねぇ、ゆかこさん。
桜も、もう満開を迎えたようです。
「ウィルスとの闘いも、もう終盤戦ね」
そうですね、ゆかこさん。ここが踏ん張りどころです。
夏の光が地球を殺菌消毒するまで、なんとか持ちこたえなくてはなりません。
ゆかこさんは空に飛び上がると、春の花々の色を絵の具にして、澄んだ青空に絵を描きました。
祈りを込めて、願いを込めて、持てる限りの気の力を絵の中に込めていきます。
ビュービューと吹きつける気まぐれやの春風が、ゆかこさんが描いた絵を次々と世界中に届けていきます。
集中治療室の中で、独りで頑張っていた女の子が、瞼の中にやってきた彩あざやかな絵を見て、ニッコリと微笑みました。しんどそうだった呼吸も、少し楽になったようです。
人工心肺装置をつけていたおじいさんは、光り輝く絵を眩しそうに眺め、強張っていた口元をふっとゆるめました。光の中ではおじいさんの大切な人が、優しい顔で待っています。
病院のロビーでうつむいていた若者が、何かを感じて顔を上げました。
町中の人たちが、声を出しながら建物から出てきて、春の空を見上げています。
「みんな、笑顔よ! 笑って顔を前に向けなさい」
本当にそうですね、ゆかこさん。
すべての人間が、自分の出来ることを精一杯やっているんです。
これでウィルスなんかが勝てるわけがありません。
笑顔でいこう
そう、笑顔で対処していきましょう
手に手を取って、スクラムを組めば、何にだって勝てるのです。
あちこちで芽吹いた春の種たちも、町の人たちの頑張りを笑って応援しているようでしたよ。
※「神社のゆかこさん」「~ふたたびの~ 神社のゆかこさん」の関連作品です。