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1. 私と先生が出会ったきっかけは、この街にはありふれた、とても些細なことだった

(ムーンライトノベルズでの加筆修正に合わせて、こちらも一部改稿しました。2019/12/27)(一部改稿しました。ストーリーに変更はありません。2020/12/7)

 

 私と先生が出会ったきっかけは、この街にはありふれた、とても些細なことだった。  



 夕飯の食器を片付けてリビングのソファに座り、私は独りでコーヒーを飲んでいた。夫は今日も残業で遅くなるらしい。見るともなくつけていたテレビのニュースが終わる頃、夫が帰宅した。

 着替えることなく玄関からまっすぐリビングに来て、私の前に立った夫は「おかえり」という私に返事もせず、開口一番にこう言った。


「離婚してほしい」


 夫の言葉に私は耳を疑った。私が唖然としていると、夫がさらに続けた。


「子供が出来たんだ」


 私は血の気が引くのを感じていた。そして、ああ、そういうことか、と妙に納得していた。

 表面上は夫婦円満だったはずの私達。やっぱり壊れていたんだ。




 春なのは暦の上だけで、外は酷く寒かった。

 地下鉄の駅から地上に出ると、街にたむろする人々の間には様々な言語が飛び交っている。英語、仏語、中国語を聞きながら歩く道の先には、今日も赤い東京タワーが見える。多分、明日も赤い。

 悲鳴のような酔客の哄笑と、絶え間ない喧噪に溢れた表通りを抜けて裏道に入る。私は足を速めた。いるはずないと頭ではわかっていても、気持ちが私を急かしていた。


 付き合っていた頃も、結婚してからも、何度も通った馴染みの店。星乙女の名を冠するそのお店「アストライアー」は、ライティングも音楽も落ち着きがあり、店員さんの対応も素敵なお気に入りの場所だった。軽食だが提供されるお料理はどれも美味しく、お酒の種類も豊富なので常連客も多い。

 ドアを開けて、ほどよく込み合った店内を見渡すが、待ち人はいない。バーカウンターの二席をとり、私はカクテルを注文した。若手のバーテンダーさんは他の常連客と談笑している。話しかけられたくない今日の私には都合が良い。いつも通り物静かな初老のマスターが、しなやかな手つきでシェイカーを振り、グラスに青と水色のグラデーションを満たしていく。

 来る。俊彰(としあき)はきっと来てくれる。


 今日は結婚記念日。私達が付合い始めた日でもあり、この日は必ず毎年ここに来ていた。

 俊彰とふたりで迎えるはずの記念日を、私は最悪の気分で過ごしている。


 私、林原(あずさ)は、この街にありふれた平凡な会社員で、都内の私立大を出て総合商社の事務職に就き、仕事もそつなくこなしている。

 大学生の頃にバイト先で出会った二歳上の俊彰と、五年付き合って結婚した。その頃の俊彰は契約社員で、両親は難色を示したが、結局反対を押しきって入籍した。

 二人の収入を合わせてようやく年収800万円程度なのに、わざわざ広尾の賃貸マンションで暮し、大学時代の延長のように週末は気ままに遊び歩いていた。

 私よりもあとに結婚した友人に子供が生まれても、祝福こそすれ羨ましいとは思わなかった。まだ遊んでいたい。それは俊彰も同じだと思っていた。一週間前、俊彰から離婚したいと告げられるまでは。




「ねぇ、おねえさん」

 考え事をしているところに突然肩に手をおかれ、私はビクッと震えて振り返る。そこには待ち人ではなく、にやけた顔をした若い男性が立っていた。

「誰か待ってんの?」

 そう言って私の隣に座る。そこは俊彰のために空けてあるのに、なんて馴れ馴れしいんだろう。

「来ないんでしょ?もう、いいじゃん、俺らと飲まない?」

 俺ら、という言葉にひっかかって視界を広げると、私を挟むようにもうひとり男が立っているのに気づいた。いつから見られていたんだろう。二九歳にもなると、ナンパなんてただ面倒くさいだけだ。

