〜運命〜
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私は友人から勧められてこの-Reality-というゲームを始めたの。でも実際始めるとログアウト出来ないデスゲームだった。
絶望した私の前に現れた情報屋と名乗る女の子。この子は全部知ってると言った。当然私は警戒した、けど。話は全部聞いておこうと思って話だけは聞いてみた。
デスゲームはデスゲームだった。死んだら現実世界でも死ぬ。それは私の心を折るには十分だった。色々考えなきゃいけない。
初期装備と同様に、最初から持っている1000Gで宿屋を探してそこに篭った。
色々な事を考えていると睡魔は来るもので気付いたら寝てしまっていた。起きたのは1:30。ステータス画面で確認したのだけど。それから少し考え。
このゲームの製作者は何処かで見ている筈。きっと人々が争い合うのを楽しみながら眺めているのだと。確信めいた閃きが頭を過る。
そしてこのゲームが始まってからずっと考えていた事を決意する。
このゲームを壊す為に死ぬ事を。
死ぬと言っても自分で自分を殺すのは手が震えて出来なかった。だから、モンスターに殺して貰おうと思うの。
あの情報屋の女の子が言うには、夜はモンスターが強くなると言っていたし、この時間ならプレイヤーも疲れ果てて寝ている筈、戦闘区域に人はいないと思う。
私は迷いなく戦闘区域へ小走りで向かった。そして戦闘区域に着いてしばらく歩き回っていると、2メートルくらいの人型モンスターに出会った。容姿は暗くてあまり見えないけど、モンスターの頭上には半透明に青い字でジェネラルゴブリンって書いてあるのはハッキリと見えた。そして、雄叫びを上げながら少しずつ少しずつ近付いて来る。
一度は死ぬ決心をした私だけど、やっぱり死ぬのは怖かったらしい。逃げたいと思っても足が竦んで動けない。呼吸も荒くなって来て肩で息をするようになり、涙も溢れる。ジェネラルゴブリンがその手にある凶器を振り上げた時。
私の恐怖は最高潮を迎え、目を閉じた――。瞬間に。
「間に合え!!刺突ッ!!」
焦った様な、怒鳴った様な、そんな声が聞こえて目を開けた私はジェネラルゴブリンが振り返り、声の持ち主の方へと殺意を向けたのを最後に、直前の死への恐怖と一時的にそれから免れた安心感から私の意識は途絶えた。
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「…い、い……げ…おき…よ」
誰かの声がする…後5分だけ…寝かせて…
「いい加減起きてくれ…」
徐々に覚醒していく私の脳内は羞恥に満たされていき飛び上がる様に起き上がった。
「す、すいません!助けて頂いたのに後5分だけとか言っちゃって!!」
「あ、あぁ、後5分だけとは言ってなかったけどな…まぁいいよ、それより怪我とかないか?」
私の顔が真っ赤になるのが分かる。そして目の前の男性を見ると、盗賊の様な格好をしていた。だが、それ以上目立つのが。満身創痍。至る所から流血し、防具はボロボロ、そしておそらく元は端麗であったと思われる顔も酷く汚れている。
「私は大丈夫です!それより貴方の方が!」
そう言って寝かされていたベンチから立ち上がり男性の方へと近づく――が、何も出来ることは無いと悟った私は咄嗟に男性の顔の汚れを手で拭おうとした。
「うぉ!ビックリした…」
避けられた…
「汚れなら大丈夫だ」
と言って足を引きずりながら近くの噴水まで辿り着き、ジャブジャブと水で顔を洗う。そして、ボロボロの服で水分を拭き取り。
こちらを向いたその顔は――。
「えっくん…?」
幼馴染で、想い人でもある久慈道 影だった。