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第5話:揺れる心

 あの告白から、一ヶ月が経とうとしていた。あの日から、二人は各自相手を避けるようになった。怖いのか、恐れているのか、気まずいのか。どうしようもないことだけど、二人は顔を合わすことが出来なくなった。

 もうすぐ、憂鬱な梅雨の季節になる。雨の日には、寛には会えない。緋亜は心の中で呟いた。会いたいのに会おうとしない自分がもどかしく感じる。

 さすがに、自分の部屋は片付いていた。

 ベランダに出てみる。空は夜の所為で、漆黒の闇になっていた。星は見えそうだが、マンションの灯りや、黒い雲で見えない。そのとき、左隣の1406室の窓が開いた音がした。緋亜が寄っていくと、美咲さんが立っていた。「美咲さん。こんばんは」

「こんばんは、佐上さん。偶然ね」

「そうですね」

 一瞬、なぜか寛の顔が目に映る。寛はこんなふうに、女性と話すのだろうか。緋亜はため息を漏らした。

「ため息、何かあった?」

 美咲は緋亜の漏らしたため息を見逃さなかった。

「あっ……」

 口には出来ない。告白された。ましてや、1404室の寛だなんて。言えるはずがない。

「言えるはずが、ないです」

「なんで? 恋バナ?」

 美咲は怖い人だ。なんで、人の心を読み取れるのだろう。

「言えません! 絶対に」

 私は体の前でバツ印を作った。美咲は笑う。

「時間は何も、対処してくれないわよ。対処してくれるのは、相手と自分の感情だけ。がんばって」

 美咲は笑った。緋亜は、美咲の言葉の意味が分からずにいた。このことだけは、時間が対処してくれると考えたい。いや、対処して欲しい。

 じゃあ、バイバイ。美咲はそう言って、帰って行った。

 緋亜は空を眺めながら自分に問いかける。自分は今、寛のことをどう思っているのか。好きなんていう、感情は分からない。知らないのかもしれない。もしかしたら、好きなのかも知れない。分からなかった。でも、今の自分は、自分に嘘をついていない。

「感情」

 一言、口に出してみた。今まで、感情なんてことをちゃんと考えたことがあっただろうか。

「ちゃんと言ったほうがいいのかなあ?」

 心に問いかけてみた。

 寛とは、前のようにこれからも接していきたい。だけど、色々なことを知りたい。ただの甘えだろうか?

 それでもいい。

「もう少し、自分の感情がはっきり区別されるようになるまで時間をとりたい」

 自分が出した、答えだ。これでも、寛を傷ついたらどうしようもない。自分の未熟さに、杭を打とう。

 揺れる心の中で、緋亜は確かな答えを持った。

 寛に言おう。ちゃんと言って、適応な距離を置こう。

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