「ごめんなさい」

 一言だけ言ってはぐらかそうとしたが、存外男は食い下がってきた。

「じゃあ、来るまで俺らと飲もうよ」

 来ないんでしょ?と見透かされている気がして苛ついた。そのにやけた馬面に水をかけてやりたい。

「こっちのテーブルにおいでよ」

 もうひとりの男が背中に触れてきた。気持ち悪い。ここのマスターは客同士のやりとりには極力口を出さないが、さすがに助けを求めようとした時、入口の方から低い声がした。


「やあ、待たせたね」


 声の主は、彫りの深い整った顔に、ネイビーブルーのスーツがよく似合う三十代前半位の男性だった。顔立ちのせいなのか何なのか、目付きがすこぶる悪い。肩に届く程の長い黒髪がいやでも目を引く。そして、横の男達より頭二つ分は高い身長と、均整のとれた逞しい体躯。


 こんないかつい人なら威圧を与えるのに言葉はいらないだろう。

 どう見ても極道です。

 本当にありがとうございました。


 その人が私に近づき、手を差し出して立つように促す。導かれるように、その手を取った。

 どこからどうみてもヤのつく自由業だが、さっきのこの人の声がとても優しかったから、何故かわからないけれど信用しようと思った。


「私の連れに何か用だったかな?」

 その人が低い声で凄むように言い、鋭い眼光を男達に投げると、彼らは「いや、何でもないです」と蚊のなくような声で引き下がり、もといた席へ戻っていく。


 その人はカウンター内に視線だけ向けて言った。

「奥、連れていっていい?」

 滅多に表情を変えないマスターがにっこりと笑っていた。




 奥とは個室のことだった。

 カードキー式の鍵を開けて入ったそこは、黒を基調にした上品な部屋で、ライトは明るめ。二人掛けの革張りのソファが向かい合わせに置いてあり、少し高めのテーブルには赤いクロスが敷いてある。窓はないが、壁には立派な額に入った風景画が飾られていた。絵画の反対側は書棚で、黒いガラスなので中身はわからないが、分厚い本が並んでいる。


「こんな部屋があるなんて知らなかった……」

 私は、ぼんやりしたまま入口に立っていた。その人は慣れた様子でさっさとソファに腰をおろす。


「さっきの奴ら、何度か同じような場面を見てたんだ。目に余ったもので」

「はあ……」

 何度か見ていたということは、この人もこの店の常連なのか。でも会った記憶はなかった。こんな目立つ人、覚えてないわけない。もしかしたら、いつもこの個室を使ってるのだろうか。


「……余計な事だったかな?」

「いえ、とんでもないです。しつこくて困ってたので。ありがとうございました」

 あわてて頭を下げて御礼を言う。

 そのとき誰かが扉をノックした。彼が「どうぞ」と声をかけるとマスターが入室してきた。ウィスキーのロックと、カクテルグラスの載ったトレイを手にしている。

 いつもフロアにいる女性の店員さんが、おしぼりと、ナッツの入った皿を持ってきて丁寧にテーブルに置き、すぐに出ていった。


「タイミングが良かったから、先生にお任せしちゃってすみません」

「もう出禁にしたら?」

「そうします。ではごゆっくり」


 短い会話の後、マスターが退室すると、彼は私に「座らないの?」と問いかけた。

 立っている理由もないし、とりあえず作り直してもらったカクテルを飲まないのも失礼だと思い、向かいのソファに座った。


 先生?先生ってアレ?時代劇の「先生!お願いします!」の用心棒的なアレ?なんか高そうなスーツ着てるし……靴ピカピカだし、やっぱりヤ……の人だな……内臓売り飛ばされたらどうしよう……。


