表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/9

〜始動〜



ーーーーーーーーーーー



(えい)っ!!今だ!!」



 俺は聡太(そうた)の合図に頷き、目の前の緑色の肌で右手には棍棒を装備し、凶悪な顔面をしているゴブリンの懐へと潜り込み、右手に装備してあるナイフを横薙ぎに喉元を掻っ切る。

 ゴブリンは声を発する事なく喉元から緑色の血液を噴き出しながら後方へと倒れると数秒後に光となって噴き出した血液ごと消え失せた。


 そして、レベルアップ音が鳴り響くが、わざわざステータス画面を開く事はない。このゲームにはステ振りという概念が存在しないし、スキルも現段階で増える事はない。



 「もう全然ドロップしないじゃん!乱数どうなってんのよ!!」


 「カナ、まだ5体目じゃないか。もう少し頑張ろうよ。ね?」


 パーティを組んでいる聡太とカナもレベルアップしているはずだが、気にも止めない。どうやら同じ考えらしいが……。


 喚くカナに聡太が優しく励ます。するとカナはほんの少しだけ頬を赤らめ「うん……」と俯きながら答える。



 「イチャイチャしてる所悪いが俺もいる事忘れんなよ」


 カナは「イチャイチャしてない!」と、より一層頬を赤らめながら反論してくるが。


 俺は適当にあしらいながら思考を移す。――あの後、情報屋であるキラから様々な情報を得た。まずこのゲームは始まりの町はいくつもありプレイヤーが分散している、そこと合流出来るかは現在は不明。俺達3人が此処に集まったのは偶然らしい。


 2つ目はレベルや職業、スキルに関する事で、レベルが5の倍数になるたびにスキルが2つ増える。そして20レベになった時、スキルは覚えることが出来ないが、上位職に転職出来る。

 そしてキラのレベルについてだが、職業別でレベルアップの方法が変わる、戦闘職が戦闘を行い敵を倒す事で経験値が得られ、レベルアップするのと同様に生産職は生産すればレベルアップする。そして情報屋は情報のやりとりをすれば良いと言っていた。無料の取引で経験値は貰える様だ。


 3つ目、始まり街は安全エリアでモンスターからの襲撃はないが、プレイヤー間におけるダメージは通るそうだ。そして――、プレイヤーを倒す事でそのプレイヤーの持っているアイテムの最もレア度が高い物を獲得する事が出来るらしい。PKを誘発するようなシステムに少なからず疑問を抱いたが、すぐに晴れた。





――ゲーム内で死亡すると、現実世界でも死ぬ。





 俺はこれを聞いた瞬間直ぐに分かってしまった。――あぁ、このゲームの製作者はどこかで眺めながらただ楽しんでいるのだと、だからプレイヤー間で争う様に仕向けたり、職業を選ばせなかったりと、混乱を招くような事ばかりやって来るのだと。


 そして俺は思う、キラの情報は正しいと。理由としてはスキルに【(P)情報収集】というのがあった点もそうだが、今話した情報以外にも色々な情報を話してくれた。

 そこに疑問はあれど矛盾は一切ない。そもそも偽の情報を無料で取引するメリットも無いわけだが。



 「とりあえず、今日は5レベになったら帰ろうか、PKが起こる可能性も考えて体力は残して置いた方がいいと思う」



 俺達は聡太の意見に賛同し、5レベになるまでゴブリン狩りを続けた。

 5レベになったのはそれから数時間が過ぎ、数十匹のゴブリンを駆逐した時だった。



 ピッピッっと機械音でレベルアップが知らされる。


 「あっ!やっとレベルアップだ!本当しんどかったぁ〜」


 カナが達成感のある声で言いながらその場で伸びをする。

 体力を残して引き上げるつもりがみんなかなり疲労困憊しているのも、予想以上に5レベが遠かったからだ、そろそろ暗くなってきた頃だ。「スキルは後回しでとりあえず街に戻ろう」と、少しやつれ気味の聡太の提案に俺のカナも首を縦に降り、街へ戻る事になった。


 そもそも何故俺達が危険な戦闘を行なっているかというと、このゲーム内でも餓死はあるという事、PKが起こる可能性があると言う事の2点である。ゲーム内通貨を稼げなければ、飯を食わなくては生きていけない、そしてPKから身を守ると言う意味も含めてレベルアップはしなくてはいけないのだ。






ーーーーーーーーーーー


 街へ戻るとカナの「お腹すいた……」と言う発言からまず飯屋で話し合う事になり、近くにあったファミレス風な店へと直行した。



 「さてと!な〜ににしっようっかなかぁ〜!ふふっ」



 謎のリズムを奏でながら楽しそうにメニューを見るカナと、その隣に座る聡太。そしてその向かいに座る俺。


 今日は相当な数のゴブリンを倒してきた俺たちだが、ドロップしたのはゴブリンの牙が5つだけだった、そのほかには討伐したら確定でもらえるゲーム内通貨が合計で36720G(ゴールド)である。

