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今日から学校と仕事、始まります。①莞

料理作れます

作者: 孤独

「今日のメニューは、白いご飯に、お味噌汁、そして、ハンバーグです!」

「わーい!ハンバーグだー!」


沖ミムラと阿部のんの共同生活はしばらく経った。

身分上は大学生と小学生である。


「大学が終わるのは16時頃だから、18時までには夕飯ができると思うよ!それじゃあ、行ってきます!」

「いってらっしゃーい!」


だが、お互い分け有りな2人。その理由を語るには少々文字が足りないし、必要もないだろう。

ミムラは大学に行くため、のんちゃんよりも早く家を出てしまった。最後の鍵締めはのんちゃんが担当している。

2人で住むには少々狭いが、決して悪い物件ではない。オートロックや角部屋、光ファイバーなどの生活面。駅前とお店が並ぶここは優良物件である。

ミムラが出て行ってから20分後くらいにのんちゃんは小学校へ登校する。まだまだ学校のことも、この世界のことも分かっていない。



「今日はハンバーグなんだー」


のんちゃんの記憶力が確かならば、給食もリッチにハンバーグだった気がする。お昼と夕飯が同じメニューであるのはいただけない。


「ミムラさんの料理って、見た目があんまり良くないからのんちゃんが作った方が良い気がします。給食に期待です」


本人がいないからって、とんでもない発言をしてしまうのんちゃん。

そーゆうのんちゃんであるが料理にはあまり詳しくないし、この世界にあるオートロックやガスコンロなどでも驚いてしまうほど、ここの科学力を知らな過ぎる。

しかし、いつかはミムラのように大きく成長するわけだ。遅かれ早かれ、料理を覚えたいと思っている。

家事全般をミムラが下手なりにやっているため、のんちゃんも申し訳ないという気持ちと上達したいという気持ちが沸いてくる。ミムラは小学生に心配させられる大学生なのだ。


「でも、勝手にやって火事にしちゃったら大変です!ここは先生を呼びたいです!」


とはいえ、家庭科の先生に頼むわけではないのんちゃん。

ミムラよりも料理が上手そうな人を何人か知っている。その中で1人暮らしをしていて、何でもテキパキこなしてくれそうで、のんちゃんの頼みごとを断れそうにない人。



「広嶋さん!のんちゃんに料理を教えてください!!」

「……俺をそのためだけに呼んだのか?俺は東京じゃなくて、広島に住んでいるんだぞ?」

「はい!」

「ふざけんな、クソガキ!!」



怒った口調になりながらも、のんちゃんの頬を叩くだけで済ませる広嶋。

まだ、ミムラが帰ってきていない15時ごろである。しかし、広嶋も広嶋で



「意外です。広嶋さんがこんなに早く駆けつけてくれるなんて」

「『のんちゃんがピンチです!助けてください!』って、メールを送られれば飛んで来るだろ!そーゆうのが、………ああっ。……ったく!」

「でも、本当にピンチなんです!ミムラさんの料理って、味は良いのに見た目が悪いんです!だから、のんちゃんが料理当番をしたいんです!」

「味が良いなら我慢しろよ」



のんちゃんの決意ある表情を感じ取った広嶋。理由はなんであれ、できる選択肢が増えるのは良い事だろう。道具の扱い方さえ気をつければ料理なんて簡単である。広嶋は料理人ではないため、みんなを満足させる料理は作れない。簡単な料理をのんちゃんに仕込んでいく。


「とりあえず、炒めるのと焼くことを覚えろ」

「は、はい!それで料理名は……」

「その時の気分で付けろ」


お米の研ぎ方、炊飯器の使い方。電子レンジの使い方から、冷凍食品の解答の仕方。火の扱い方と油の引き方。


「で!広嶋さん、この料理は一体……」

「だから気分で付けろ。俺は基礎しか教えていない」


料理とは一品で終わらない。主食、おかず、お味噌汁、飲み物と、バランスよく整えるのが理想。良い物を食べることよりも、良い食事が大切なのである。

テーブルに並べられるのんちゃんと広嶋が手掛けた料理の数々。白米、油揚げと豆腐の味噌汁、焼き魚、漬物、野菜炒め。


「うわー!いつの間にできたんだろ!もう夕飯ができてるよ!」

「普通の夕飯を作るのは、1時間は掛かるんだぞ。いつの間にできるわけねぇさ」

「こんなに早い夕飯も初めてだよー」

「夕飯作ったの、15時半からだからな」



ガチャァンッ


「ただいまー。のんちゃん、ごめんねー!今から料理するから!……って、なんか夕飯ができてる!?広嶋くんもいる!?」

「おかえり、ミムラさん!のんちゃんと広嶋さんが先に作って食べちゃってます!」

「おう。先に食べてる」

「でも、早すぎじゃない?」



今日の夕飯は美味しかったが、3人共。箸の進みが悪かった。それも当然か……。


かくして、のんちゃんは広嶋から料理のやり方を学び、料理当番になることができたのである。

それからまた数日後。広嶋にミムラから電話が来た。



「どうした?」

『広嶋くん助けて!のんちゃんが、のんちゃんが』

「なにかあったのか?」

『皿洗いと後片付けのやり方が分からなくて、やってくれないの!買出しもあたしだし……助けて!もう、あたしが料理したい!』


料理は作るだけではなく、準備することも片付けることも大事なのである。

楽しい事ばかりが勉強ではない。





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