 眉が太めで、派手な顔は私の好みじゃないけど、とても綺麗に整ってる。ウィスキーグラスを持つ指が長くて美しかった。

 私は何故かその人から目を離せないまま、カクテルグラスに口をつける。


 あんまり見ていたので、その人が笑い出した。

「君が何を考えてるか、だいたい想像つくよ」

 笑うと可愛いので少しびっくりした。

 彼はグラスをテーブルに置くと、ジャケットの内ポケットから黒革の名刺入れを出した。そこから一枚取り出して、私の方へむけて滑らすように差し出してくる。


 名刺には――『鳥居坂法律事務所』『弁護士 桐木敬也(きりきたかや)』――と書いてあった。


「……きりき、さん、この名刺は本物?まさか、そのスーツはトム・フォード?」

「いや、ブリオーニだ」


 イタリアのブリオーニ?トム・フォードよりお高いじゃないの。間違いない。極道だわ。


「トム・フォードは細身で俺には似合わないんだ。それとひとつめの質問に答えると、この名刺は本物。資格の無い者が弁護士を騙ると、法に触れるって知ってる?」

 そう言って彼はまた面白そうに笑った。


「え、すみません……てっきりその筋の方かと」

「仕方ない。こんな成りだから、たいてい初対面の人にはヤクザだと思われるし、面倒な時は否定しない。勘違いされてた方が便利な時もある。さっきみたいにね」


 かなり失礼な事を言ったのに、彼は笑って受け流してくれた。

「それでマスターに先生って呼ばれてたんですね」

 すっかり気が緩んで、私はソファに背を預けた。


「じゃあ桐木先生、相談料払うんで、お話聞いてくれます?」

「うちの事務所は、初回の相談料は無料。ただし三十分。俺では役に立てない、と思ったら十分で打ち切る。それでよければ」

「わかりました。では、お願いします。私はさっきまで夫を待ってたんです……」


 そうして身の上話を聞いてもらう事になった。



 一年前、私は妊娠し、残念ながら早期流産した。

 自然流産ではなく稽留流産だったので、手術が必要だった。術後の激痛と流産してしまったという悲しみで、病院のベッドの上で苦しんでいた私の横で、俊彰が病室に備え付けのテレビをつけたときは、さすがにひどいと泣きわめいた。

 ……それから俊彰は私に触れなくなってしまった。


 セックスレスになっても、私はあまり気にしなかった。仕事も忙しかったし、もともとセックスがそんなに好きではなかったし。子供が欲しい気持ちは皆無ではなかったけれど、俊彰が「まだ二人だけでいいよね」と言うから、またそのうちでいいかと思っていた。

 夫婦生活がなくなっても俊彰とは、週末デートもするし、仲良く一緒に暮らしていた。

 そう思っていたのは私だけだったのだが。


 この半年程、俊彰の帰りが遅かったり、出張が増えたりしても、仕事を頑張ってるんだなとしか考えてなかった。以前はやってくれていた夫担当の家事をしなくなっても、そんなに気に留めてなかった。小言を言うと、「ごめん、忙しくて」と謝るので、許して私が代わりにやっていた。

 単に俊彰は私との共同生活を放棄していただけなのに。

 会話も減り、週末外食しても話題がなかったりして、さすがの私も違和感を覚え始めた。


 そして、一週間前、俊彰が全てを話した。

「同僚と浮気していた」「その子が妊娠した」「その子と結婚したいから、梓と別れたい」

 自分の言いたい事だけ言って、テーブルの上に署名捺印済みの離婚届を置いて家を出ていこうとしたので、私は「話し合いたい」と言った。けれど、俊彰はそれを無視すると、それきり家に帰ってこなかった。



