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デート

 ◇ ◇ ◇



 昨晩の襲撃は回避することが出来たけれど、あれで終わりだとは考えていない。

 彼らに話を聞いたところでは、説得してくれるという事だったけれど、実行に移すまでに進められていた計画を途中で放棄する程度の志ならば、そもそも実行されたりはしなかっただろう。

 それはともかく。

 僕がシャイナをエルヴィラまで誘ったのは、エルヴィラの街を案内して、デートして回るためだ。

 案内とはいえ、エルヴィラは広いから全てを万遍なくというのは常識的ではない。真面目に––馬車で普通に––回ろうと思ったら、それこそひと月以上かかってしまう。

 だから案内できる地域と言えば、精々城の近くの街中くらいのものだ。

 

「ここがメンヒレス通り。お昼にはいつも賑わっていて、抜けた先の噴水のある広場は子供たちの遊び場にもなっているんだよ」


 シャイナを長い間歩かせるのもどうかとは思ったけれど、流石に馬車に乗ってばかりでは、長距離的な移動はよくても、それ以外の案内にはあまり向いてはいない。

 それにこのお昼前の時間帯は、最も混雑する時間帯で、とても馬車の通行する余裕なんてものはない。


「この程度、何の問題もありません」


 そうシャイナは澄ました顔で宣言していたけれど、僕は手を差し出した。


「シャイナは––違った、前に案内してあげた女の子がいたんだけれどね。その子が人ごみに慣れていないらしくてふらふらと大変そうだったから、もしよかったら、はぐれないように手を握っていても良いかな。それに––いや、何でもない」


 昨夜の件もあるし、と危うく僕が自分で暴露してしまうところだった。それではせっかく黙っていてくれているフェイさんに申し訳が立たない。


「し、仕方がありませんね。私も、はぐれたなどと不名誉な称号をいただくわけにはまいりませんし、ここはエルヴィラですから、貴方にお任せいたします」


 別にあなたに気を許しているわけではありませんからと、わざわざ宣言してから僕の手をとってくれた。その際、わずかに口元が優し気に綻んでいたのだけれど、僕はそれを指摘するほどひねくれてはいない。

 ちなみにシェリスは一緒に来ていない。

 一応誘ってはみたのだけれど、兄様のデートのお邪魔虫にはならないわと断られてしまった。

 

「こっちの方は商業地域と居住区になっているけれど、反対の南の方は田園畑地域が広がっていて、秋のお祭りの味覚は大体そこで収穫された物が多いかな」


 そのずっと先、大陸の端でもある南端はビーチになっていて、丁度この時期は観光客でにぎわっている。


「というわけだから、明日は一緒に海に行こう」


 シャイナはお城から出たことはほとんどないと言っていたから、きっと海にも行ったことはないはずだ。

 そういう僕も、海に行ったことなんて指折り数えることが出来る程度で、そもそも、そんなに遊んだという記憶もない。


「行きませんよ」


「うん、そうだよね。きっとシャイナにはビキニよりもフリルのたくさんついたワンピースの方が……って、今、行かないって言った?」


 てっきり楽しみだと思ってくれるだろうと思っていたのだけれど、確認してみたらやっぱり行かないと言われてしまった。

 いや、シャイナも年頃の女の子だから、シェリスと同じように、自分の体型とかを気にしているのかもしれない。

 それはたしかにシャイナは10歳の女の子らしいけれど、ファラリッサ様は母様と同じように女性的な魅力にあふれた美しい方だ。その血を受け継ぐシャイナだって、年齢を重ねればきっと同じように成長することだろう。10歳の今から心配するようなことじゃないと思うけれど。

 もちろん、僕はシャイナの胸が今の5倍膨らもうと、膨らむまいと、そんなことは関係ないと思っているけれど。


「ユーグリッド様。なかなか御想像力豊かなところ大変申し訳ないのですが、別に私は自分の胸が小さい事なんて、これっぽっちも、全く、ちっとも、気にしておりません。本当に」


 僕はまだ何も言っていないけれど、どうやらシャイナは大分気にしているらしかった。


「ですから、気にしておりません」


「分かったよ。それじゃあ、シャイナは何かやりたいことはあるかな?」


 僕が尋ねると、シャイナは僕の事を睨みつけながら黙ってしまった。

 うーん。シェリスで慣れていたつもりでいたのだけれど、年頃の女の子の扱いは中々に難しい。

 まあたしかに考えてみれば、狙われている、或いは首謀者が見つかって、捕えられていない状況で、のこのこと城から離れて人の多いところへ出かけるというのも、むざむざ危険に飛び込むみたいで、囮という考えを除けば、余計な負担をかけてしまうかもしれない。肉体的にも、精神的にも。


「じゃあ、シェリスが持っている双六とかで遊ぼうか。あれなら室内でもできるだろうし」


「双六ですか?」


 シャイナが可愛らしく首を傾げる。

 ああ、そうか。

 シャイナはつい最近まで1人っ子だったわけだし、もしかしたら双六という遊びをしたことがないのかもしれない。


「双六という物の存在は知っています。賽を振って出た目の数だけ自身の駒を進めて上がりを目指す遊びですね。もっとも、ユーグリッド様のおしゃる通り、実物を見たことはありませんが」


「そうか……そうだ! それじゃあ、これから店を回って、シャイナの好きそうな双六を探しに行こう。一口に双六と言っても、恋愛になぞらえたものだったり、歴史を学びながら遊べるものだったり、それこそ王道、あっ、いや、この場合は王様になるまでの成り上がりを描いたものって言えばいいのかな、あとは、勇者になり替わってドラゴンを退治しに行く物語だったり、色々あるから」


 ちなみにシェリスのお気に入りは星空の下でのロマンチックな恋愛を描いたもので、まあ、相手は僕しかいないし、よく相手をしていたりする。


「……では、私もその恋愛双六という物をしても構いません」


「良かった。じゃあ、お城にある物でもいいけれど、それだと僕たちが有利だから、違うやつを探しに行こうか。恋愛を描いた双六は、絵が綺麗なものが多いから、きっと気にいる物が見つかるはずだよ」


「……そういう事ではありませんが」


 シャイナは何故か溜息をついていたけれど、せっかくやる気になってくれたのだ。まあ、対象年齢的にはシャイナよりも少し大人向けのものだけれど、シェリスも気にせずにやっているし、特に問題はないだろう。

 途中、綺麗なガラス細工のお店や、シェリスへのお土産の甘い捻り菓子を購入しながら、雑貨屋へ向かった。

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