 このゲームはパーティーストレージというものがあり、パーティー全員が同じフィールドにいる限り、パーティーメンバーが倒し、ドロップしたものは全てこのストレージに入る。因みにリーダーはカナになった。立候補したからやらせているだけで深い意味はない。


 俺が思考を別次元へと移している間に二人は食べるものを決めた様だったので店員の呼び出しボタンを押す。



 「お待たせいたしました。ご注文は――。」と店員の呼び掛けに対し、各々が注文を終えると。数分もしないうちに料理が出て来る。



「早いな、てかお前はなんでパフェなんだよ、夕食だろ?」


 俺の指摘にカナは「疲れたら甘いものを食べるのは当然でしょ!?」と謎理論を当然の事の様に言って来るが俺には理解できない。因みに俺はハヤシライスで聡太はトンカツ定食だ。



「じゃぁ食べながら話を進めようか、まずは新しく取得したスキルを教えてほしい。僕は【狙撃】と【遠視】と言うスキルだった、説明しておくと狙撃は命中率の高い矢が放てる様になるのと、遠視はより遠くを見る事が出来るスキルだったよ」



 なぜ使ってもいないスキルの詳細が分かるのか、それはスキルの所をタップするとスキルの詳細が分かると情報屋教えてもらったからである。俺のスキル【(P)盗む】は、攻撃時一定確率で敵のアイテムを盗む、確率はレベルに依存と書いてあり、【隠密】に関しては一定時間姿を隠す、との事だった。



「うちは【ライトニング】と【シールド】で、ライトニングは電撃を放つ、シールドは前に障壁を張るって書いてあるわ」


「なるほどな、俺は【投擲】と【刺突】ってやつだ。投擲は俺の職業だと投げナイフの命中率が上がる、名前そのままだが、相手の背後から命中率させるとダメージが上がるらしい」


 おそらく【刺突】は【隠密】で敵の背後を取ってから使うのがベストか。

 





ーーーーーーーーーーー



 飯を食べ終えた俺達は結構な時間、雑談に励み武具屋によって装備を一新した後、適当な宿屋を探してそこに泊まる事になった。もちろん部屋は3人とも別である。

 装備は皆それぞれの職業に見合ったものしか装備出来ないため、各自の職業が他人から見ても分かるレベルでそれっぽい格好になってしまったのは仕方の無い事である。


 今日は疲れた。初日から色々考えて動き回って、寝るには少し早い時間だが、眠ってしまおうと目を瞑る――。


 だが、寝れない。



「聡太とカナはもう寝たかな」



 俺は話し相手を求め、聡太の部屋を訪ねるがもう寝ている様だった。次にカナの部屋へ訊ねるが結果は同じ。どうしようかと悩んだ挙句に宿屋に屋上があったのを思い出し、そこへ向かおうと思い立った――。


「やっぱり夜風は良いな」


 昔から夜風が好きで親の目を盗んで夜中に外出する事が多かった。結局は見つかって怒鳴られたのも今となってはいい思い出だ。


 ふと、メニューウィンドウに掲示板というのがあった事を思い出し、メニューウィンドウを呼び出す――。あれ、なんで、02:11なんだ?俺あの一瞬で寝てたのかよ……。と、自分に呆れるが直ぐに気を取り直して掲示板を探し出そうとした時。




 横目に見えたのは初期装備で黒髪の女性が戦闘区域(フィールド)の方角へ小走りで向かう後ろ姿だった。




 俺は少し女性の事が気になったが、掲示板を探し出し暇を(むさぼ)る様に閲覧している。


――だが内容は全く頭に入ってこない。あの女性は初期だった、ある程度レベルが上がっていれば必然的に所持金も増える、人にもよるが、大体の人はまず装備を整えるだろう。


 現に俺達が帰宅する頃には装備を買い換えている人達を複数人確認している。そして夜は視界が悪い上に、モンスターの()()が上がるらしい。その上あの女性は一人だった。何か考えがあるのか?助けに行かなくていいのか?もしかしたら本当に死ぬ事をまだ知らないのかもしれない。だが、俺は強いわけでも特別機転が利くわけでもない、そんな俺が助けに行ったところでただ一緒に死ぬだけじゃないのか?


 そんな思考とは別に身体は動いていた。既に彼女は見失っているが向かったの戦闘区域(フィールド)だ。走る速度を早め、念じる。



――間に合え、と



 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