「お義母(かあ)さんに一度電話したんですけど、どうやら実家に帰ってるみたいです」

「夫有責か……。しかも、不倫相手が妊娠……」

 桐木先生はそこで言葉を切ると、髪をかきあげて笑った。


「自分からべらべら喋るなんて、びっくりするほど馬鹿だな、君の旦那さん」

「えっ?!」

「それか、君が馬鹿にされてるか、だ」

「私が……馬鹿にされて……る……」


 ああ、本当に馬鹿だ。今日、ここに来てくれるかもなんて、妄想もいいところだ。とっくの昔に私達の関係は破綻していたのに。喧嘩になるのを避けて、俊彰の態度の変化から目をそらしていた私。付き合って五年、結婚して三年、計八年も経てば、人も環境も変わるのに、何にも成長してなかった私。


「その不倫相手の事はどこまで知ってる?」

「名前は聞きました。神代早苗(かみしろさなえ)。夫の会社の後輩とかで、一度会ったこともあります」

 私の会社(うち)の飲み会と、俊彰の会社の飲み会の場所が偶然近くで、街でばったり会ったのだ。その時に紹介された同僚のうちの一人で、若くてとびきり美人だったので覚えている。


「どうしたいの?」

「わからないんです。でも離婚しかないな、とは思ってます」

「財産分与は?慰謝料は?」

「そんな……わからないです」

「あんた、この一週間何やってたんだよ!」

 呆れるように言われ、少しムッとして言い返した。

「あんた呼ばわりしないでください」

「失礼、……林原さん。今は相談中だったな。口が滑った」


 ……この一週間、私はただただ俊彰が帰ってくるのを待っていた。

 食事もせず、眠ることも出来ず、でも会社には行って、休憩のたびに俊彰に電話をして。そのうち電話も繋がらなくなった。夫の実家に繋がったのは一度きりで、そのあとはずっと留守電だったから、メッセージは残さずに切っていた。


 馬鹿だな、本当に。


「何やってたんだろう……」

 自分が馬鹿すぎて辛い。

 自覚したら、涙が溢れ出てきてとまらなかった。

 俊彰に離婚したいと言われてから初めて、私は泣いた。




 みっつめのおしぼりで顔を拭いた頃には、涙もとまって、そして化粧もボロボロだった。俊彰に会えるかもと思って気合入れてメイクしたから落差は酷いものだろう。

 桐木先生は、私の隣で無言でグラスを傾けている。


「えーと、なんで肩に手があるんでしょう」

「泣いてる女を慰めてるだけだが」

「にしては近すぎません?」

「元気が出てきたようで何よりだ」

 桐木先生はふっと笑って腕をほどいたが、相変わらず隣に座っている。

「お、落ち着かないんですけど……」

「そのうち慣れる」

「はぁ……」

 お互いしゃべることなく一分位経って、私が桐木先生に向かって叫んだ。


「いや、慣れませんよ?!」


 すると、桐木先生は心の底から面白いものを見たとばかりに笑い出した。ひとしきり笑ってこう言った。

「あー久しぶりに笑った。いいよ、一緒にやろうか」

「はい?何をですか?」

「何って慰謝料請求だよ。馬鹿旦那と不倫相手の二人にね。やるなら調停でも裁判でもいい」

「え?二人に?」

「俺は負ける裁判はしない。そして、儲かる仕事は断らない」


 すぐ近くに桐木先生の顔。さっきまでと違う顔。

 獲物を見付けた獣のような表情をしていた。心臓がびくんと跳ねた。


「着手金はいらない。君のその素っぴんで充分おつりがくる。次は事務所で話そう。来週の月曜、十九時は空いてる?」

 桐木先生はいつの間に取り出したのか、黒いエルメスの手帳を開き、矢継ぎ早にそう問いかけきた。慌てて自分のバッグから、書店で買ったファンシーな花柄の手帳を出して答える。

「あっ、空いてます!」

「よろしい。では事務所で」

 右手を差し出されたので、私は少し躊躇いがちにその手を握った。





 名前を告げて受付で待っていると、中から若い男性が現れた。

「林原梓様ですね、お待ちしてました」

 榊と名乗ったその男性が、面談場所へ案内してくれた。

 雑居ビル二階の全フロアが事務所のようだった。面談ブースは四つで、二つは埋まっている。完全に個室だが、ドアや壁は全面が磨硝子なので、中に人がいる様子は廊下からでもわかるようになっていた。

