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オーリック公国 11 報告会

 ◇ ◇ ◇



 そもそも、数百年前には、つまり現在のオーリック公国という国のひな型が出来上がる前には、それぞれのギルドは覇権を求めて争っていたのだという。

 ここでいうところの覇権争いとは、つまるところ、現在の公家に対する各ギルドの姿勢的な話だ。

 簡単に言えば、カルレウム家が取り敢えずの代表的な立場に就くことに対する、賛同と批判の2つの勢力間の抗争の事であり、各ギルドごとの独自のものではなく、国として機能するための法による統治を認めるかどうかという争いだったらしい。

 結果だけを見るのであれば、ジーナ公女、それにヴィンヴェル大公とミーリス様の存在からもわかるように、賛同派の勝利という形で一応の収束というか、決着はついたという事なのだけれど、批判派閥の人間が全員納得したわけでも、ましてや処刑されたり、他国なりへと逃亡してしまったわけでもなく、結果論的な言い方をすれば、大人しく、力を蓄えながら、潜んでいたという事なのだろう。

 抗争(あるいは戦争)という形での決着となった以上、現状に不満を持っていたとしても、そのことに関して公家に嘆願書、請願書などを出すわけにはいかない。

 

「このオーリック公国が成立してからはせいぜい数百年、そのずっと前から続いていた慣習はそう簡単に消えるものではなかったようです」


 鉱山から、公家の方々が暮らしているお屋敷に戻ってきて、夕食とお風呂を終えた後、僕たちは情報の交換をするべく集まっていた。

 部屋着の女性陣3人に対して、僕とクリストフ様、そしてジーナ公女にも是非にと誘われたヴィレンス公子の男性陣3人は、表面的には平静を装いつつも、なんとも居心地の悪さを感じていた。

 別に女性の部屋に訪れるのが初めてというわけではない。

 世の中には、家族、特に異性の家族に対して、洗濯物を一緒にしないでとか、部屋に入ってこないでとか、そんな感じの兄妹もいるという事らしいのだけれど、今のところ、シェリスがそのような態度を見せたことはなく、僕もシェリスの部屋でよくお茶をいただいたりするし、シェリスも僕の部屋まで来てベッドに寝転んだりしている。

 それはおそらくクリストフ様とシャイナも似たような事だろうとは思っているけれど、それとこれとは話が別だ。

 おまけに、目の前には、すでに春先と呼ぶには大分季節が過ぎているためか、かなり薄手のネグリジェを着た女の子、それも国で1番レベルの女の子が3人も、特にこちらを意識していないらしい恰好で座っている。

 ヴィンヴェル大公もいらっしゃるような場であれば、こうはならなかったはずだけれど、僕たちが身内だからなのか、意識されていないからなのか、それとも女性3人でいることにより警戒が甘くなっているのか、なんにしても、まじめな話をする場でなければむしろ感謝出来た光景だろうに、今はとても困っていた。


「それで、肝心の現在の対立を煽っているらしい人物についてですが――お兄様、聞いていらっしゃいますか?」


「聞いてるよ。聞いてる聞いてる」


 余計なことを考えていたことがばれていたらしく、僕が慌てて手を振ると、シェリスは『どうせ、シャイナのネグリジェ姿に見とれていたんでしょう』と的確なツッコミを入れてきたので、『シェリスの空色のネグリジェとハットもとても可愛らしくて素敵だよ』と返したら、何故だかもっと怒られた。


「――人物についてですが、皆さんの方で何か収穫はありましたか?」


 少し顔を赤くして、咳ばらいを1ついれたシェリスがぐるりと皆の顔を見回す。


「私が向かったのは下水道、道路、馬車組合などの管理を引き受けているギルドだが、ギルド長のニンヴィル氏は温厚な人物で、自分から混乱を引き起こそうとしているようには見受けられず、むしろ、各々が閉じ籠りがちになっているこの状況で困っている様子だった」


 馬車の利用は移動手段としての基本だ。

 それが『他のギルドが運営しているものだから』と、その比率はわずかなものではあったとしても、利用者に対して敬遠される可能性のある事態は避けたいところだろう。


「僕が向かったのは学院など、この国における教育や防衛を任されているというギルドです。評議会への参加率も高いという事で、思想的に他人へ促しをかけるには丁度良い機関だとは思うのですが」


 クリストフ様の言うように、宗教感の薄いところでは、教育というのは効果的な方法だとは思う。

 本の出版にもかかわっているという事で、情報のコントロールも容易く、はないかもしれないけれど、他のギルドよりは比較的楽に行うことが出来るだろう。

 

「しかし、学院や評議会と言えば誰もがその動向に注目していることでしょうし、もし不審があれば、他国の学院への留学なり、公家と――同じほどとは言い過ぎかもしれませんが、ある程度以上には世論の動向を受けやすいと考えられます」


 彼らにてしてみれば、この国で問題が起こるということそのものがギルドとしての彼らの崩壊にもつながりかねず、そもそも、国の体制を崩壊させたところでメリットがない。

 クリストフ様のお聞きになった話では、知識の探求には異常な興味を示すものの、それ以外、例えば支配権などには全く興味がない様子で、今回の件と関係させるには、あまりに動機が薄いとのことだった。


「勿論、僕の私見ですから、皆さんからしてみれば、また別の気づきがあるのかもしれませんが」


 クリストフ様はそうおっしゃられたけれど、それはその通りだと僕も思う。

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