〜始まり〜
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――2042年VRMMORPGという新しいジャンルのゲームが発売された、発売当初は爆発的大人気で街の若者だけでなく老若男女すべてから圧倒的人気を誇ったが、翌年以降すぐに廃れていった。
理由は何点かあったが、最も大きかったのが動作不良が目立つ所である。プレイヤーがこうしたい、こう動きたいと思っても、動けなかったり別の動作をしてしまう場合が多々あり、それはRPGとしては致命的であったのである。
他には痛覚や視覚に関する問題点などであった――。
「だが!それら全ての問題点をクリアして世の中にVRMMORPGを復活せんとしているのが!天才研究員を何人も雇っているあの【(株)スワップ】が先日発売した -Reality-というゲームなのだよ!!君たちもプレイするなら最初から始めるべきなのだよ!!もう発売されたけどサーバー解放はまだなのだよっ!」
そう言い切ると共にキメ顔をするのは情報処理担当で担任でもある女教師の鈴木リンである
「ははは、またやってるね鈴木先生。――でも僕もまたやってみたいなMMORPG、影はどう?」
俺の名前、久慈道 影の名を呼んだのは幼馴染の工藤 聡太だ。
こいつとは現在の高校2年に至るまで昔からずっと同じクラスでもう一人の幼馴染からは奇跡のツーマンセルと呼ばれた事もある。
「やってみたいとは思うけど現実的じゃないだろ?」
現実的じゃないというのは問題点があると言う事だ、それに気付かないほど聡太はバカじゃない、というより聡太は頭が良い。学校での成績も常にトップだし。
時折異常な閃きを話して来ることもある。
「そ、そうだね、もう完売しちゃってるし、売ってても20万はきついよね」
そうだ、このゲームは高すぎる。いや、性能やらなんやらを加味して考えれば安いと思うが、ゲームとして考えるとやはり高いと感じてしまうこの感覚は普通だと思う。
フルフェイスタイプで、これはこのゲーム専用でゲーム機本体とソフト両方の役割を果たしている。
それに、この値段でももうどの店でも売り切れ状態らしい、オークションなどではとてつもない値段で取引されているらしいが。
どうやら聡太は結構本気でやりたかったらしい。
まぁゲームオタクって訳じゃないけど聡太も俺もゲームはそこそこやるからこいつの気持ちは分からんでもないが。
「そこのお二人さん!- Reality-やりたいんだね!?やりたいのだね!?」
興奮したように近ずいて来る担任はかなりのゲームオタクだ、いつも昼休みは教室にきて生徒と一緒にご飯を食べながらクラスのゲーマー連中と談笑するのが日課だ。
因みに今は昼休みでもなんでもなく――。
「まぁそうですけど、――今、授業中ですよ先生。」
「今日教える範囲はもう終わったからよいのである!そんなことより!今なら2万で手に入るとしたらどうかね?」
――担任はそう言ってニヤリと口角を上げた。
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俺は今、自分の部屋で時計と睨めっこの最中だ、日時は12時58分日曜日だ。
理由は簡単、待ちに待った-Reality-のサーバー解放日で、13時00分からログイン出来るからだ。
そう、俺と聡太はあの日担任からゲームを2万で買った、高校生にとって2万という額は大きいが手が出ないほどじゃない。
ただ、教師として生徒にゲーム売りつけるって大丈夫なのか?
しかも授業中に。
というよりなんで20万が2万になるんだ、楽しみすぎて宣伝に自腹切ってんのか?いやいや、それは幾ら何でも流石に……。あの先生ならあり得るか。
「おっと、時間だ」
俺は少し浮かれた気分でフルフェイスタイプの機械を頭にセットし、額にあたる部分に ある電源ボタンをONにした瞬間、視界が暗転した。
「ん、何も見えねぇ、このゲームもやっぱりバグあるのか。――てか開始早々にバグってちゃ先が見えないぞ」
少し落胆し一瞬目頭を押さえ目を瞑った瞬間、明るくなる様な感覚を覚え目を開けた。
見渡す限りの大草原で神々しさすら感じる、視界もはっきりとしている。
「すげぇ……」
「こんにちは、-Reality-の世界へようこそ!私はゲーム案内用NPCのシンディです!」
突然登場した金髪ロングのNPCに少しびっくりしながらもまるでアイドルの様な格好だという感想が即座に出てきた。
「まずはゲーム内の説明をさせていただきます!」
そう言って始めた説明はこうだ。
――この世界にストーリー、いわゆる物語などの設定はなく、プレイヤー自身が全てを自分で決め自分で行動する。
この世界はステータスという概念があまりなくあるのは、名前、レベル、職業、スキル、の4つのみステータス画面から見られる。
この世界は初期に3つの職業がランダムで選出され、その中から1つを選んで初期職業につく。なかにはレア職業やハズレなんかもあるらしい。
この世界は転職というものがあり、一定の条件を満たすと上位職に転職する事が出来る。
この世界は性別、容姿は現実世界と全く同じとなる。
「これで説明は以上です!ではキャラクターネームを決めてくださいっ!」
キャラクターネームか。――いつもの【エイ】でいいかな。どうやって自分の顔とかトレースしているのだろう?そんな疑念は後回しにする。
「【エイ】で」
「【エイ】様ですね、かしこまりました!では次に、職業を決めていただきますねっ!」
そういうと俺の前に三本の半透明なバーが横並びになって現れ、スロットの様に回り出した。
「これが止まって表示されたものの中から決めろってことか?」
待ちに待った職業選択だ!この情報は公式から配信されており、楽しみにしていた物の1つである。
ここでレア職業を引ければかなり有利に進められる。俺は自身の高まる鼓動を抑えつけながらバーを凝視め。
――そしてバーの回転が止まった。
「それではこの3つの中からお選び下さいっ!」
おいおいおい何が3つの中だよ。
こんなのありか?やり直しとか出来ないよな、出来たらこんな設定意味なくなるし。
落胆しながら俺は選んだ職業を宣言する。
「【盗賊】……で」
因みに俺の3つの選択肢はこうだ
・ハズレ
・ハズレ
・盗賊
まぁ世の中こんなもんだ、自分が特別に運がいいと感じた事なんて、聡太とずっと同じクラスになっているという事くらいなものだ。
にしても運が悪かったと思うが……
「盗賊ですね!かしこまりましたっ!では最後に2つの説明を終えたら始まりの街の宿屋に転送させて頂きます!実際にゲームがプレイできるのは13:30からとなっておりますので宿屋から出られませんのでご注意下さいねっ!」
なるべく全プレイヤーがスタートを一斉にして欲しいという事か?そうであればスタートと同時に大きなイベントが始まる可能性もある。ゲームが始まったらすぐに聡太と合流した方が良さそうだな。
「では1つ目の説明ですっ!転送後からはメニューと念じればメニューウィンドウが開く様になっています!これは他人から見えるようにも見えないようにも設定できますよっ!そして2つ目はゲームクリア特典の説明ですね!ゲームクリアの特典は【ログアウト機能の実装】です!これはゲームクリア者が現れた場合全プレイヤーに実装されますのでご安心を!それでは転送させていただきます!
デスゲームの始まりですよっ!」
取り付く暇も無く
俺の視界は暗転し
俺の
【デスゲーム】は
突然始まった。