「桐木はすぐに参りますので、しばらくお待ちください」

 榊さんは、笑顔の明るい、感じのいい人だった。座って待っていると綺麗な女性がお茶を持ってきてくれる。御礼を言うと微笑んでくれた。皆さんの対応が優しくて、おかげで緊張が少しほぐれた。法律事務所なんて初めてだし、これから調停とか裁判とか何だか難しそうな話をするのかと思うと、必要以上にビクビクしていたから。勢いで約束したけれど、良さそうな所だなあと思っていると、低い声が聞こえてきた。


「やあ、待たせたね」


 この前と同じ台詞。でも今日は本当にこの人を待っていた。

 クラシックなウインドウペインチェックのスーツがこんなに嫌みなく似合っている人、見たことない。私は立ちあがって深々とお辞儀をする。

「桐木先生、本日はよろしくお願いします」



 私達は、先日話した事から、さらにいくつか付け加えて確認した。

 財産分与の方法、具体的な慰謝料の額。私の場合、有責配偶者は明らかに夫で、夫が話し合いに応じなければ家庭裁判所で調停できること、それでもまとまらなければ裁判になるが、ほとんどの場合、裁判にはならないということを聞いた。榊さんは横で書類(メモ)を整理している。


「何か質問は?」

「あの……調停になる前に夫と話がしたいんですが……」

「調停離婚ではなく協議離婚がいいって意味?」

「えーと、多分。はい」

「君の旦那が応じてくれれば話し合い出来るが、連絡がとれないんだろう?」

「……はい」

「やめておけ」

 私は黙るしかなかった。俊彰は話し合いなんか望んでない。私に会いたくもないのだろう。

 俯く私に榊さんの声が聞こえる。

「一応、代理人(こちら)から呼びかけは出来ますよね」

 私がぱっと顔をあげると、桐木先生は嫌そうな表情をしていた。

「時間の無駄だ」

「先生、そうおっしゃらず」

「話し合って再構築出来るなら価値もあるだろうが、聞いてる限り旦那にその気はないだろう。会社宛てに呼び出しも出来るが、それで社内不倫がバレて社会的制裁を受けたとなれば、とれる金が減る」

「あのー……先生の金勘定より、林原さんのお気持ちも考えて……」

「無駄無駄。どうせ来ないよ。それより実家の住所でさっさと申し立てして、強制的に裁判所に呼び出せばいい」

 桐木先生が心底面倒そうに手を振る。


「それとも、未練がましく縋りたいのか?捨てられた理由が知りたいのか?それを聞いてどうする?余計に傷つくだけだろう」

「縋るつもりはありません。捨てられたとか、そんな言い方しないでください。これから私が捨てるんですから!」


 一息にそう言い切ると、桐木先生と榊さんが固まった。しまったと思っていたら、ふわっと桐木先生が笑った。

「なんだ、根性ついてきたな」

「開き直っただけです」

「めそめそしてるよりはマシだ」


 桐木先生は目を伏せて万年筆を置くと手を組んだ。


「わかった。旦那が話し合いに応じるならそれでもいい。勿論、その時は俺が同席する」

 口の端だけをあげて笑う桐木先生は、凄絶な程に美しく見えた。




 翌日、会社から帰ると家に明かりがついていた。

「俊彰……?」

 私はひどく動揺した。あとから思えば、すぐに桐木先生に連絡するべきだった。でもこの時は俊彰の事しか考えられなかった。


「俊彰、帰ってきたの?」

 力一杯に玄関ドアを開けて、家に飛び込む。泣きそうになりながら。

「俊彰!」

 リビングのドアを開けた私を出迎えたのは計四人の男女だった。


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