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〜再会〜



ーーーーーーーーーーー


「えっくんってお前……紗凪(さな)か!?」


「えっくん!!やっぱりえっくんだ!そうだよ、紗凪だよ……えっくんっ!」


 須藤(すどう) 紗凪(さな)、俺の幼馴染であり、想い人でもある。俺と紗凪、そして聡太とカナはよく4人で遊んでいた。――小学校3年の時までは。


 まぁ深い理由は無い、ただ紗凪が遠くへ転校していったってだけだ。俺の想いは、小さいながらに強いものだったが、勇気が出せずに伝えられないまま転校して行ってしまい、以来そのまま胸の内に閉まっている。


「やっぱり紗凪か、全然気付かなかった……。でも、どうしてこんなゲームやってるんだ?ゲームやる方じゃなかったろ」


 成長して顔付きも変わっているが、想い人を前に気付く事が出来なかった自分を少し恥じる。それにしても、よく見るとびっくりするぐらい美人になったな。艶のある黒い髪は長く伸び、色白で細長い手脚は儚く、直ぐにでも消えてしまいそうな、そんな印象を受ける。



「このゲームは友達に誘われたから……それより、えっくんがいるってことは聡太くんやカナちゃんもいるの?」


「なるほどな、聡太もカナもいるよ。俺たちが泊まってる宿屋に向かいながら話そうか」


 俺が提案すると、「そうだね」と言って一緒に歩き始める。

 歩いている途中に色々な事を話した。転校してからの事だったりこのゲームについてだったり、職業やスキルについても。


 ただ一点。



 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()





ーーーーーーーーーーー


 俺達が宿屋に着いた後は、ジェネラルゴブリを倒したことによって得られた俺のゲーム内通貨で紗凪の部屋を借りた後は「また明日」と別れ、各自部屋に入った。


 その後流石に疲れ切った俺は再度シャワーを浴び、直ぐ様眠りについた。




 そんな俺が起床したのは、ドンドンと扉を叩く音と、カナの「(えい)!今何時だと思ってるの!いい加減起きなさい!」と言う母親の様なセリフだった。

 まだ痛む身体を無理やり起こし、扉を開ける。


「おはよう」


 闇に包まれたような、この世の絶望を感じたような、そんな重たい声で一言発すると、カナは顔を引攣らせながら俺の全身を見てからたっぷり数秒間の空けた後。



「ギャアアア!!出たああああ!」



 と、叫び、脱兎の如く逃げ出した。満身創痍の俺を見て心配するでも無く化け物扱いして逃げ出すとは……。


「だ、大丈夫?取り敢えずカナを連れ戻してくるから部屋で待ってて。事情は後で聞くよ」


 カナの叫びを聞きつけてやってきた聡太も、それだけ言うとカナの元へ早足で向かって行った。


 それからカナと聡太が俺の部屋へ来て、事情を話し終える。


「じゃぁ紗凪もこの宿屋に泊まってるんだ!どこの部屋?」


 と呼びに行こうとするカナを俺が引き止める。


「昨日あんな事があったんだ、俺の部屋は伝えてあるし、来るまで待とう」


 そう言うとカナはすぐに引き下がり、聡太は今日のプランを練り始める。


 それから1時間ほど経ったお昼時に。部屋の扉を叩く音が聞こえた。



「紗凪か?開いてるから入っていいぞ」


 ガチャ、と扉が開くと同時に「おはよう」と昼間にふさわしく無い挨拶と共に紗凪が入ってきた――。瞬間に「紗凪!」と紗凪に抱きつくカナの光景に、俺も聡太も笑みが溢れる。4人揃うのは本当に久しぶりで、懐かしく、暖かい気持ちが溢れてくる。





「紗凪、おはよう」



ーーーーーーーーーーー


 お昼時だったこともあり、みんなで昼食を取る事になり、宿屋にある食堂に集まる。

 ここの食堂はメニューが無い様で、みんな同じコロッケ定食だ。


「そういえば紗凪職業は【侍】なんだろ?スキルはどんなのなんだ?」


 食堂来る前に、既に紗凪のパーティー登録は済ませている。


「私のスキルは【(P)刀術】と【一文字】だよ。刀術の方は刀の扱いが上手くなって、一文字は横薙ぎの一閃って書いてある」


「なるほどなぁ」


 刀術のパッシブスキルはかなりいいと思う、というより【侍】ってレアっぽいよな。普通初期職業は剣士とか戦士とかだと思うけど……。ま、機会があったらキラに聞いて見るか。


「そういえば影のレベルって今幾つなの?」


「あ、俺もまだ見てないや」


 聡太に返答しながらメニューウィンドウを操作する。


「レベル8……。3レベも上がってる」


「す、凄いね…昨日はあれだけ倒して5レベになったのに一体で5レベから8レベって」


(えい)……ずるい……」


 じーっと、カナに半目で見られるが、死に掛けて倒したおれの苦労も分かって欲しい。


「で、今日はどうすんだ?俺は今日は戦闘無理だぞ」


 カナの無言の圧力を無視して話を逸らす。


「そうだね、影はお留守番。まぁこの時間は人目も多いし出歩いても大丈夫だと思うけど。何かあったらすぐに連絡してね」


「分かった」




ーーーーーーーーーーー



 その後は適当な雑談をしながら飯を食べ、3人と別れた俺はまず武具屋に行く事にした。


 武具屋で昨日買ったものと全く同じ物を買った後適当のフラフラしていた時。



「やぁ、また会ったね、今日は一人かい?」



 突然後ろから声をかけられた俺は少しビックリしたが、それを表に出すことなく平然と対応する。



「キラか、お前の言っていた【ネーム】と交戦して負傷したから今は一人だ」


「【ネーム】と交戦!?良く逃げ延びたね……でも良かったよ、倒そうなんてバカな考え起こさないでもらって」


 キラはふぅ、と心底安心した様な顔付きをするが。



「すまないが俺は()()の様だ。それより、そのネームと夜に交戦したんだが、他のモンスターが見当たらなかったのは偶然か?」


「なら君は倒して生き延びたと言うのかい!?驚いたな……君たちのパーティーは将来有望株だな。それとその情報は君達の勇姿を称えて無料で提供しよう。そう、君の考えている通りだと思うよ。ネームが出現した付近ではモンスターが一定時間POP(ポップ)しないようになっている」


 キラはまだ勘違いしているようだが面倒なのでそのままにして置く。

 しかしなるほどな、なら敵がいないのであればネームが居ると考えて警戒すると事も可能か。


「ありがとう、だが、他にも聞きたいことがある。現在確認されているレベ職業は何か分かるか?あと、このゲームに即時回復手段はあるのか?」


「すまないがレア職業が何か、何がレア職業なのかは現在は分かっていない。それと、基本的にこのゲームでの即時回復手段は無い。――だが、温泉施設と言うのがある。身体的欠損は治せないが、君のその左腕くらいなら1時間も浸かっていれば治ると思うよ」



 即時回復の手段は無い……か。だが良いことを聞いた。


「温泉施設か。なるほど、有益な情報だったよ、幾らだ?」


「そうだね、4000Gでいいよ。いずれ知る情報だったと思うし。それよりもっといい情報を持ってるんだ、買わないかい?」


 4000Gか、高いのか安いのか分からないが、ジェネラルゴブリンを倒した事で俺の個人資産は50000Gだった、紗凪の宿屋代や飯、武具代を引いても40000G以上残ってる。


「そうか。いい情報と言われてもな。どんな情報だ?」


 俺の問いにキラは口角を上げ、こう言った






()()()()()()さ」






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