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オーリック公国 25 騒動 3

 僕たちの目的はあくまでも騒動の鎮静化であって、騒動を起こした方たち全員を捕えたり、制圧してしまう事ではない。

 反乱軍と言ってしまうと大げさ過ぎるだろうけれど、今回の騒動が、誰かに煽られたにしろ、起こったということは、少なからず、現在の体制に不満を燻らせていた方たちがいたという事でもある。

 自分たちの要求を聞いて欲しいのだと蜂起した人たちを、力でもって押さえつけてしまうことは、それこそ愚策であり、話を聞くための場を設ける必要があるだろう。

 もちろん、これは僕たちの立場だからこそ言えることなのかもしれないし、そんなきれいごとで収まるような状況ではないのかもしれないけれど。

 ジーナ公女の方を振り返ると、やはり不安そうな顔で、ちらちらと後ろのお屋敷の方を確認している。

 残られた大公陛下、そして王妃様を心配する気持ちはよく分かる。

 しかし、今、僕たちには僕たちでやるべきことがあり、それに際して、他のことを気にしていれば、文字通り、命取りになる可能性すらある。


「ジーナ公女。ヴィンヴェル様とミーリス様のことが気になる気持ちは十分にお察しいたします。しかし、今は――」


 今僕たちがいるのは空中で、基本的に、暴動に巻き込まれるということはないだろう。

 しかし、扇動者、あるいは賛同者の中に、魔法を使える方がいないというのは考えにくい。つまり、いつ、僕たちに気付かれて、襲撃を受けるのか分からない状況だ。

 そんな中で、すでに全方位から狙われる可能性のある空中に身を出している時点でかなり危険であるにもかかわらず、この上注意力まで散漫になっていては、どうぞ狙ってくださいと言わんばかりだ。

 そのために僕が着いてきたということもあるけれど。


「ええ、そうですね。私がしっかりしなければ、お父様とお母様も安心できませんものね」


 ジーナ公女がようやく落ち着かれたところで、僕は改めて、今回のオーリック公国の件に関して考えた。

 元々は(と言っても、僕たちの知っているところからだけれど)それぞれのギルド間での抗争が発端だった。

 しかし、そもそも何故、元々協力関係だったギルド間で嫌がらせなどの問題が起こるようになったのか。

 それまでは問題なくやってこられていたのだから、何か新しい、普段とは異なる事件、あるいは事象が起こったことには違いがない。

 僕が鉱山で聞いた話と、シェリスたちが聞いてきた話、どちらも、相手が先に喧嘩を売ってきたのだと主張していた。

 少なくとも、鉱山で働いていた彼らは興奮していて、周りが見えなくなっている様子ではなかったし、捏造したりということはないのだろう。

 では、シェリスたちが向かった先はというと、そちらもそんな様子はなかったと言っていた。

 考えられることとしては、誰かが、各ギルドへとそれぞれが反発し合うようにと仕向けた可能性だ。

 では、誰が、何の目的で。

 目的はおそらく、極端に言ってしまえば、この国の支配者の地位に就くことだろう。要するに、現在の公家の退位と、自身の即位だ。

 現在の体制であれば、ヴィンヴィル様やジーナ公女の言葉を借りれば、公家にはそれほど大層な権力があるわけではない。

 しかし、反乱によって自身が即位したのだとすれば、それは現在の公家よりもずっと強い権力が得られることになる。

 なぜなら、反乱に勝利したということは、自身の思想に賛同する人が大勢いるということになり、信者というのは、逆の立場から抑えようと思った際に、かなり厄介になる存在でもあるからだ。


「誰が、というのは、ポシス様の事でございますね?」


 ジーナ公女が悲しそうに綺麗な空色の瞳を伏せる。

 自身の至らなさを悔いているようにも見えたその瞳を、さらりと落ちてきた水色の髪が覆い隠す。


「まだ、そうだと決まったわけではありませんが……」


 何の慰めにもならない言葉しかかけることが出来ない。


「ジーナ公女。今すべきは起きてしまったことに悲嘆にくれることではありません。事態の解決を図るために行動することです」


 僕はかすかに震えているジーナ公女の肩を強く抱きしめた。


「この状況を鎮静化するためには、ジーナ公女の力が必要です。他国から来た僕たちよりも――少なくとも今公女という地位にいる貴女の言葉の方が強く響くはずです」


 その言葉を届けるためには、この混乱の中に降り立つ必要がある。上から言ったのでは聞いてはくれないだろう。むしろ、煽る結果にもなりかねない。


「ですが――」


「大丈夫です。貴女の言葉を届けるために、僕たちが力になりますから。少なくとも、僕たち5人には届いています」


 横でぎゅっと握り込まれたジーナ公女の拳を優しく包み込んで、空中なので難しかったけれど、膝をつき、ジーナ公女の胸の前まで両手を掲げる。


「どのような事態になろうとも、必ず僕があなたをお守りいたします。僕では頼りないかもしれませんが、あなたの言葉が届くまで、ずっと」


「で、では、こうして握っていてくださいますか?」


「あなたがそれを望むのであれば」


 そんなことくらい、お安い御用だ。

 というよりも、僕に今出来ることはそれくらいしかない。僕が何を言ったところで、聞いては貰えないだろう。

 シェリスやシャイナとはカリスマが違う。


「――分かりました。私の言葉でどの程度のことが出来るのかは分かりませんが、出来る限りのことはやってみます」


 その後にあるだろう、問題の解決には、多少の力を貸すことくらいは出来ると思うけれど。



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