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真 デートのお誘い 2

 思い立ったが吉日とは言うけれど、得てして女の子の支度、それも遠出の準備には時間が掛かるものだ。

 シェリスもそうだけれど、シャイナもその例には洩れないようで、シェリスと楽しそうに自室にこもって支度をしていて(当然僕は締め出されていた)、終わったころにはとっくに日は沈んでいて、夕食の準備が出来ましたと呼ばれる頃だった。

 夜中に馬車を走らせるわけにもいかず、僕達は翌朝、揃って朝食をいただいてから出発した。

 道中、アルデンシアのお城から国境であるウィルコー川の付近までは、暑かったためにいくらかの休憩をとっただけで、何事もなく進んでいたのだけれど、国境を超える際の管理の方からあまり良くない話を聞かされた。


「申し上げます、殿下。お耳に入れておきたいことが」


 良くない、はっきり言ってしまえば、悪い事であるような雰囲気だったので、出来ることならシェリスやシャイナには聞かせたくなかったけれど、僕のすぐ近くに座っていた2人には聞こえてしまっていたらしい。

 それならば、むしろ、聞かせてあげた方が、余計な不安を消すことが出来るかもしれない、そう思っていた。


「どうやら我が国内部でクーデターが画策されている模様です」


 すぐに、やはり聞かせるべきではなかったかと後悔した。

 いや、構わない。情報は、知っていて困る場合と、知らずにいて困る場合、問題が大きくなるのは後者の方が圧倒的に多い。知っていて困るのは、サプライズのパーティーの内容等、極わずかだろう。

 まあ、それにしても、メモに書いて僕に渡してくれるとか、もう少し気を遣ってくれても良かったとは思うけれど、今更言ってみても仕方ない。


「理由は分かりますか?」


「それは……」


 報告してくれた国境警備の方が、ちらりとシャイナの方を見ながら言い淀む。

 ここで報告した以上、僕の他にシェリスが乗っていることは確定している。それは、行きにも通ったことから分かっていたことだろう。

 つまり、行きと今とで違う要因。たとえ、シャイナが気付いていたとしても、こちらから口に出して積極的に聴かせるべき内容ではない。


「分かりました。そこまでで大丈夫です、ありがとうございました」


 一緒にシャイナが乗っていたことの方が重要だったということだ。

 僕達には良くて、シャイナには聞かせることが出来ない話。いや、もう聞かせてしまったも同然かもしれないけれど。

 帝国派によるものなのか、公国派によるものなのかは、ここでは判断しかねることだけれど、要するに反アルデンシア派によるものだという事だろう。

 僕が毎月末ごとにアルデンシアまで出かけていることは、エルヴィラでは周知のこととはいえ、エルヴィラの貴族だって1枚岩ではない。僕とシャイナ姫の婚姻、アルデンシアとの関係強化を望んでくれている層もいれば、反対に望んでくれてはいない層も一定以上はいるということだろう。もちろん、僕はそんな打算でシャイナに求婚しているわけではなくて、本心から、恋心からのものだけれど、この際においてそういった、僕個人の感情によるものかどうかなどという理由は関係がない。彼らがどう思って、どう判断しているかということだ。

 狙われているのが僕だけであるのならばどうとでもできると思う(もちろん色んな人に反対はされると思うけれど、強行策をとることも出来ると言えば出来る)けれど、シャイナか、或いはシェリス、そしていくらなんでもないとは思うし、大丈夫だとは思うけれど、クリストフ様にまで危害が及ぶようだと問題だろう。父様や母様は言わずもがなだ。


「大丈夫、シャイナ。そんな顔をしないで。それから、間違っても自分が悪いだなんて思い込んだりしないでね」


 シャイナがどう感じているかなんて、簡単に想像できる。むしろ想像するまでもないことだ。


「そうよ。兄様がシャイナに求婚しているのが悪いんじゃなくて、どう考えても、自分たちの思い通りにならないからってクーデターなんて画策する方が悪いに決まっているじゃない」


 シェリスが怒っているように顔を顰める。

 僕たちに至らないところがあるのかもしれないし、シェリスのように決めつけてしまうのも本当はどうかと思うけれど、概ねその通りだとは思う。

 意見があるのならば、嘆願書でも、面会の申し入れでも、少なくともクーデターなどという手段ではなくても、やりようはいくらでもあるはずだろう。

 僕たちに面会することの敷居が高いと感じているのかもしれないけれど、クーデターよりはよっぽど簡単なはずだ。リターンは大きいにしても、それにも増してリスクが大きすぎる。


「それはその通りだけれど、シェリス」


「何よ、兄様」


 この妹は、普段は聡明だけれど、たまにお転婆なところがあるから、しっかりと注意しておく必要がある。


「シャイナもそうだけれど、決して、自分なら大丈夫だとか、問題ないとか、過信して行動しないでね。僕の手の届く範囲から離れない事。それから、2人は絶対に一緒に行動して。いいね?」


 男の僕では付いていくことの出来ない場所もある。

 その場合、護衛のメイドさんがいるし、信頼しているとはいえ、守りが手薄になることは確かなのだから。


「はーい」


「分かりました」


 一応注意はしているつもりで入るけれど、完璧に出来るかと言われれば、完全とは言い切れないだろうから。

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