第7話:バイト中
2回目の告白の次の日は、久々の晴天となった。もうすぐ、梅雨も終わりなのかもしれない。緋亜は朝からスーパーでバイトだった。
『俺は緋亜のことが好きだ』
この言葉が、緋亜の頭から離れない。鎖で繋ぎとめられたかのように、離そうとしても離れないのだ。
『待ってるから』
この言葉と同時に、寛の顔が頭をよぎる。緋亜は頭を振った。
「私は、何をしに佐瀬町に来たんだろ……」
自分を変えるためだったのに、私はまだ、何もあの日と変わってない。
寛を傷付けてまで、自分の意見を尊重したくもないし、自分を傷付けてまで、相手の意見を聞かなくてもいい。そう緋亜は思っているのに、世界はそんなに上手く転がらない。
緋亜は、大きく伸びをした。時計をぼんやりと眺めて、コンビニで買った昼食を食べる。
「もう、返事出そうかな……」
返事とは、寛に対することだ。怖いなんて、今は思っていられない。
お弁当の中に、ハンバーグを見つける。大好物。ハンバーグを4等分し、口を大きく開けて昼食を食べきった。
「午後も、がんばるぞー」
やる気を注入した緋亜は、身なりを整えてから休憩室を去った。
「好きでした。付き合ってください……」
「……あぁ」
緋亜の独り言。近くにいた人は、緋亜の行動を見て少し引いていた。
「うーん……。なんかしっくり来ないなぁ」
ペットボトルを並べる。今日は同じような行動しかしていない。
「私も、寛さんのことが好きです……」
「サンキュ」
最後の一本を棚に入れて、空になったダンボールをたたむ。
「昼のメロドラマみたいじゃん」
突っ込み。ああ、きっと私は文才もなく、喋る能力もなく、考える能力もないんだな。
「じゃあ、こんなのはどうだろう? 手紙を寛の郵便受けに入れとく、とか」
それだ! 緋亜はダンボールを叩いた。
なんだか、決まると嬉しくなる。
「今日は早く帰って、手紙を書こう!」
両手を挙げて、ガッツポーズをした。ダンボールが垂直に緋亜のつま先に落ちてくる。「うっ……」
夜。緋亜はつま先をかばいながら、バイトを終えて家へ帰宅した。
読んでくださり、ありがとうございます。
今年も、皆さんに読んでもらえるような小説を書きたいと思います。