〜洞窟〜
「俺とヒナの職業は、俺がランサーでヒナが付与師だ」
「付与師って初めて聞いたな、レベルやスキルも見たいし、手っ取り早く全員ステータス画面を見せ合おう」
俺の提案に皆頷き操作を始める。最初からこうすればよかったとは思わない、自己紹介は大切だ。
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名前 エイ
レベル 8
職業 盗賊
スキル 【(P)盗む】【隠密】【投擲】【刺突】
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名前 聡太
レベル 9
職業 アーチャー
スキル 【火矢】【ダブルアロー】【狙撃】【遠視】
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名前 私は誰カナ?
レベル 9
職業 魔術師
スキル 【火球】【火柱】【ライトニング】【シールド】
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名前 Nasa
レベル 7
職業 侍
スキル 【(P)刀術】【一文字】【千本桜】【精神統一】
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名前 健
レベル 5
職業 ランサー
スキル 【(P)槍術】【2段突き】【覇気】【乱舞】
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名前 ヒナ
レベル 5
職業 付与師
スキル 【フルバリア】【呪術】【神聖陣】【凌駕】
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お互いのレベルやスキルを確認し、情報交換を終えると。健の提案により少し戦闘区域に行く事になった。行く先は街から最も近いゴブリンの出る草原エリアではなく、少し奥にある洞窟エリアという場所に決まり、直ぐに行動を開始する。
「そういえば聡太、どうやってそこまでレベルを上げたんだ?」
俺の問いに「あぁそれはね――」と説明を始める聡太。どうやら聡太とカナが遠距離攻撃でゴブリンをひたすら集めて紗凪の【一文字】を使い一撃で倒していったらしい。
道中は寄って来るゴブリンのみ蹴散らしながら洞窟へと辿り着く。
「うわっ!不気味だね〜、早くもリタイアしたいんだけど」
カナが愚痴をこぼすが、確かに不気味である。洞窟の周囲は霧に包まれ、ここから見る限りは真っ暗で何も見えない上に少し寒気がする。
「ちょ、ちょっとだけ嫌な感じがするわね」
「え!?ヒナ、もしかして怖いのか?」
「こ、怖くない!でも私は女だし後衛なんだから男で前衛のアンタが先頭よ!早く行けっ!」
カナが持つ杖よりも二回り程大きい、等身大程の杖の先端で健の背中をつっついて洞窟の方へと押し出す。
先頭は健で決まり次に紗凪、俺の順で前衛組が入り、聡太、ヒナ、カナが入ってくる。
真っ暗だったのを聡太がそこら中に
【火矢】を打ちまくり視界の問題はある程度解決した。
しばらく進むと、カチっカチっと言う音が火矢を燈代わりにしているだけの、薄暗い洞窟内に鳴り響く。
俺達は聡太の合図により停止。しばらく様子を伺う。
カチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチ
音はより一層多く、近付いて来る。
「来るぞ!戦闘準備だ!ヒナは【フルバリア】と【凌駕】を使って!カナは【火球】
を前方に撃ち込んで!」
聡太の指示により皆が一斉に行動する。ヒナの【フルバリア】はパーティーメンバー全員にバリアを張るものらしいが、どれだけの強度であるのか分からないため、少し不安だ。だが、【凌駕】は体感で分かる。これもパーティーメンバー全員に施す支援魔法だが、身体能力を強化するものだ。まだレベルが低い為か少し身体が軽い程度ではあるが。
聡太とカナのスキルが俺の顔の真横を通り過ぎ、前方へと向かう。【火矢】と【火球】により前方が少し照らされるとそこに見えたのは。
「骸骨……。スケルトンだ!」
健の叫びと共に敵の正体が判明した。数はおよそ50体以上、洞窟にしては広めの横幅いっぱいに広がり、カチッカチッと言う音が混ざり合い苛立たせるような、精神的に追い詰められるような。そんな不気味な音が鳴り響く。
「皆どいて!【ライトニング】!」
カナの掛け声により前衛組は左右に飛び退く。
バチバチッという豪快な音を奏でながら電撃魔法がスケルトンの群れへと炸裂するが。
どうやら単体攻撃魔法だったらしく、光の粒子となって消えたのは1体のみだった。
「一旦引こう!撤退だ!」
聡太の合図で後方へと走り始める。
遠距離での攻撃手段がある俺、カナ、聡太は時折振り向いては攻撃を加えていたが、一発で仕留められるのはカナの【ライトニング】だけであった。
「おい!出口が見えないぞ!道間違えたんじゃないか!?」
健の叫びだが、道を間違えるのは有り得ない、俺たちはずっと一本道を歩いて来た。
それに、地面には聡太の行きがけに放った火矢がまだ辺りを照らしている。だが、ふと前方を見ると、その火矢で作られた道が途切れている――。出口の光は見えない。
「聡太!前に火矢を!」
聡太は意図を察して直ぐに火矢を数本放つが。
止まった。宙に浮くように、停止している火矢……の様に一瞬見えたが、そこには存在していた。
――出口を塞ぐように存在する壁が。
「クソっ!どうなってるんだよ!」
皆が壁に辿り着き、扉を蹴ったり叩いたりしていると、後方のスケルトンに追い詰められる。
「私がやる!」
言うや否や、ライトニングを乱発する。洞窟に轟音を鳴り響かせながら何度も何度も撃ち込むが。
十数回撃ち込んだ所で、いきなり。
――プツッと糸が切れたような人形の様に口から血を流しながら倒れた。
おい、カナ?死んだ?嘘だろ。何が起きた?攻撃は見えなかった。なんで死ぬんだ。不可視の攻撃?次は誰だ?俺か、他のみんなか、いや違う。順番にみんなだ!敵は何処だ!なぜ見えない!
俺は取り乱し、心の何処かでこれはゲームだと、そう侮っていた自分を恨んだ。