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図書室へ行ってみただけです

さて私がこの世界に来て3日。



由梨乃ちゃんは今日から魔術の練習をするらしいが、その間私はというと放置状態。

自由時間です。はい。


ま、“役立たず”ですからね。

もう周りの皆様私に期待することなんてありません。従者的ポジションと言ったってメイドさん一緒に旅についていらっしゃるみたいですし。私が由梨乃ちゃんのお世話をせっせとやる必要はないらしい。よかったよかった。


だから一日中部屋に引きこもってお昼寝をすることも可能っちゃ可能なのですが…


さすがに自分の家でもないのにそれは人間として憚られたので、なんでもいいので何か必要な情報はないか調べてみることにしました。


この世界でも一般に生活を営む上で暴行、窃盗、詐欺、もしくはそれらの行為を援助するような行為さえしなければ、よっぽどのことが無い限り罪人になるようなことはないらしいけど…


例えば日本の銃刀法のように、地球では国によっては所持しているだけで罪に問われるなんてこともあり得るわけで、モノによっては所持しているだけで死刑という国だって存在したはず。


『知らなかった』では済まされないこともありますからね。無知は恐怖です。


しかし。


一応メイドさんは、聞けばたいていのことは教えてくれるけど、彼女もお仕事忙しいだろうから全て彼女に頼るわけにもいかない。


そして過去親友に「極度の人見知り」と称されたこの私。自分から積極的に人の輪の中に入っていくなんて怖くてできない。つまり人から情報を聞き出す能力なんて残念ながら持ち合わせていません!


ということで、私は1人図書室へ向かった。



広い広い、床から天井までひたすら伸びるいくつもの本棚が整列しているお部屋を一通り一周してみて私は愕然とした。


一応、全く予想していなかった訳ではないんだけど…


目に入る本すべて文字が解読できません!


隙間なく詰め込まれている本どれを見ても、見たこともないような文字や、文字というより絵が並んでいるようなものばかり。


アルファベットもあるけどそれが英語で書かれているのかどうかはわからないし、仮にそうだったとしても私は100%日本女子。また、勉強嫌いの私には地球の世界共通語と称される英語だって理解不能の言語。


言葉が通じるから、もしかしたら文字だって通じるんじゃないかと思ったのに…甘かったか。


しかし膨大な書物が詰め込まれているのだから1冊くらい…どんなに薄っぺらくてもいいから1冊くらい、日本語で簡潔かつ明確な内容のものを…っ


と、往生際悪く部屋をぐるぐるうろうろ何往復もして、本棚の隅の見落としてしまいそうなくらい目立たない場所にひっそり紛れていた薄い本を探し当てた。


とりあえず地球には存在しなかった“魔術”って、そもそもどういったものなんだろう…と表紙をぺらりとめくるとそこには


“魔術とは 自然現象を意図的に小さな範囲で起こすこと”


と書かれていた。



うん。『簡潔かつ明確に』という私の目茶苦茶な希望にピッタリな本らしい。


しかし


簡潔すぎてわからん!!!!


と、一人でツッコミを入れつつ次のページをめくると続きにはもう少し詳しい説明がされていた。


この世界の自然現象はその土地の気候なんかと相まって、多数の精霊が一度にはたらいて雨や雪が降ったり、嵐や雷なんかが起こったり、植物の成長なんかにも関与しているのだそうだ。精霊はそうやって世界の均衡の一部を担っている存在といってもいいのかもしれない。

“基本である水、火、地、風、そして光と闇の精霊は圧倒的な生息数を誇っているのもあって人との生活に密接であり、そのため前者の4つはほとんど誰でも魔術を使える。ただ光と闇は他の属性と比べて魔力が強いため、扱える人はなかなかいない”とのこと。


つまり、この世界の自然現象と精霊は深いかかわりを持っていて、精霊の力を借りて身の回りにのみその自然現象を操る…ってことか。魔術を起こす人間の身の回りというごく限られた範囲のために、精霊がパワーを凝縮できる…ってイメージかな。


間違ってるかもしれないけど。確認する術もないし、私使わない(使えない)し関係ない。うん。


魔術で直接人を殺すことはできないらしい。

“戦いの場面ではあくまでダメージを与えたり防御することしかできない。殺すなら魔術を使って相手にダメージを与えた後で剣で刺すなど、自分で止めを刺す必要がある。火や雷なども、大怪我はするが致命傷にまで至ることは少ない。”


ふむ。あくまで自然の力に手助けしてもらう程度って考えればいいのかしら。まぁ、自然の力ってすごいから人間が易々と万能に扱えるものであっていいはずないもんね。

しかしそれでも私にとって脅威なことには変わらず…とりあえず先へ読み進めた。


“過去の文献では魔術を無効化する者が存在していたという記述がある。

精霊が範囲を限定することでパワーを増強し魔術による攻撃ができるが、本来は世界中に存在する一部の精霊の微弱な力であるため、その者に魔術が当たる瞬間にパワーが増強される前の状態に戻ってしまう。例えば日常的な自然の風や雨、軽い静電気(火花)が人に当たっても危害がないように、本人に当たる瞬間に強化される前の微弱なものに戻る。

しかし実際に存在を確認されたという例はは皆無であり、研究者の間でも「空想の産物」という見解がほぼ全員一致で、現在ではこの話自体忘れ去られかけている。”


ふーん。無効化っていっても発動するのを止めるんじゃなくてあくまで自分に向かってくる攻撃が無効化されるのね。しかし攻撃効かないとか安全だなぁ…

あ、でもあくまで魔術が効かないってだけで物理的な攻撃は普通にダメージ受けちゃうか。ダメじゃん。


しかし自然現象ってことは魔術で相手を拘束したり操ったりということはできないということだよね…?うん、そう思いたい。


それよりも、忘れ去られかけてることが何故にこんな初心者向けっぽい薄っぺらい本に書かれているのかが気になったけど…そろそろ飽きてきた。もともと『何か必要なこと』というアバウトすぎる目的しかなかった私は満足。


とりあえず、魔術が使えない私は今のところこれ以上知る必要もないかと思って本を元あった場所へ戻し、そして字の読めない私でも楽しめるような、子供向けの絵本や画集のようなものを何冊も取り出して眺めた。


綺麗な絵がたくさん描かれていてページをめくるたびにうっとり。


始めのうちはそれだけで満足していたんだけど、そのうち


『これはどういうシーンなんだろう…』

『この2人はなんて言ってるの?』

『あぁ、内容がわかったらもっと楽しめるのにぃぃ!! 意味が理解できたらっ!!!!!!!』


…と、どんどんもどかしくなってきてしまいました。


その瞬間、奇妙なことが起こった。文字が読める。

文字自体はさっきまで見ていた理解不能な記号と同じものなのに、意味がわかるんです。え、何これ。


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