先人の残された言葉には従うべきです
1日目に部屋に案内された後はメイドさんが持ってきてくれた夕食を食べてシャワーを浴び、即刻眠りに落ちた。
目が覚めたらいつも通り学校へ通う日常なんじゃないかって期待もしたけれど…そんなに甘くはなくて軽く絶望しかけたのを覚えている。
メイドさんが用意してくれた服を着て、持ってきていただいた朝食を部屋で1人ほおばりながら頭の中で「夢から覚めろ」と何度も念じていた。もぐもぐ。
けれども夢であってほしい目の前の光景はまぎれもなく現実であって。食後のすっかり冷めたお茶を飲んで溜め息を吐き、とりあえず何かいろんなことを諦めて割り切ることにした。ズズズッ…フー。
『ま、しゃーない(仕方ない)か。』
あらゆることから目を背けることのできる便利なおまじない。この言葉でたいていのことは受け流せる。ある意味現実逃避である。
いくらファンタジーが好きと言えど
いくら小さい頃から『できるなら魔法使いになりたかった…』と思っていようとも
そして実は未だに現在進行形で思っていたとしても
てゆーか魔法じゃなくて魔術だけど。
てゆーか私使えないけど。
…こんなんやってられっか!!
だって母国を飛び出したことのない日本人にとって周りの景色(お城)、メイドさん、王族なんてなじみのない非現実。ましてや魔術や魔王なんて夢とお伽話、もしくは電波か中二病(重度)。
清く正しい日本女子として素直に現実として受け入れられて良いものではありません!
いや、ファンタジーとか魔法とかが好き故に小説とかいろいろ読んだりしていたからこそむしろ現実味が持てないのかしら。これで自分が魔術使えたらまたもうちょっと違うんだろうけど。ケッ。
しかし少々自暴自棄な思考に陥りながらも“郷に入っては郷に従え”と、頭の隅で偉大なる先人たちの残した言葉が囁かれたので
とりあえず受け入れることは今のところ置いといて、現実は認めようと決めました。生きていくために逃避ばかりはできませんからね。せめて現実味が無いなりにこの世界を見据えて知っていかなくては。
自分の身を守るためにもこの世界のことは知る必要があるけれど、あまり深く考えずに“存在する”ということを認識することから始めよう。宰相さんのお話を聞いていたときみたいに。
話はそれからだ。
そう結論付けた。