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誕生日のパーティーへのお誘い

 降誕祭の数日後、僕とシェリス宛に、シャイナ姫とファラリッサ様から別々に、シャイナ姫のお誕生日のパーティーへの招待状を受け取った。

 招待してくれたら嬉しいとは思っていたけれど、ファラリッサ様から以外にも、シャイナ姫からも手紙をいただけたのは素直に嬉しい事だった。

 もちろん出席致しますと返事を認めて、同じように出席する旨を記されたシェリスのものと一緒に送る。


「兄様を1人で行かせられるわけないじゃない。大丈夫よ。この間は失敗しちゃったけれど、今度は上手く私が間を取り持ってあげるから」


 机に向かって便箋に封をしていた僕の肩に、シェリスのサラサラの金の髪が片方、はらりとかかる。今日は真ん中に白い花の刺繍がついたピンクのリボンで左右でふたつに結んでいてとても可愛らしい。

 僕は気にしなくていいと言っているのだけれど、シェリスは先日の、降誕祭前の出来事を引きずっているらしかった。

 多分、シャイナ姫の方は、降誕祭での様子からも、シェリスに対して悪い印象を持ってはいないと思っているのだけれど、シェリスの方は、シャイナ姫だと気づいてはいなかったから、仲直りをする良い機会だと思っているのかもしれない。


「シェリス。あまりユーグリッドを困らせてはダメよ」


「お母様」


 王妃であるエルーシャ母様は、父様の執務中は同じ執務室に居ることが多い。

 シェリスがまだ小さい頃は一緒に居ることが多かったけれど、シェリスが成長して、主に僕といるようになってからは、付きっきりということもなくなっている。


「当人たちの問題、特に惚れたとか、そういう愛だとか、恋だとかの問題は、他人が余計な口出しをすると、かえって拗れることが多いというのが通例よ。反省して、ユーグリッドの恋路を応援するというのなら、何もせず、ただ見守っていてあげなさい」


 母様はどこかの国のお姫様だったとか、そういう事ではなく、エルヴィラの学院に通う、普通の学生だったということだから、そういった恋愛だとかの話はよく見ていたり、あるいは聞いていたりするのかもしれない。


「そんなに不安にならなくても大丈夫よ。ユーグリッドが結婚したって、あなたに向ける愛情が減ってしまったりするわけではないわ。きっとあなたにも、近い将来、そんな風にユーグリッドと––同じくらいに大切だと思える人が出来るかもしれないじゃない」


 シェリスは「そんな人出来るわけないじゃない‥‥‥」と呟いていたけれど、そのことに関しては僕も母様の方に賛成、というか、母様のおっしゃる通りだと思う。


「だからといって、あなたがユーグリッドに興味がなくなるとか、嫌いになるとか、好きだと思えなくなるとかいう事はないはずよ。似たようなことで、ユーグリッドだって、あなたの事はずっと、それは恋ではないかもしれないけれど、大切に思ってくれているわよ」


 寂しいことだと思うし、もしかしたら僕だって泣いてしまうかもしれないけれど、こんなに可愛いシェリスに好意を向ける人はこれから先、どんどん増えることだろう。

 それは、王女だということを抜きにして考えても、アルデンシアでシャイナ姫やメギド国王、それからファラリッサ様に向けていたような顔ではなく、エルヴィラで、お城で僕たちに向けるような表情、態度でいれば、絶対だ。


「国王様––お父様は絶対反対だっておっしゃるかもしれないけれど、あなたに心の底から大切だと思える人が出来たのなら、私は応援するわよ」


「……兄様よりも素敵な人なんて、この世に存在するのかしら」


 随分と過剰な評価をしてもらっているみたいだけれど、それこそ、ごまんといることだろう。

 もちろん、そんなことは知っているし、だからこそ、シャイナ姫に認めて貰えるよう、努力と研鑽を続けているわけだけれど。

 母様は苦笑を浮かべながら、ええ、きっと、と躊躇いなく言いきって、シェリスの事を抱きしめながら、優しく髪を撫でていた。


「兄様がシャイナ姫と出会ったのは、今の私よりも、えーっと、多分、2つか3つくらい年上だったころだから……本当に、あと3年以内に運命だと思える人と出会えるのかしら」


 具体的な年数までは分からないけれど、きっとこの先もどんどん、綺麗に、可愛く、素敵な女性に成長していくだろうシェリスを、世の中の男性は放ってはおかないだろう。

 それは、シェリスだけではなくシャイナ姫にも言えるだろうことで、今は僕の事を、少なくとも知人以上には認識してくれているだろうけれど、この先もずっと同じなのかは分からない。もちろん、良い意味で変わってくれることを望んではいるけれど。


「ええ。きっと」


 少し眉を顰めたシェリスに対して、母様がとても優しい声をかけ、僕も同じように笑って頷いた。


「絶対ね。だってシェリスは世界一の僕の妹だもの」


 1番の女性ではないけれど、母様がこの先、妹を産むようなことがなければ、シェリスが僕にとって1番の妹であるというのは変わらない。

 そんな言葉遊びを言っているわけではなく、本当に、僕には出来過ぎた妹だと思う。


「ありがとう、兄様。でも、まだしばらくは私も兄様の事が大好きだから、シャイナ姫にはやきもちを焼いたりもするかもね」


 シェリスは、もちろん誕生日のパーティーにも出席するわと言いながら、太陽のような笑顔を浮かべた。

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