幕間 1
さくらの嫌われ者体質の原因、一樹は既に突き止めていました。
笑い方の指摘を受けたため、少し改稿しました。
内容に変化はありません。
俺の名は近藤一樹。
親父は小さいながらもゲーム会社の社長、おふくろはここら一体の土地の地主だ。
だから我が家では地域の名士たちやゲーム関係のお偉方のために、パーティーやら会合が頻繁に開かれてて、俺も小さい頃から親の後ろにくっついて挨拶やらなんやらをさせられてた。
そのせいかどうかは知らんが、俺から見ると同年代の連中がガキすぎてやってられなかった。
感情を制御できず、すぐ泣いたり、怒ったりするあいつらを見るとイライラした。
今思えば、俺もアホだったなー、と思うんだが。
まあ、当時の俺はそうやって周りを見下してた。
そして、そんな俺に友達がいるわけもなかった。
もちろん、世間付き合いはうまかったし空気も読めた。
しかも親父のおかげで最新のゲーム機を必ず持ってる俺は人気者で、俺の周りにはたくさんの奴らが集まってきた。
でもそいつらを心の中では見下してた俺にとっては友人と呼べる存在はいなかった。
そんなときだ。
俺に転換点が訪れた。
中学2年の春にやつが転校してきた。
そう、我らがさくらちゃん(男)である。
さくらは男の俺から見てもかなり整った顔立ちで挨拶もサッパリとしたものであり、こいつはモテるな、とまあこう思った。
もう少し言えば、この後さくらにバカな同年代の女どもが群がるだろうなぁ、と思っていた。
俺は性格はひねくれているが、自分の人を見る目には少々自信があったので、こういう予想は外れたことがなかったし、外れるとも思っても見なかった。
だが予想は外れた。
なんと、女子は誰一人として彼に近づかなかったのだ。
いや、女子だけではない。
男子もである。
しかも!
さくらから話しかけても、奴らは何故かビクビクしながら対応し、決して仲良くなることはなかったのである!
まあ何でかというとあれだ。
ほら、さくらって動物に嫌われる体質だろ。
それは人間様にも効果はばつぐん、だったんだよ。
笑っちまうよな。
んで、予想が外れて当時の俺はめっちゃ驚いた。
今の俺だったら不思議に思ったりして原因を探ろうとするんだが、そんときは違った。
こいつとなら友人になれるかもしれんっ、と思ったのだ。
今だから分かることだが、俺は寂しかったんだろう。
本当は友達とバカみたいに騒いだり、遊んだりしたかったのだ。
だが、昔から見下し続けてきた周りのやつらと今更心から打ち解けることもできずにいてもんもんとしていたのだ。
そこへ現れた、初めて俺が予測を立てられなかった男。
こいつならやり直せる、1から友達になれると思ったのだった。
そうして俺には初めて友人ができた。
んで、さくらとバカ騒ぎしてるうちに周りの奴らのことも見下さなくなった。
おかげで俺はただ粋がってるだけのガキから、やっと卒業出来たのだった。
そういうことがあって俺は、さくらと出会って以来友達もたくさん増えた。
全てはさくらのお陰である。
で、当然のこととして、俺はさくらの為になんかできないかなー、と考えるようになった。
そしてやつの動物愛護の夢を叶えてやることにしたのである。
んで去年、俺はさくらへの誕生日プレゼントが失敗したのを受けて、まずは奴の体質の正体を探ることにした。
もちろんさくらには内緒である。
主におふくろの伝手をたどって調査してもらい、半年ほどたったとき、原因を突き止めた。
さくらが動物を通り越して人間にまで嫌われる理由は、彼が発している脳波にあり、改善は不可能だというのだ。
つまり、さくらが動物になつかれる日は来ない。
だったら、と俺は発想を転換した。
現実世界が無理なら仮想世界ならいいじゃないか!!
と。
そして俺はさくらの17の誕生日に《Liberty Online》をプレゼントした。
読んで下さり、ありがとうございます!
次回、とうとうゲーム開始です!
ご指摘、ご感想お待ちしております。
少し詳しくさくらの体質を説明します。
さくらは常に動物(人間含む)に嫌がられる脳波を発しています。
動物たちは敏感なので、かなりさくらのことを嫌がります。
というか嫌がるを通り越して、恐怖を覚えます。
ですが人にとっては「なんかあいつやな感じ」程度です。
まあ、その「やな感じー」程度でクラスでは孤立してしまうのが人間の怖いところです。
一樹は大人たちに揉まれているので、「やな感じ」程度では動じません。